生徒の自由な交流を促す光と緑にあふれた空間
――先生方の評判はいかがでしょうか。
齋藤 すべてが長所ばかりという「魔法の教育システム」はありませんから、いまだに賛否両論の部分はあります。例えば、後でご覧いただく教科センターのしつらえには先生方に相当の負荷がかかります。でも、その分一律にかなりの授業時間を減らすというわけにもいきません。
それでも、教材の蓄積が進むことで負荷も減っていきますし、生徒にもっと参加してもらえるようにしていくことも考えられるでしょう。
――ところで、「カトリック校の静かで穏やかな雰囲気が漂う空間を多く作る」という基本構想にある項目は、聖堂に入ると実感できますね。
齋藤 聖堂には自然光がふんだんに取り入れられ、十字架は和紙の裏から光を当てられています。普段は開放されていますので、生徒は自由にお祈りできます。
校舎内は床などにも木がふんだんに使われています。ちょっとざらついた感じのある校舎外壁は、瀬戸で焼いた割り肌レンガです。では、ここからは校長の萩原がご案内いたします。
萩原千加子(はぎわら・ちかこ)
カリタス女子中学高等学校校長
1960年生まれ。カリタス学園で小中高の12年間学び、デシャエンヌ理事長や寮長のバイヤルジョン先生、英会話担当のボリュー先生といった創立メンバーである3人のシスターの薫陶を受ける。同期に女優の紺野美沙子さん(中学のみ)、直木賞作家の乃南アサさんも。中央大学卒業後、カリタス中高で社会科非常勤講師、カリタス小学校で専任教員に。2003年学園から上智大学へ派遣され、3年次に編入して大学院修士課程修了。12年小学校校長、16年宗教センター長・中高副校長、19年から現職。
――フォワイエの吹き抜けに設けられた2階の通路から図書館が一望できます。授業をしているのですか。
萩原 「i-Time」の授業ですね。図書館は情報センターとして探究学習の拠点にもなっています。自由に動いてグループを作れるよう、椅子と机をキャスター付きに替えました。本棚に挟まれた狭いスペースにも机と椅子を設けましたが、落ち着けると好評です(笑)。
――卒業生の推薦図書や直木賞作家の乃南アサさんのコーナーもありますね。
萩原 乃南さんとは同期生でした。このコーナーは彼女からの寄贈によるものです。こちらは校務センター(職員室)です。生徒が気軽に立ち寄って先生に質問できるコーナーも設けてあります。校長室の扉が開いているときは「いつでもどうぞの印です」と生徒たちには伝えています。主に高校生が学校への提案を持ってきてくれます。
――至るところに生徒の身の置き場がある印象です。中庭の緑も目に入りますし、全体的に明るい。この窓沿いの棒は何ですか。
萩原 ちょっと腰を当てて、立ち話をするのに便利な止まり木のようなものです。2限目と3限目の間は15分休憩にして、少し余裕を持たせてあります。
生徒が集まる機会が多いので各フロアにある学年ごとのスペース以外にも、おしゃべりできるベンチがあったり、1階フォワイエではオーケストラ部やコーラス部、軽音楽部などが演奏会をしたりと、楽しみ方もいろいろです。
――講堂は広いですね。聖光学院もそうでしたが、カトリック校は大きなホールを持つものなのでしょうか。
萩原 全校集会をする機会も多いので、講堂は全校生徒を収容できるだけの大きさがあります。人気のオーケストラ部の100人を超える部員を収容できるよう、舞台も広めに設けました。他にも、百数十人いるダンス部、80人ほどのコーラス部などがあります。
――新校舎ができてから16年目ということですが、その間にいろいろ見直したこともありますか。
萩原 パソコンが並んでいた英語のCALL教室は、機材を撤去してじゅうたんを張り、靴を脱いで入るアクティビティルームにしました。そのことによって、英語のプレゼンテーションなどをさらに活発に行えるようになりました。