真壁昭夫
アップルのビジネスモデルの優位性が揺らいでいる。同社の業績への懸念が高まり、米国にあるアップルの小売店舗では労働組合が結成された。アプリストアに関しても、多くの国がアップルにストアを抱え込むのではなく、外部に開放するよう求めている。各国の規制当局がアップルのシェアをそぎ落とし、データの保護や自国企業に有利に働く環境整備を強化している。一方、アップルがメタバースに対応した「眼鏡型のデバイス」を発表するとの観測が高まる中で、クックCEOは新型の「M2チップ」を発表した。アップルが描く、ウェブ3.0の大激変期を生き抜く新しいビジネスモデルとは。

現時点で、世界の半導体不足がすぐに解消される展開は想定できない。メモリ半導体の分野ではDRAMの価格が下落し始めているが、それ以上にパワー半導体やマイコン、次世代半導体の需要が急増している。例えば、米アップルは新しいチップである「M2」を発表した。世界のネット業界は、GAFAなどが一手にサービスを提供してビッグデータを事実上タダで手に入れる「ウェブ2.0」から、ブロックチェーンを用いて個々人が自分のデータを管理するようになる「ウェブ3.0」に向かう。次世代チップ開発を強化するアップルはそうした見方を強めている。

米JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOが、「投資家は経済のハリケーンに身構えるべきだ」と警告した。ここでいうハリケーンとは、物価上昇と景気後退、金融市場の不安定化といった未曽有の混乱のことだ。米国ではそうした状況に身構えて、守りを固めようとする大手企業や金融機関のトップが増えている。世界経済の先行きに過度な楽観は禁物だろう。

バイデン米大統領はなぜ、新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)を表明したのか。目的はもちろん、中国に対抗することにある。では、オバマ政権時の副大統領としてバイデン氏が推進した「環太平洋連携協定」(TPP)や、東アジアの「地域的な包括的経済連携」(RCEP)協定は今、どうなっているのか。それぞれの違いと関係性を整理しながら、わが国のしかるべき方向性について考える。

NYダウが8週続落した。世界恐慌のさなかにあった1932年以来、90年ぶりの下落記録だ。背景には、米国をはじめ株価が割高であること、コロナ禍やウクライナ危機などによって世界経済の不確定要素が解消されないことがある。米FRBは、物価上昇は一時的とする見方が誤っていたことを認め、インフレ退治に必死。6月と7月には追加利上げが実施される方針だ。世界的な株価高騰を支えた超低金利と過剰流動性の解消が同時に進む。それはいまだかつて世界の投資家が経験していないことだ。

ウクライナ危機や円安、穀物やエネルギー資源の価格上昇、各地の異常気象や中国の食糧買い増しも相まって、世界の食糧危機・争奪戦が熾烈(しれつ)化するだろう。わが国ではロングセラーのスナック菓子、「うまい棒」が42年の歴史で初の値上げに踏み切ったし、アサヒビールやサントリーも値上げに踏み切るという。パンやうどんなどの価格も追加的に引き上げられる可能性が高い。国内企業の対応を見ていると、「国内需要が弱いため、極力、値上げは避けたい」との考えが多く、値上げはまだ初期段階にあると考えられる。

3月上旬以降、ロシア・ルーブルは米ドルなどに対して上昇基調で推移した。背景には、制裁に「大きな抜け道」があったことがある。エネルギー供給の寸断を懸念した西側諸国は、ロシア最大手のズベルバンクとガスプロムバンクのエネルギー関連取引を制裁対象外とした。もう一つが、中国とインドがロシアからの原油などを輸入し続けていることだ。しかし、5月に欧米各国が発表した追加制裁により、抜け道は狭まる。追加制裁のポイントは大きく二つある。

「GAFA」の株価が下落基調にある。これまで注目されてきたビジネスモデルに、行き詰まりの兆しが見え始めているからだ。ウクライナ危機や中国のゼロコロナ政策をきっかけに、グローバル化の加速を前提としたアップルの事業運営の効率性は、低下する恐れが強くなっている。主要先進国における個人データ保護規制の強化なども、メタやグーグル、アマゾンの成長期待を低下させるだろう。軌跡を基本から振り返ると共に、現在のリスク要因を分析し、今後の展開を予測する。

2021年10~12月期のGDPギャップ(潜在的な需要と供給の差)はマイナス3.1%、金額にして年換算で17兆円の需要が不足している。人々が欲しいと思うモノやサービスが見当たらず、新しい需要を生み出すための構造改革が足りないからだ。需要の旺盛さをはじめ「経済の実力の差」が、米国やユーロ圏とわが国の金融政策の方向性の違いに明確に表れている。

「ウェブ3.0(スリー)」が注目され、「非代替性トークン」(NFT)の発行が急増している。象徴的な企業が、米国のダッパー・ラボだ。2020年10月、同社はNBAの名プレーシーンをNFTとして集めるゲーム、「NBA Top Shot」を始めた。希少性を担保する仕組みと、レアなカードを集めたいファンの欲求が重なった結果、NBA Top ShotのNFT価格が高騰。ロサンゼルス・レイカーズに所属しているレブロン・ジェームズ選手のNFTが、100万ドルで売りに出されている。

ウクライナ危機をきっかけに、「分断」が進んでいる。背景に、欧米流の自由主義に対する「反発」がある。特に、アジアや中東には、欧米各国の植民地にされた影響が強く残っている。

中国における3月の不動産開発上位100社の新築住宅販売は、前年同月比で53%減少した。不動産セクターは中国のGDP(国内総生産)の3割近くを占めるといわれる。投資用マンションの建設と販売が減少したことと、ゼロコロナ対策の徹底により、中国の景気減速リスクが高まっている。

日本の所得や雇用などの経済格差が拡大しているのはなぜか。バブル崩壊後の経済政策の失敗や、中国の高度成長をはじめとする外的要因に加え、コロナ禍やウクライナ危機による世界経済のパラダイムシフトをわかりやすく解説する。

経済の実力低下によって、わが国が円安の負の影響を吸収することが難しくなった。悪い円安の具体例として、エネルギーや食料品への家計支出が増える一方、余暇への支出は減る。コスト増加によって業績予想を下方修正する企業も出始めた。

3月に開催された中国の「全国人民代表大会」で、2022年の実質GDP成長率目標が、「5.5%前後」に引き下げられた。過去30年程度で最低の水準だ。不動産市況の悪化、新型コロナ感染再拡大による人流・物流の寸断、およびIT先端企業への締め付け強化といった、中国経済が抱える「三重苦」に、ウクライナ危機の影響が加わり、中国経済への下押し圧力が強まっている。

欧米諸国とロシアの分断=ブロック化によって、人々は欲しいものを自由に買うことが難しくなる。供給制約で、モノの値段は上がり、コストアップで企業の効率性は低下、景気が減速する国は増える。物価が上昇すると、景気が下落しても、金融政策にできることは限られる。世界は物価上昇と同時に、景気が下落する、「スタグフレーション」に追い込まれる可能性がある。

日米欧の政府が、ロシア中央銀行の資産を凍結する制裁は、かなり大きなインパクトを持つ。ロシア主要銀行が、国際的な金融システムである国際銀行間通信協会(SWIFT)から除外されたのをきっかけに、ルーブルは急落した。今後、世界的にどんな経済・金融危機が起きるのか、あらゆる可能性を考えてみたい。当然ながら、日本人も決して他人事ではない。

キリンホールディングスが、ビール会社から医薬品・健康関連企業へ大転換を図っている。旧協和発酵(現、協和キリン)が急成長し、一時は協和キリンの時価総額が親会社のキリンHDを上回った。健康関連分野では「プラズマ乳酸菌」を用いたサプリなどを強化し、「免疫の維持」という強い消費者ニーズのあるマーケットでも存在感を高めている。一方、国内ビール事業は今後、リストラの可能性も否定できない。

ウクライナ問題が「戦争」へ発展した場合、世界経済はどうなるのか。株価や通貨、債権は暴落する一方、エネルギーや鉱山資源、穀物の価格は上昇し、世界的な物価上昇圧力が一段と高まり、各国で企業の業績が悪化するだろう。戦争が回避されたとしても、各国の制裁により、供給制約が深刻化するはずだ。例えば半導体製造に用いられる「希ガス」の一つである、「ネオン」はロシアとウクライナでその多くが生産されている。ロシアが報復措置として希ガスの輸出を制限すれば、半導体不足に拍車がかかる。

西武ホールディングス(HD)は、ホテルやゴルフ場、スキー場など31施設をシンガポールの政府系ファンドであるGICに売却する。売却額は約1500億円、売却益は約800億円となる見通し。資産売却によって身軽になる=「アセットライト」経営へ方針転換を図り、ウィズコロナ時代に生き残りをかける。
