女子校ならではの教育観
――ところで、女子生徒が伸びるということをどのようなときに実感されていますか。
山本 私は約50年、一貫して女子校での教育に携わってきました。その経験から申し上げますと、「共感力」が男子よりも強い女子は、クラス内に「教え合う」「助け合う」「励まし合う」という空気ができ上がったときに大きく伸びていくことを、クラス担任として何度も経験してきました。女子校として、そういう空気感を学校全体につくっていきたいと思います。
――そのあたりが、集団で競わせる男子校との違いですね。
山本 本校の場合、東洋大学グローバルコースの生徒は、12学部35学科のどの学部学科を希望するか、高校2年次の3月までに決める必要があります。生徒はものすごく悩みます。その時点で、大学を卒業する22歳の自分像を明確に持つことが求められますから。
――途中から学部や学科を変更できればいいのでしょうが、日本の場合はそれが簡単にはできませんね。
山本 だからこそ、本校の教育ビジョンでもありますが、早い段階から自身の「みらい」を想像し、デザインできる力が不可欠なのです。第一希望ではない大学に進学することになった場合、もしそこで本当に学びたい学問が学べないとなると、それほどもったいない時間はありません。その点、考え抜いて決めた第一希望の学部学科に進学すれば、入学してからの大学生活は本当に充実したものになるでしょう。
私が特に大事にしているのは、生徒には第一希望の大学に進学してもらいたいということです。中高一貫コースの方でも思いは同じです。そのためには本校の不易の部分、校風を正しく理解した上で何を学ぶのか、22歳の自分がどのようにして社会に貢献する存在となるのかを見据えたキャリア教育が必要と考えています。
――しっかりとした目標を、子どもたちに持たせるわけですね。
山本 本校には「みらい科」というキャリア教育のプログラムがあります。就きたい職業を基にした、いわゆる逆算型の教育ではなく、「自立」と「自律」という、変化の激しい世の中でしっかりとした軸を持って生きぬく力を育むのが目的です。
何らかのハードルを越えた実感、達成感を持っていない子どもは、物事を判断し行動するときに、「それは間違っているのではないか」という不安が生じ、立ち止まってしまいます。本校では、決して手取り足取りということではなく、「失敗しても大丈夫」という心理的安全を確保してあげることを大事にしています。その上で、成功体験を少しずつ積み重ねながらコツコツ進むことでゴールが見えてくるという指導をしていくと、女子生徒は伸びていくと確信しています。