真壁昭夫
東芝が日本産業パートナーズ(JIP)などの買収を受け入れる見込みだが、再建はこれからが本番だ。リストラの強化などいばらの道が続くことになるだろう。東芝経営陣に求められるのは、明確な成長戦略を示すこと、利害調整を円滑に進めることに他ならない。経済や安全保障の面で、東芝の重要性は一段と高まっている。東芝は産業界、社会の負託を受けている認識を持ち、構造改革を加速するべきだ。

韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権による対日政策の変化は、日本にとって経済、安全保障など多くの面で重要なチャンスだ。ただ、これですぐに日韓関係の諸問題が、全て解決すると考えるのは早計だろう。安倍晋三政権以降の冷静かつ毅然とした姿勢を堅持し、“最終的かつ不可逆的”な解決を約した日韓請求権協定など過去の国家間合意の順守を韓国に求めるべきだ。その上で、尹政権の取り組みと、それに対する世論の反応を確認し、経済や安全保障面での関係強化を目指すことを念頭に置いた方がよい。

米国の中堅銀行の破綻が立て続けに3件発生したことは、超低金利をベースに続いてきたマネーゲームの終焉を象徴する出来事といえる。今回の調整局面で、過去と根本的に異なるのは、インフレ圧力が強いことだ。今後、米FRBをはじめとする中央銀行は、三つの課題を克服する必要がある。これは、かなり難しいかじ取りを余儀なくされる。わが国の日本銀行は慎重かつ段階的に、金融政策の追加修正を進める公算が高い。

世界のIT産業ではAI分野に関心がシフトしている。言語型AIなどと呼ばれる「チャットGPT」を用いてマイクロソフトは検索市場のシェアを、王者・グーグルから奪取しようとしている。AIが果たす役割は日常生活から企業の事業運営、社会インフラなどの管理、さらには防衛(安全保障)まで増えている。米国は中国が台頭する状況に懸念を強め、さまざまな対策を講じている。米中対立のはざまで揺れるAI業界の成長性をどのように見極めればいいのだろうか。

韓国の少子化が深刻だ。2022年の出生率が0.78と発表された後は、ウォン安と韓国株安も進んだ。1970年時点では4.53もあった韓国の出生率は、なぜ急速に低下しているのか。その経緯をひもとくと、韓国経済の課題や社会不安の火種も理解できそうだ。

ソフトバンクグループ(SBG)の業績が不安定だ。2022年7~9月期はアリババ株を一部売却し3兆円の最終黒字を確保したものの、10~12月期は7834億円の最終赤字に陥った。これまでは孫正義会長兼社長の「眼力」に基づき、投資で利益を得てきた。それは見方を変えればハイリスク型の資金運用でもあり、業績は世界経済の環境変化に影響されやすい。SBGはどのように業績を立て直すのか。

政府は2月14日、4月で任期満了となる日本銀行の黒田東彦総裁の後任に、経済学者で元日銀審議委員の植田和男氏を充てる人事案を国会に提示した。そもそも、日本の金融政策はどうして行き詰まったのか。日銀の金融政策の「あるべき姿」とは?植田新総裁下で想定される金融政策の「修正プロセス」をひもといていく。

韓国の半導体メーカー・SKハイニックスの業績が、サムスン電子に続いて急速に悪化している。対照的に、米国ではアナログ半導体メーカーの業績は底堅い。この違いは何か。世界の半導体競争の最新事情を解説する。

半導体製造装置の対中輸出規制は、日本にどんな影響を及ぼすのか。今後、わが国の半導体製造装置メーカーに求められるのは、他国の企業に先駆けて、新しい製造技術を創出することだ。その成否は、わが国経済の展開に大きな影響を及ぼすだろう。

中国の株価が上昇している。先行きを楽観する投資家が増え、人民元は対ドルで上昇した。他方、原油、銅、鉄鉱石など資源価格の上昇は、資源国の通貨の為替レートにも影響している。中国の政策が「締め付け」から「緩和」に向かい短期的に中国の個人消費、生産、物流が増える可能性もある。ただ、現時点で、中国経済が本格的に持ち直すと論じるのは早計だ。例えば、規制緩和にもかかわらず、不動産市況の悪化に歯止めがかからない。2022年の不動産投資は前年比10.0%減少した。1999年以来で初の減少だ。

中国の実体経済は厳しい状況に直面している。コロナ禍の発生は、共産党政権主導で産業を育てIT分野などで雇用を生み出す経済運営を行き詰まらせた。生産年齢人口の減少や、不動産バブル崩壊も重なった。2023年の労働市場には過去最多となる1158万人の大学卒業者が供給されると予想されているが、16~24歳の若年層を中心に、中国の雇用環境はデータ(22年11月で16~24歳の調査失業率は17.1%)が示す以上に厳しいと考えられる。

韓国サムスン電子の収益が急激に悪化している。2022年第1四半期に売上高は過去最高に達したものの、第4四半期の営業利益は前年同期比69%減に落ち込み、約10年ぶりの低水準。経営陣にとっても今回の決算は想定外だったようだ。いったい、サムスン電子に何が起きているのだろうか。同社の経営状況と韓国経済に与える影響を解説する。

半導体ファウンドリ最大手の台湾TSMCが、ドイツに欧州初の工場を建設すると報じられた。戦略物資として重要性が高まる半導体の製造能力を高めるために、TSMCの工場を誘致できるか否かは、国際世論における主要国の発言力にかなりのインパクトを与える。そのため各国政府はTSMCの誘致戦略を強化。台湾から米国、わが国、そしてドイツへ、最先端型を中心とした半導体生産の地理的分散が加速し、半導体産業の構図はダイナミックに変化している。

2022年12月20日、日本銀行は金融政策の一部を修正した。これにより、まず、金利は上昇しやすくなった。これまでに比べて、外国為替市場で主要投資家は円売りを仕掛けづらくなる。ドルなどに対して円は、急激ではなく、緩やかに上昇するものと予想される。いずれにせよ、日銀は実体経済と金融市場に対する大きな負の影響が及ばないように金融政策を修正していくと考えられる。23年4月に黒田総裁は任期を迎える。新しい総裁の下で、日銀は慎重、かつ部分的な異次元緩和の修正を進めることになるだろう。

12月12日、米仮想通貨(暗号資産)大手取引業者FTXトレーディングの創業者、サム・バンクマン-フリード氏が詐欺などの容疑で逮捕された。11月に同社は経営破綻し、その実態は単純で古典的な投資詐欺の事例とほとんど変わらなかった。にもかかわらず、投資家は、同氏の本性を見抜けなかった。背景には、FTXへの成長期待の高まりを抑えることができず、われ先に資金を投じようとする過剰な強気心理があったはずだ。

生産拠点を中国から他のアジア新興国などに分散する企業が増えている。JETROによると、2021年、中国の製造業作業員の月額基本給は651ドル(約8万8000円)。対して、インドネシアは360ドル(約4万9000円)、インドは316ドル(約4万3000円)、ベトナムは265ドル(約3万6000円)。バングラデシュは105ドル(約1万4000円)とさらに低い。企業がコストカットを進めるためには、労働コストが低いASEAN地域などでの事業運営体制の強化が、これまで以上に重要となっている。また、習近平政権の台湾侵攻の可能性など、地政学リスクも無視できないファクターである。

中国共産党に対する国民からの批判と経済の悪化が止まらない。その象徴的な事象が、河南省のフォックスコン工場の労働争議だ。同社は世界のiPhone需要を満たすため、従業員に長時間労働などを強いてきた上に、ゼロコロナ政策が加わり、従業員の不満が爆発。生産は大きく落ち込んだ。米国の年末商戦を迎える中で、ハイエンドのiPhone需要を取りこぼすと、中国の対米輸出は減少するだろう。

日本銀行が2023年春、国内大手行と協力して「デジタル円」の実証実験を行う。法定通貨がデジタル化されれば、現金ではなくデジタル円でスマホのアプリなどを通して給料を受け取り、消費や投資を行うことができる。また、ビットコインなど価値が不安定な仮想通貨への需要も低下する可能性が高まる。デジタル円の実現は、地方経済の維持と強化にはかなり大きなインパクトを与えると考えられる。中長期的に見ると、デジタル円は、わが国経済に創造的破壊をもたらす可能性がある。

韓国では緩和的な金融政策の継続期待に支えられ、不動産市場では「マンションの価格上昇は間違いない」といった強気心理が高まった。2022年7月末、韓国の住宅価格は過去最高を記録。その裏で、家計の債務残高が急速に増加している。21年7~9月期、韓国の家計債務残高は対GDP比106.0%の過去最高に。22年1~3月期も同105.4%と高い水準だ。支出が収入を上回り、借り入れに頼る家計が増えた。生活費や債務返済のために、ビットコインなどの仮想通貨に投資をする人が増えているという。

キオクシア、ソニーグループ、ソフトバンク、デンソー、トヨタ自動車、NEC、NTT、三菱UFJ銀行の8社が出資し、新しい半導体メーカー「Rapidus(ラピダス)」が設立された。最先端の半導体の量産を目指し、製造技術の開発はIBMなどとも連携。政府は700億円を投じて支援する。まさに、わが国半導体産業の起死回生を目指しているわけだが、一方で教訓にすべき事例もある。2012年2月に経営破綻したエルピーダメモリだ。
