真壁昭夫
半導体大手ルネサスエレクトロニクスは、英国の半導体メーカーであるダイアログ・セミコンダクターを買収する。各国当局の承認を経て8月末にも完了見込み。だが、今回の買収に関して、半導体や経済の専門家の見方は分かれるようだ。特に、買収のタイミングが微妙だ。ルネサスの買収は半導体市況が上昇する過程で決定された。そのため、高値づかみにならないか懸念する専門家は多い。市況の変化によってルネサスの事業体制が不安定化し、“のれん”の減損リスクが高まる可能性は否定できない。

EUと米国で自動車電動化政策に「ある違い」が出た。EUではガソリン車に加えてハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)とも禁止。一方、米国はPHVと燃料電池車(FCV)も許した「良いとこ取り」な方針だ。他方、工業製品評価に「ライフサイクルアセスメント」(LCA)が強化されると、火力発電中心の日本経済にとって大きな打撃である。メード・イン・ジャパン製品の競争力は失われるかもしれない。

7月、上海総合指数は月間で5.4%下落した。また、「ナスダック・ゴールデン・ドラゴン・チャイナ・インデックス」(米国上場の中国大手98銘柄からなる株式指数)は22%下落した。背景には、共産党政権による大手企業への締め付け強化がある。習政権はインフラ投資などで景気を支えつつ、資本の論理よりも、党の指揮による経済運営を目指す可能性が高い。中長期的に中国経済が人々の自由への渇望を抑えつつ、一党独裁の下で成長できるかは不透明だ。

欧州委員会が2035年にガソリン車の販売を事実上禁止する。電気自動車シフトによって独フォルクスワーゲン(VW)は世界への影響力を強めたい意向だ。一方、トヨタ自動車は商用車連合にスズキとダイハツ工業を加え、物流を含めたモビリティー技術の革新を狙う。VWと比較した場合、長期視点で、多様な移動の選択肢を社会に提供しようとしている。

コロナウイルスの変異株は、世界経済全体にとって間違いなく最大のリスクだ。変異株による感染再拡大は、格差の拡大をはじめとする経済の二極化(K字型の景気回復)を加速させる。コロナ禍が世界の変化を加速させ、過去の経験則や常識が当てはまりづらくなっている。経済格差やデジタル化のスピード、製造業と非製造業の景況感の差が深刻だ。

1~6月期、日本の工作機械受注額が前年同期比で71.2%増加した。ファナックや安川電機、DMG森精機など、世界の自動車や半導体の生産活動を支える工作機械や制御機器メーカーは、IT先端技術を積極的に活用することによって顧客企業の生産性向上を目指している。

半導体大手メーカー米インテルが、台湾積体電路製造(TSMC)の次世代製造技術を採用する見通しだ。これは半導体業界にとってTSMCがインテルに代わって盟主の地位に立ちつつあることを意味する。世界経済全体、さらには中国と米国、台湾を含めた世界的な安全保障の問題にも重要な影響を与えることになる。

近年、世界的に大手企業の優勝劣敗が鮮明化している。要因の一つとして、企業自身が自己変革する意識の差があるだろう。その中で、デジタル技術の活用は重要なファクターだ。経営トップがオープンな姿勢で新しい発想を取り込み、高付加価値なモノやサービスを創出する体制を整えるべきだ。

半導体不足の深刻化によって、供給面では台湾の重要性が一段と高まった。その中で、台湾半導体産業が新型コロナウイルスの感染拡大や、水、電力、人材、部材、装置などの不足に直面していることは軽視できない。

任天堂の業態転換は経営戦略論のよいケーススタディーといえる。その歴史を振り返ると、(1)経営者が自社の守備範囲を事前に絞らなかったこと、(2)長期の視点に基づいた世界経済の展開への適応、(3)才能の重視――の三つが浮上する。

茨城県つくば市に、世界最大のファウンドリーである台湾TSMCが半導体生産の「後工程」の研究開発拠点を新設する(5月31日発表)。ポイントは、TSMCが、半導体の部材を中心にわが国企業の生産技術をより重視し始めたことだ。

ソニーグループは2021年3月期決算で純利益が初めて1兆円を超えた。復活劇の要因は、「ソニーらしさ」を取り戻したこと。不採算事業を売却する一方、コンテンツビジネスを強化して業態転換を進めた。映画『鬼滅の刃』や音楽ユニット「YOASOBI」はその象徴だ。

「ビットコイン」など仮想通貨の価格が乱高下している。その裏、主要先進国の中央銀行などは、価値が一定の「デジタル通貨」の開発に取り組んでいる。デジタル通貨の実用化によって、ビットコインは投機の手段としての立ち位置がより鮮明になるだろう。

2030年度までにわが国は、2013年度対比で炭素排出量を46%削減する目標にチャレンジする。脱炭素によってわが国の技術が生かされる面はあるものの、わが国企業が脱炭素のコストアップで競争力がそがれ、厳しい状況に追い込まれる懸念も軽視できない。

物流大手の佐川急便が中国製電気自動車(EV)の導入を発表した。世界は脱炭素に向けて急速にEV化を進めているが、日本の自動車産業にとって無視できないマイナス面もありそうだ。自動車が家電の「二の舞い」になる展開は軽視できない。

半導体2大ファウンドリーである台湾積体電路製造(TSMC)と韓国サムスン電子の業績は堅調です。ただ、中長期的には、最先端技術と生産能力の向上に取り組むTSMCとサムスン電子の競争力格差が広がる可能性があります。

「半導体争奪戦」で日本企業が取るべき戦略とは?業界盟主が米インテルから台湾TSMCにシフトする今、高い技術力を誇る日本の半導体装置・部材企業はどのように追随するべきでしょうか。

バイデン政権による“半導体サミット”では、米国がより多くの半導体の確保を急いでいることが明らかになった。日本の半導体企業が競争力を発揮するために、政府は本腰を入れて当該分野の強化をすべきだ。

台湾海峡における中国の軍事的プレゼンスは一段と増し、米国にとっての台湾の地政学リスクが無視できない状況にまで高まっています。そのような中、バイデン政権は米国の自動車と半導体関連企業に加え、台湾TSMCや韓国サムスン電子の幹部と会談し、協力を求めました。世界的に半導体不足が深刻化する中、日本の半導体関連企業にとっては大きなビジネスチャンスが到来しています。

4月5日にモバイル事業からの撤退を発表した韓国のLG電子と、4月1日に社名を「ソニーグループ」へと変更し、次々と新たな技術を生み出しているソニー。2社の決定的な違いは何だったのでしょうか?
