2010年、テルモは経営戦略論の大家・マイケル・ポーター教授の名を冠したポーター賞を受賞した。これは、独自性のある優れた競争戦略を実践し、高い収益性を実現している企業に贈られるもので、カテーテル事業におけるグローバルジャイアントの逆を張る戦略が評価された。当時経営企画室長として、この受賞を主導した佐藤慎次郎社長インタビューの中で、テルモがグローバルプレーヤーになった2つの成功要因が見えてきた。それは「ゲートウェイ」であり、「顧客エンゲージメント」である。ここに長年培った技術力が加わり、世界で独自のポジションを獲得することができたわけだが、テルモはそこに安住してはいない。医療のパラダイムシフトが加速する中で、テルモ流の「新しい医療」への挑戦が始まっている。

柄澤氏によると、「リスクの語源を遡ると、イタリア語の“risicare”、アラビア語の“risq”にたどり着く。その意味するところは、どちらも未来に夢や展望を持って挑戦し、その過程において危険や損失を被る可能性がある」という。これらの語源がいみじくも示しているが、リスクは「危機」と言い換えられるように、チャンスと危険の両面がある。何かが生じるといっきに拡大していく「スケールフリーネットワーク」の力がグローバル経済に強く影響を及ぼしており、何が起こるか予測できないといわれる。だからこそ、リスクについて考えてみたい。

1990年代、日本にコーポレートガバナンスが紹介された当時、ここまで社会的に認知され、制度的に整備されるとは、誰も想像していなかった。そして現在、発展的進化を遂げ「取締役会3.0」(Board 3.0)の時代といわれる。従来の2.0の時代からの問題、たとえば経営陣と取締役会の間における情報の非対称性、社外取締役が調査・分析するためのリソースや時間の決定的な不足、社外取締役のインセンティブやコミットメントの欠如などは今後も継続的に取り組まれていくべきだが、取締役会が議論すべきテーマは広がっている。戦略はもとより、倫理、パーパス、無形資産、多様性、ステークホルダー資本主義など、江川氏に取締役会にとっての重要トピックスについて聞く。

社員の挑戦を会社の成長に変える大改革
働き方に対する価値観が大きく変化している中で、従業員のパフォーマンスとエンゲージメントをどう高めるべきか。グローバルカンパニーから伝統的日本企業に転身して人事制度改革を指揮する三菱ケミカルの中田るみ子氏と、プロフェッショナル集団における働き方改革のリーダーを務めるアビームコンサルティングの岩井かおり氏の2人に、「個の尊重」時代の人材マネジメントについて聞いた。

米「フォーチュン100」企業の約7割が利用するサプライチェーン関連のITソリューションを提供しているCoupa。その日本法人トップは、コロナ禍によるサプライチェーンの混乱が尾を引く現状をどう見ているのか。そして、サプライチェーンの価値創出力を高めるためにどのような手を打てばいいのか。小関貴志氏に聞いた。

ジェンパクトは、顧客企業のオペレーションの最適化から、デジタルやデータアナリティクスを駆使した付加価値創出支援へと業容を広げてきた。同社が提唱するプロセス主導型変革は、ノンコア領域の徹底した効率化によって企業体力を強化しつつ、大胆なDXへのチャレンジを可能にするアプローチとして注目される。

新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)は、サプライチェーンの混乱、国境を超えた移動の制限など、これまでグローバルな経済活動の前提となっていた諸条件を大きく変化させた。また、米中のデカップリングの進展やステークホルダー資本主義の台頭も、グローバリゼーションの見直しを迫る要因となっている。一方で、国内の人口と市場の縮小が進む日本経済にとって、国際協調と自由貿易を前提としたグローバルな事業展開や人・資本の交流は、生き残りのために避けては通れない道である。グローバルな経済活動の流れを止めず、なおかつ国際社会と協調しながら成長を目指すために、ポストコロナの時代において日本企業はどのようなマネジメントを求められるのだろうか。

川村隆氏(現名誉会長)から本格的に始まり、中西宏明氏(元経団連会長)、そして東原氏へと受け継がれた日立の構造改革を振り返るとともに、東原改革の現在と未来、日立のパーパス経営などをひも解きながら、日本産業界における最大公約数的課題について考える。元マッキンゼー・アンド・カンパニーのディレクターであり、『経営改革大全』(日本経済新聞出版)や『パーパス経営』(東洋経済新報社)などの著者として知られる一橋大学ビジネススクールの名和高司教授に、東原改革の核心を探ってもらった。

京都大学の協力を得て、総長の湊長博氏と京都大学を卒業したビジネスリーダーたちとのシリーズ対談が実現した。その第1回は、1978年工学部卒のNTT代表取締役社長、澤田純氏をお招きした。対談では、まず原点回帰の必要性から始まり、目的と手段の混同という罠、非連続的飛躍とリーダーの役割、自由と規律のバランス、IOWN構想、産学連携の次なる形、技術進歩のジレンマ、超高齢社会の課題など、トピックスは多岐にわたったが、特筆すべきは、ビジネスの現場ではあまり議論されない、しかしだからこそ顧みるべき問題提起が多々あったことである。

ようやく世界的な取り組みが本格化している地球温暖化対策であり、その中でもCO2排出量ゼロが中心的な課題になっている。この秋に開催されたCOP26で岸田首相が発表した、2030年までは化石燃料とアンモニアを混焼することで排出量を段階的に削減し、以後は再エネに切り替えて2050年までに排出量ゼロを目指すというプランは、ヨーロッパ諸国や環境NGO、資本市場からの評判はすこぶる悪く、改善要求や批判を受けている。しかし、彼らの言い分は本当に妥当で正当なものなのか。そこには、政治的な思惑、無知や誤解が見られる。そこで、こうした現状を正しく理解するために、脱炭素をめぐる問題や日本のエネルギー戦略の未来を具体的に示した『エネルギーシフト』(白桃書房)の著者であり、また経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の委員を務める橘川武郎先生に解説をお願いした。

総合人財サービス大手、アデコグループのIT・R&D領域のエンジニア派遣、請負およびコンサルティングサービスを提供し、顧客企業のDXやスマートインダストリー化を支援するModis VSN。顧客企業からの要望に応じて、デジタル人財やデータサイエンティストなどの育成を支援する人財開発事業も主要事業として展開している。「デジタル人財不足」という日本の社会問題を解決するためのModis VSNの取り組みやチャレンジについて、執行役員の前田拓宏氏に聞いた。

変革の時代に求められるデータドリブンな意思決定
テクノロジーの急速な進化とともに、企業に蓄積されるデータの量は爆発的に増加している。しかし、たまったデータの中からインサイト(洞察)を導き出し、行動変容に結び付けて、ビジネスの成果を上げている企業は少ない。どうすれば、データを企業変革やビジネス変革の起点として活かせるようになるのか。世界中で高く評価されているビジュアル分析プラットフォームを提供するセールスフォース・ドットコムTableauの佐藤豊カントリーマネージャーが解説する。

「バリューチェーン・イノベーター」(VI)という独自のコンセプトを掲げ、現場に密着したコンサルティングで製造業のデジタル変革を支援するModis VSN。総合人財サービス大手アデコグループの一員だが、その支援領域はテック人財派遣の枠を超え、クライアント企業の製造現場や経営の変革、さらには社会課題の解決にまで広がっている。「VI」が日本のIT・R&D領域にもたらす価値について、Modis VSN 執行役員 Consulting事業本部本部長の塩田ゆり子氏に聞いた。

「管理する人事から、支援する人事へ」。ソニーグループは、「世界を感動で満たす」というパーパス(存在意義)の下、「個」を活かし、イノベーションを生み出し続ける人材を採用・育成するため、人事のあり方を抜本的に見直した。その狙いについて、同社執行役専務の安部和志氏が、アビームコンサルティングの岩井かおり氏、下村雄吾氏と語り合った。

ESGに対する関心が高まっている。世界最大級の運用会社ブラックロックの日本法人、ブラックロック・ジャパン代表取締役社長 CEOの有田浩之氏は、投資家の資金がESGに向かっており、これから企業が資金調達する際、ESGの視点で企業の取り組みが問われると指摘する。一方でこれらの潮流は、日本企業にとって大きなチャンスでもあると語る。その理由やポイントを聞いた。

KDDIは早くからESGの取り組みを進めてきた。ステークホルダーの関心の高まりを踏まえ、ESG関連情報の定量的なデータ開示をする試みも始めている。実現のきっかけは、ESG活動と企業価値向上の相関を定量的に分析し「顕在化」するアビームコンサルティングのDigital ESGの仕組みだ。KDDIが、効果が見えづらかった非財務情報を分析し、企業価値との関係性を明らかにした狙いや効果、展望について、KDDI執行役員の最勝寺奈苗氏と、プロジェクトをサポートしたアビームコンサルティングシニアマネージャーの今野愛美氏が語る。

国内最大の店舗ネットワークを展開する小売業者の責任として、国の目標を上回る環境負荷低減やSDGsへの取り組みに挑むセブン&アイグループ。その背景にある使命感と具体的なサステナビリティ戦略について、セブン&アイ・ホールディングス執行役員の釣流まゆみ氏に、アビームコンサルティング ダイレクターの山本英夫氏が聞いた。

目まぐるしく変化する社会と市場のはざまで、日本の製造業はこの先どのような成長戦略を描いていけばよいのか。その重要なヒントとなるのが、「ダイナミック・ケイパビリティ」(自己変革能力)だ。著書『ダイナミック・ケイパビリティの戦略経営論』でも知られる慶應義塾大学教授の菊澤研宗氏と、アビームコンサルティングで多くの製造業の支援に当たってきた橘知志氏に、“ダイナミック・ケイパビリティ”の注目点や実践のためのヒントを聞いた。

グループ長期経営方針「VISION 2025」の基本ストラテジーの一つとして「テクノロジーを活用し、不動産業そのものをイノベーション」することを掲げる三井不動産。「モビリティ構想」では、人やコンテンツの移動に着目し、従来の不動産業の垣根を超えた体験価値の創出を目指す。不動産大手が取り組むMaaS(Mobility as a Service=サービスとしてのモビリティ)とはどのようなものか。三井不動産ビジネスイノベーション推進部の須永尚氏に、製造業を中心に企業変革やグローバル化の支援を行ってきたアビームコンサルティングの古川俊太郎氏が、その意義を問う。

変化の振れ幅が大きい時代だからこそ、変えるべきものは何で、変えるべきでないものは何か。その見極めが経営者には求められる。アビームコンサルティング代表取締役社長の鴨居達哉氏と一橋ビジネススクール教授の楠木建氏の対談は、その論点から始まった。そして、企業経営のみならず、世の中全体の思考の流れを短期から長期へと引き戻すために、経営者はその変革の先頭に立つべきであり、それに伴ってコンサルティングファームに期待される役割も変化しているという議論へと発展していった。

