
真壁昭夫
今からちょうど10年前の2012年8月、ソニーは収益力の低下に直面した。背景には、1990年代以降の失敗があった。最も影響が大きかったのが、コングロマリット化戦略だ。ソニーはモノをつくるのか、コンテンツを生み出すのか、それとも金融で生きていくか、本業が分からなくなってしまった。12年以降、ソニーは選択と集中を進め、モノづくりの原点に回帰している。ただし、かつてのソニーには、今日とは異なるアニマルスピリットがあふれていた。ソニーのDNAは、世界をあっと驚かせる、全くもって新しいモノを世界に提供することだ。

アップルがわが国でのiPhoneなどの値上げに踏み切ったのは、ドル高の影響で計画していた収益を確保することが難しくなったからだ。ざっくり計算するだけでも、ドル高がアップルに与える負のインパクトがよく分かる。米国の金融政策とアップルの経営の行方、iPhoneの追加値上げとApple Musicなどのサブスク利用料金の引き上げの可能性を徹底解説する。

中国で不動産バブルの後始末が深刻化している。大手デベロッパーは資産売却を加速しているが、資産価格の下落スピードはそれを上回る。習近平政権は銀行に不動産業界向けの融資を増やすよう規制を緩めているが、相場底打ちの兆しが見えない。1~6月期の不動産開発投資は前年同期比5.4%減り、分譲住宅の売上高は同28.9%も減少した。懸念されるのが失業の増加だ。6月、中国の若年層(16~24歳)の調査失業率は19.30%に上昇、調査開始以来最高だった。

2022年4~6月期の半導体業界は、メモリ半導体を主体として収益を得ている半導体メーカーの業績拡大ペースが鈍化した。台湾TSMCと韓国サムスン電子の連結決算を比較すると、それがよく分かる。ポイントは、ビジネスモデルの違いと営業利益だ。

「俯瞰外交」によって安倍氏は米中から必要とされる日本のイメージを世界に与えた。それがあったからこそ、安倍政権下で日米豪印の協力体制の枠組みであるクアッドが創設された。俯瞰外交の成果は大きい。ただ、安倍氏の外交政策にも踏み込み不足の部分があったかもしれない。東南アジアの新興国との関係強化はその一つだ。岸田政権は安倍氏の考えを引き継ぎ、強化すべきだろう。

民間の仮想通貨市場が総崩れだ。2021年11月末から22年6月末までの間、ビットコインの対ドルレートは約65%も下落した。相対的に価値が安定していると考えられたステーブルコインの価値も5月以降、下落している。仮想通貨バブルを支えた二大要因であり、ビル・ゲイツ氏も指摘していた「カネ余り」と「根拠なき楽観」は解消に向かう。

中国で16~24歳の失業率が上昇し続けている。2022年5月の水準は18.4%と統計開始来の最高水準を更新した。SNS上では、「大学卒業イコール失業者生活の始まりだ」などと将来の悲観を吐露する若者が増えている。より自由かつ安心できる生活の基盤を手に入れたいと考え、わが国での就職を目指す人も増えているようだ。

アップルのビジネスモデルの優位性が揺らいでいる。同社の業績への懸念が高まり、米国にあるアップルの小売店舗では労働組合が結成された。アプリストアに関しても、多くの国がアップルにストアを抱え込むのではなく、外部に開放するよう求めている。各国の規制当局がアップルのシェアをそぎ落とし、データの保護や自国企業に有利に働く環境整備を強化している。一方、アップルがメタバースに対応した「眼鏡型のデバイス」を発表するとの観測が高まる中で、クックCEOは新型の「M2チップ」を発表した。アップルが描く、ウェブ3.0の大激変期を生き抜く新しいビジネスモデルとは。

現時点で、世界の半導体不足がすぐに解消される展開は想定できない。メモリ半導体の分野ではDRAMの価格が下落し始めているが、それ以上にパワー半導体やマイコン、次世代半導体の需要が急増している。例えば、米アップルは新しいチップである「M2」を発表した。世界のネット業界は、GAFAなどが一手にサービスを提供してビッグデータを事実上タダで手に入れる「ウェブ2.0」から、ブロックチェーンを用いて個々人が自分のデータを管理するようになる「ウェブ3.0」に向かう。次世代チップ開発を強化するアップルはそうした見方を強めている。

米JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOが、「投資家は経済のハリケーンに身構えるべきだ」と警告した。ここでいうハリケーンとは、物価上昇と景気後退、金融市場の不安定化といった未曽有の混乱のことだ。米国ではそうした状況に身構えて、守りを固めようとする大手企業や金融機関のトップが増えている。世界経済の先行きに過度な楽観は禁物だろう。

バイデン米大統領はなぜ、新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)を表明したのか。目的はもちろん、中国に対抗することにある。では、オバマ政権時の副大統領としてバイデン氏が推進した「環太平洋連携協定」(TPP)や、東アジアの「地域的な包括的経済連携」(RCEP)協定は今、どうなっているのか。それぞれの違いと関係性を整理しながら、わが国のしかるべき方向性について考える。

NYダウが8週続落した。世界恐慌のさなかにあった1932年以来、90年ぶりの下落記録だ。背景には、米国をはじめ株価が割高であること、コロナ禍やウクライナ危機などによって世界経済の不確定要素が解消されないことがある。米FRBは、物価上昇は一時的とする見方が誤っていたことを認め、インフレ退治に必死。6月と7月には追加利上げが実施される方針だ。世界的な株価高騰を支えた超低金利と過剰流動性の解消が同時に進む。それはいまだかつて世界の投資家が経験していないことだ。

ウクライナ危機や円安、穀物やエネルギー資源の価格上昇、各地の異常気象や中国の食糧買い増しも相まって、世界の食糧危機・争奪戦が熾烈(しれつ)化するだろう。わが国ではロングセラーのスナック菓子、「うまい棒」が42年の歴史で初の値上げに踏み切ったし、アサヒビールやサントリーも値上げに踏み切るという。パンやうどんなどの価格も追加的に引き上げられる可能性が高い。国内企業の対応を見ていると、「国内需要が弱いため、極力、値上げは避けたい」との考えが多く、値上げはまだ初期段階にあると考えられる。

3月上旬以降、ロシア・ルーブルは米ドルなどに対して上昇基調で推移した。背景には、制裁に「大きな抜け道」があったことがある。エネルギー供給の寸断を懸念した西側諸国は、ロシア最大手のズベルバンクとガスプロムバンクのエネルギー関連取引を制裁対象外とした。もう一つが、中国とインドがロシアからの原油などを輸入し続けていることだ。しかし、5月に欧米各国が発表した追加制裁により、抜け道は狭まる。追加制裁のポイントは大きく二つある。

「GAFA」の株価が下落基調にある。これまで注目されてきたビジネスモデルに、行き詰まりの兆しが見え始めているからだ。ウクライナ危機や中国のゼロコロナ政策をきっかけに、グローバル化の加速を前提としたアップルの事業運営の効率性は、低下する恐れが強くなっている。主要先進国における個人データ保護規制の強化なども、メタやグーグル、アマゾンの成長期待を低下させるだろう。軌跡を基本から振り返ると共に、現在のリスク要因を分析し、今後の展開を予測する。

2021年10~12月期のGDPギャップ(潜在的な需要と供給の差)はマイナス3.1%、金額にして年換算で17兆円の需要が不足している。人々が欲しいと思うモノやサービスが見当たらず、新しい需要を生み出すための構造改革が足りないからだ。需要の旺盛さをはじめ「経済の実力の差」が、米国やユーロ圏とわが国の金融政策の方向性の違いに明確に表れている。

「ウェブ3.0(スリー)」が注目され、「非代替性トークン」(NFT)の発行が急増している。象徴的な企業が、米国のダッパー・ラボだ。2020年10月、同社はNBAの名プレーシーンをNFTとして集めるゲーム、「NBA Top Shot」を始めた。希少性を担保する仕組みと、レアなカードを集めたいファンの欲求が重なった結果、NBA Top ShotのNFT価格が高騰。ロサンゼルス・レイカーズに所属しているレブロン・ジェームズ選手のNFTが、100万ドルで売りに出されている。

ウクライナ危機をきっかけに、「分断」が進んでいる。背景に、欧米流の自由主義に対する「反発」がある。特に、アジアや中東には、欧米各国の植民地にされた影響が強く残っている。

中国における3月の不動産開発上位100社の新築住宅販売は、前年同月比で53%減少した。不動産セクターは中国のGDP(国内総生産)の3割近くを占めるといわれる。投資用マンションの建設と販売が減少したことと、ゼロコロナ対策の徹底により、中国の景気減速リスクが高まっている。

日本の所得や雇用などの経済格差が拡大しているのはなぜか。バブル崩壊後の経済政策の失敗や、中国の高度成長をはじめとする外的要因に加え、コロナ禍やウクライナ危機による世界経済のパラダイムシフトをわかりやすく解説する。
