真壁昭夫
世界経済全体で物価上昇圧力が高まっている。米連邦準備制度理事会(FRB)は、「利上げ」とバランスシートの縮小による「流動性の吸収」を急ぐ考えに転じた。今後、米国を中心に金融緩和から金融正常化へとシフトすることによって金利が上昇し、世界的に金融市場が不安定化する恐れがある。

毛沢東に次ぐ中国の最高指導者としての立場を確立したい、習近平国家主席。今後のシナリオの一つとして、中国のゼロ・コロナ運営によって、半導体の需給がさらに引き締まり、米国や欧州各国、わが国による「半導体争奪戦」が激化する可能性がある。

次世代の仮想空間である「メタバース」が注目を集めている。インターネットを使いこなせる人や企業と、そうではない経済主体の差が広がる「インターネット・デバイデッド」、あるいは「デジタル格差」と呼ばれる状況が出現したように、メタバース市場に参入できる企業と、それが難しい企業の差が鮮明になる「メタバース・デバイデッド」社会が、近く到来するだろう。

カーボン・クレジットの取引が盛り上がり、既にバブルの様相を呈している。一例が航空業界だ。二酸化炭素1トン当たりのクレジット価格は、21年1月4日の80セントから11月10日には8.35ドルに上昇した。価格高騰の原因の一つは、世界で統一されたルールがないことだ。わが国は、エネルギー政策の転換と脱炭素に関する国際ルール策定に、より真剣に取り組まなければならない。

日本工作機械工業会によると、11月までの年初来の受注額は、前年同期比で内需が56.8%増、外需は84.9%増だった。東南アジアで電気自動車と半導体の直接投資が増えているのが背景だ。中国から移管した生産拠点をさらに別の国に移す企業が増加し、世界のサプライチェーンの再編が一段と加速していることは大きい。

インテルは自前で設計・開発し、微細化(ロジック半導体などの回路線幅を小さくする製造技術)を進めて最新の生産体制を整える、「垂直統合」のビジネスモデルを急ピッチで見直している。その姿勢に、わが国企業が学ぶべき点は多い。詳細は後述するが、過去の成功体験を捨て、大胆な事業運営体制の変革に挑んでいるのだ。

日産自動車が11月末、今後5年間で2兆円を投資し、電気自動車(EV)の開発を加速させる戦略を発表した。背景にはカルロス・ゴーン氏がトップだった時代の「負の影響」を払拭(ふっしょく)し、EV開発によって次のステージで巻き返しを図る意図があるだろう。ただ、5年で2兆円の投資規模は、十分とはいえないかもしれない。今後、日産がどう生き残りを目指すか、先行きを懸念する利害関係者が増えている。独ダイムラーによる仏ルノー株売却は、その一つだ。

11月から国内の自動車生産台数が回復し始めた。にもかかわらず、日本株の上値は重い。対照的に、米国の株価は最高値を更新し続けている。カネ余りの影響に加えて、GAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)等のIT先端企業が経済運営の効率性を上げている。わが国経済は、「自動車一本足打法」を続けるか否かの分水嶺を迎えた。このまま自動車依存が続けば、わが国の地盤沈下は避けられず、国民の生活水準をも引き下げなければならない恐れが出てくる。それほど脱炭素やデジタル化への遅れは深刻だ。

トラック・バスメーカーのいすゞ自動車は、電気自動車(EV)のトラックの量産を目指している。いすゞは、航続距離の短さというEVトラックの課題を克服する技術的なブレークスルーの実現にめどをつけたようだ。それは、ハイブリッド車(HV)技術を重視し、結果としてEVシフトへの対応が遅れたわが国自動車産業の巻き返しにつながる可能性を秘めている。

習近平国家主席が「歴史決議」を採択した。まさに中国が新しい時代に足を踏み入れるとの宣言だ。新時代に向かう経済では、「共同富裕(国全体で豊かになる考え)」が重視され、民間企業への締め付けは強まることが懸念される。習氏は経済活動の一部を犠牲にしてでも、習氏を頂点とした政治体制を作ろうとしているようだ。

中国経済の減速が一段と鮮明だ。(1)不動産市況の悪化、(2)不安定な電力供給、(3)コロナ感染再拡大、(4)経済よりも政治を優先する政策という4つの重しによって、中国経済はさらに減速するだろう。

ソニーはモバイルやオンラインゲーム開発のGSN Gamesを米スコープリーに約10億ドルで売却すると発表した。今後の注目は、ソニーの選択と集中が成果につながるか否かだ。世界経済の変化は激烈を極めている。ソニーといえども変化への対応が遅れれば、事業運営体制が不安定化するリスクは否定できない。

キオクシア(旧東芝メモリ)とキヤノン、大日本印刷がコンソーシアムを組んで、「ナノインプリント」と呼ばれる半導体回路形成の新しい技術の実用化を目指している。この技術を期待通りに開花させることができれば、日の丸半導体の「逆襲」も実現可能と期待が高まっている。

中国の不動産業界で、いよいよバブル崩壊が現実味を帯びてきた。大手の恒大集団(エバーグランデ)に続き、いくつかのデベロッパーのデフォルト懸念が一段と高まっている。中国経済が急減速すると、2015年に起きた「チャイナショック」の再来というべき負の影響が、世界的に波及すると予想される。

岸田政権は分配をより重視し、令和版所得倍増計画を打ち出している。が、本当にわが国経済は回復過程を歩めるのだろうか。1960年に池田内閣が所得倍増計画を発表した当時、わが国経済は高度成長期にあった。需要は供給を上回っていた。しかし現在、わが国の需要は供給を下回っている。4~6月期の需要不足は年換算した金額ベースで約22兆円(マイナス3.9%の需給ギャップ)だ。分配だけで所得を増やすのは難しい。

世界的にエネルギー価格が上昇し、インフレの足音が忍び寄っている。特に石炭価格の上昇が鮮明で、各国が石炭をし烈に奪い合っている。世界全体でエネルギー資源、自動車、生鮮食料品などの供給が、需要に追い付いていない状況だ。10月から、わが国でもマーガリンやコーヒー豆などが値上がりした。物価の上昇ペースが鈍かった日本にもインフレの波が押し寄せつつある。

中国の不動産大手・中国恒大集団(エバーグランデ)のデフォルト(債務不履行)リスクが高まっている。習近平国家主席をトップとする共産党指導部が、同社を全面的に救済するかは不透明だ。公的資金を用いて救済するとなると、富裕層である民間企業の創業経営者を助けることになる。それは、習氏に対する世論の反発が増える要因になるだろう。

菅義偉首相の退陣表明をきっかけに、日本株が上昇の勢いを強めている。海外投資家の日本株に対する見方が変化したのだ。ただ、期待先行で株価が上げた分、今後、新政権に失望感が出るようだと、株価上昇トレンドの継続は難しいはずだ。世界経済の供給ボトルネックが深刻化しており、その影響も軽視できない。

ホンダは米ゼネラルモーターズ(GM)との提携を強化する。目的の一つは、EVの共通化など「規模の経済」の発揮だ。加えて、「企業風土変革の起爆剤」としての側面もある。組織が過去の成功体験に浸ると、新しい取り組みを志す思考は停止する。ホンダがGMとの提携を強化するのは、そうした「心の慣性の法則」を打破し、競争に生き残るためだ。

8月末、米国のグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン(GAFA)の株式時価総額が、日本株全体の時価総額を上回った。逆にいえば、わが国企業の株価の低迷が続いている証拠とも解釈できる。その背景には、わが国企業の「新しいモノを作る」能力が劣化し、個々の企業の期待成長率が低下したことがある。
