
真壁昭夫
「GAFA」の株価が下落基調にある。これまで注目されてきたビジネスモデルに、行き詰まりの兆しが見え始めているからだ。ウクライナ危機や中国のゼロコロナ政策をきっかけに、グローバル化の加速を前提としたアップルの事業運営の効率性は、低下する恐れが強くなっている。主要先進国における個人データ保護規制の強化なども、メタやグーグル、アマゾンの成長期待を低下させるだろう。軌跡を基本から振り返ると共に、現在のリスク要因を分析し、今後の展開を予測する。

2021年10~12月期のGDPギャップ(潜在的な需要と供給の差)はマイナス3.1%、金額にして年換算で17兆円の需要が不足している。人々が欲しいと思うモノやサービスが見当たらず、新しい需要を生み出すための構造改革が足りないからだ。需要の旺盛さをはじめ「経済の実力の差」が、米国やユーロ圏とわが国の金融政策の方向性の違いに明確に表れている。

「ウェブ3.0(スリー)」が注目され、「非代替性トークン」(NFT)の発行が急増している。象徴的な企業が、米国のダッパー・ラボだ。2020年10月、同社はNBAの名プレーシーンをNFTとして集めるゲーム、「NBA Top Shot」を始めた。希少性を担保する仕組みと、レアなカードを集めたいファンの欲求が重なった結果、NBA Top ShotのNFT価格が高騰。ロサンゼルス・レイカーズに所属しているレブロン・ジェームズ選手のNFTが、100万ドルで売りに出されている。

ウクライナ危機をきっかけに、「分断」が進んでいる。背景に、欧米流の自由主義に対する「反発」がある。特に、アジアや中東には、欧米各国の植民地にされた影響が強く残っている。

中国における3月の不動産開発上位100社の新築住宅販売は、前年同月比で53%減少した。不動産セクターは中国のGDP(国内総生産)の3割近くを占めるといわれる。投資用マンションの建設と販売が減少したことと、ゼロコロナ対策の徹底により、中国の景気減速リスクが高まっている。

日本の所得や雇用などの経済格差が拡大しているのはなぜか。バブル崩壊後の経済政策の失敗や、中国の高度成長をはじめとする外的要因に加え、コロナ禍やウクライナ危機による世界経済のパラダイムシフトをわかりやすく解説する。

経済の実力低下によって、わが国が円安の負の影響を吸収することが難しくなった。悪い円安の具体例として、エネルギーや食料品への家計支出が増える一方、余暇への支出は減る。コスト増加によって業績予想を下方修正する企業も出始めた。

3月に開催された中国の「全国人民代表大会」で、2022年の実質GDP成長率目標が、「5.5%前後」に引き下げられた。過去30年程度で最低の水準だ。不動産市況の悪化、新型コロナ感染再拡大による人流・物流の寸断、およびIT先端企業への締め付け強化といった、中国経済が抱える「三重苦」に、ウクライナ危機の影響が加わり、中国経済への下押し圧力が強まっている。

欧米諸国とロシアの分断=ブロック化によって、人々は欲しいものを自由に買うことが難しくなる。供給制約で、モノの値段は上がり、コストアップで企業の効率性は低下、景気が減速する国は増える。物価が上昇すると、景気が下落しても、金融政策にできることは限られる。世界は物価上昇と同時に、景気が下落する、「スタグフレーション」に追い込まれる可能性がある。

日米欧の政府が、ロシア中央銀行の資産を凍結する制裁は、かなり大きなインパクトを持つ。ロシア主要銀行が、国際的な金融システムである国際銀行間通信協会(SWIFT)から除外されたのをきっかけに、ルーブルは急落した。今後、世界的にどんな経済・金融危機が起きるのか、あらゆる可能性を考えてみたい。当然ながら、日本人も決して他人事ではない。

キリンホールディングスが、ビール会社から医薬品・健康関連企業へ大転換を図っている。旧協和発酵(現、協和キリン)が急成長し、一時は協和キリンの時価総額が親会社のキリンHDを上回った。健康関連分野では「プラズマ乳酸菌」を用いたサプリなどを強化し、「免疫の維持」という強い消費者ニーズのあるマーケットでも存在感を高めている。一方、国内ビール事業は今後、リストラの可能性も否定できない。

ウクライナ問題が「戦争」へ発展した場合、世界経済はどうなるのか。株価や通貨、債権は暴落する一方、エネルギーや鉱山資源、穀物の価格は上昇し、世界的な物価上昇圧力が一段と高まり、各国で企業の業績が悪化するだろう。戦争が回避されたとしても、各国の制裁により、供給制約が深刻化するはずだ。例えば半導体製造に用いられる「希ガス」の一つである、「ネオン」はロシアとウクライナでその多くが生産されている。ロシアが報復措置として希ガスの輸出を制限すれば、半導体不足に拍車がかかる。

西武ホールディングス(HD)は、ホテルやゴルフ場、スキー場など31施設をシンガポールの政府系ファンドであるGICに売却する。売却額は約1500億円、売却益は約800億円となる見通し。資産売却によって身軽になる=「アセットライト」経営へ方針転換を図り、ウィズコロナ時代に生き残りをかける。

「メタ・プラットフォームズ」に社名を変えた旧フェイスブックが、有力ゲームメーカーを多額の資金でM&Aの対象とするなど、世界の有力企業がメタバース分野の取り組みを急速に強化している。米マイクロソフトは687億ドル(約7.9兆円)を投じてゲームソフト会社アクティビジョン・ブリザード(アクティビジョン)を、ソニーグループは米バンジーを36億ドル(約4100億円)で買収する。突き詰めて言えば、「こんなことができたらいい」という人々の根源的な欲求や夢を実現することが、メタバースだ。メタバースは「ほんやくコンニャク」や「どこでもドア」などが飛び出す「ドラえもんの四次元ポケット」に例えることができる。

韓国の労働市場の改善ペースが鈍い。半導体輸出などに支えられ、GDP(国内総生産)は増えているにもかかわらずだ。21年の労働参加率は62.8%で、19年の63.3%を下回った。また、21年の就業者数は前年から36万9000人増えた。ただ、増え方に問題がある。世代別では、60歳以上の就業者数が33万人増と他の世代よりも多い。本来なら、景気回復によって人々の労働意欲が向上し、若年層を中心に就業者が増加するのが望ましい。韓国の労働市場は、若年層のチャンスが少ない状況が深刻化している。

2021年の中国の出生数は、1062万人だった。1949年の建国以来、最低水準だ。人口ピラミッドは15歳未満の年少人口が減り、65歳以上の老年人口が増加する「逆三角形型」が鮮明化しつつある。共産党政権は少子化を食い止めるために「三人っ子政策」を実施しようとしているが、党の考えとは逆に、人口減少はさらに深刻化することが懸念される。

世界経済全体で物価上昇圧力が高まっている。米連邦準備制度理事会(FRB)は、「利上げ」とバランスシートの縮小による「流動性の吸収」を急ぐ考えに転じた。今後、米国を中心に金融緩和から金融正常化へとシフトすることによって金利が上昇し、世界的に金融市場が不安定化する恐れがある。

毛沢東に次ぐ中国の最高指導者としての立場を確立したい、習近平国家主席。今後のシナリオの一つとして、中国のゼロ・コロナ運営によって、半導体の需給がさらに引き締まり、米国や欧州各国、わが国による「半導体争奪戦」が激化する可能性がある。

次世代の仮想空間である「メタバース」が注目を集めている。インターネットを使いこなせる人や企業と、そうではない経済主体の差が広がる「インターネット・デバイデッド」、あるいは「デジタル格差」と呼ばれる状況が出現したように、メタバース市場に参入できる企業と、それが難しい企業の差が鮮明になる「メタバース・デバイデッド」社会が、近く到来するだろう。

カーボン・クレジットの取引が盛り上がり、既にバブルの様相を呈している。一例が航空業界だ。二酸化炭素1トン当たりのクレジット価格は、21年1月4日の80セントから11月10日には8.35ドルに上昇した。価格高騰の原因の一つは、世界で統一されたルールがないことだ。わが国は、エネルギー政策の転換と脱炭素に関する国際ルール策定に、より真剣に取り組まなければならない。
