
真壁昭夫
11月10日、米国の10月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比7.7%上昇したことが明らかに。市場参加者は短絡的に「FRBの利上げ打ち止めが近い」と曲解し、株価が大幅反発した。しかし、米国の金融引き締めの遅れは深刻だ。CPI発表後、複数のFRB関係者は、「インフレ鎮静化のために金融引き締めを続ける見解」を改めて示した。金融引き締めが長引くリスクとして、新興国の経済と金融市場への打撃が懸念される。

2022年秋の共産党大会で、序列2位となったのが李強(リー・チャン)氏だ。23年3月、同氏は首相に就任するとみられる。抜てきされた背景には、上海での産業政策やゼロコロナ政策において、習氏の考えに素直に従ったことが大きいだろう。中国経済は、ここへ来て一段と厳しさを増している。経済を担当するとみられる李氏だが、自身の政策立案手腕がどの程度かは未知数だ。

永久に円安のトレンドが続くことは考えにくい。やや長めの目線で考えると、徐々に円安は修正される可能性がある。そのきっかけの一つは、日銀の金融政策の転換、すなわち黒田東彦総裁の後任人事になる可能性が高い。岸田政権下での日銀審議委員の任命を見ると、政府自身も異次元緩和の継続をより柔軟に考え始めている節が見える。

英国のトラス首相が10月20日、辞任した。9月6日の政権発足からわずか44日、異例の短命政権となったのはなぜなのか。経済と金融市場が混乱すると、社会全体で閉塞感は高まってしまう。そうならないためにも各国は、英国史上最短に終わったトラス政権の教訓を生かすべきだ。

国際通貨基金(IMF)が、「2023年までに世界の3分の1が景気後退に陥る」と発表した。世界経済を下支えする米国の雇用や個人消費が後退する傾向にあり、中国の経済成長神話は崩壊。欧州はウクライナ戦争によるエネルギー危機に加えて大手金融クレディ・スイスの経営不安が高まっている。自動車を中心に海外の需要を取り込んできた日本経済の実力は低下し、これまで以上に国内経済が縮小均衡する懸念が高まっている。

年初以降、韓国SKハイニックスとサムスン電子の株価下落が鮮明化している。7月には韓国の半導体出荷が急減し、8月の半導体生産は前年同月比1.7%減となった。在庫も急速に積み上がっている。ただ、すべての半導体の需給が崩れ始めたわけではない。車載用の半導体は依然として不足し、経済安全保障の観点から米国やわが国で生産能力を強化する半導体メーカーも増えている。より高性能な演算能力を持つチップ開発競争も激化している。混とんとする世界の半導体市況を解説する。

GAFAの株価が下落する中、注目したいのがアマゾンだ。ネット通販分野では倉庫の閉鎖を加速し、捻出した資金をクラウド事業「アマゾンウェブサービス」(AWS)に再配分している。そしてIBMを筆頭に、他者とのパートナーシップ契約も増やし、新しい需要創出に急いでいる。過去の成功体験に固執することなく自己変革に取り組むアマゾンの姿勢は、わが国企業にとって参考になる部分が多い。

習近平主席は、台湾侵攻のチャンスをうかがっているようにも見える。それは地政学的リスクを高める要因だ。海外投資家にとって、下落リスクの高まる人民元を保有する意義は低下している。債券などの売却資金をドルに替える海外の投資家は急速に増えている。そうした傾向は、当面続くだろう。

現在、ソニーはマイクロソフト、米マジックリープに次いで世界第3位のAR関連特許件数を持つ。また、超高純度の半導体部材などの分野でも本邦企業の競争力は高い。日本政府は、労働市場の構造改革などを徹底して進め、成長期待の高いAR分野など世界経済の先端分野にヒト・モノ・カネを再配分する環境の整備を急ぐべきだ。

ホンダは、米国のGMと韓国のLGグループとアライアンスを組んで、「100年に1度」と呼ばれる自動車産業の大変革に対応しようとしている。背景にある「CASE」のインパクトは大きい。バッテリー調達能力の向上、自動運転技術などソフトウエア開発力の強化、搭載点数の増える車載用の半導体開発のために、世界の大手自動車メーカーは合従連衡や異業種との提携を強化しなければならない。

8月、韓国の製造業PMI(購買担当者景況感指数)は事業環境の改善と悪化の境目である50を下回り49.8に下落した。一つの要因として、中国が韓国の“お得意さま”から、競争上の脅威に変わり始めたことがある。中国は韓国から輸入してきた半導体や自動車などの国産化を急いでいて、これまでのように韓国企業が中国の需要を取り込んで成長を目指すことは難しくなっている。韓国経済が直面する環境の急変は、わが国にとっても他人事ではないはずだ。

2022年1~6月期、世界の新車販売台数で米国のテスラと中国の比亜迪(BYD)の電気自動車(EV)販売台数が増加し、両社の販売台数はマツダとスバルを上回った。テスラとBYDは中国のEV生産をけん引する主力企業であり、米中対立が激化する中、テスラはうまく共産党政権との利害調整を行って中国での生産・輸出を増やしている。上海ギガファクトリーにおけるテスラのEV生産能力は米国を上回り、年間100万台超に引き上げようとしている。一方、わが国ではトヨタ自動車を筆頭に、半導体不足などにより自動車生産が停滞している。わが国の自動車メーカーは電動化を加速し、新しいサプライチェーン整備に集中して取り組む必要がある。

2023年にも全国銀行協会は加盟金融機関間の送金システムに、フィンテック企業の接続を認めるという。フィンテック企業が提供する口座に給与が直接振り込まれるのも可能になる。金融サービスを巡る競争は激化し、淘汰(とうた)される銀行は増えるだろう。殻を破れない銀行は不要となる時代が本格化しようとしている。

今からちょうど10年前の2012年8月、ソニーは収益力の低下に直面した。背景には、1990年代以降の失敗があった。最も影響が大きかったのが、コングロマリット化戦略だ。ソニーはモノをつくるのか、コンテンツを生み出すのか、それとも金融で生きていくか、本業が分からなくなってしまった。12年以降、ソニーは選択と集中を進め、モノづくりの原点に回帰している。ただし、かつてのソニーには、今日とは異なるアニマルスピリットがあふれていた。ソニーのDNAは、世界をあっと驚かせる、全くもって新しいモノを世界に提供することだ。

アップルがわが国でのiPhoneなどの値上げに踏み切ったのは、ドル高の影響で計画していた収益を確保することが難しくなったからだ。ざっくり計算するだけでも、ドル高がアップルに与える負のインパクトがよく分かる。米国の金融政策とアップルの経営の行方、iPhoneの追加値上げとApple Musicなどのサブスク利用料金の引き上げの可能性を徹底解説する。

中国で不動産バブルの後始末が深刻化している。大手デベロッパーは資産売却を加速しているが、資産価格の下落スピードはそれを上回る。習近平政権は銀行に不動産業界向けの融資を増やすよう規制を緩めているが、相場底打ちの兆しが見えない。1~6月期の不動産開発投資は前年同期比5.4%減り、分譲住宅の売上高は同28.9%も減少した。懸念されるのが失業の増加だ。6月、中国の若年層(16~24歳)の調査失業率は19.30%に上昇、調査開始以来最高だった。

2022年4~6月期の半導体業界は、メモリ半導体を主体として収益を得ている半導体メーカーの業績拡大ペースが鈍化した。台湾TSMCと韓国サムスン電子の連結決算を比較すると、それがよく分かる。ポイントは、ビジネスモデルの違いと営業利益だ。

「俯瞰外交」によって安倍氏は米中から必要とされる日本のイメージを世界に与えた。それがあったからこそ、安倍政権下で日米豪印の協力体制の枠組みであるクアッドが創設された。俯瞰外交の成果は大きい。ただ、安倍氏の外交政策にも踏み込み不足の部分があったかもしれない。東南アジアの新興国との関係強化はその一つだ。岸田政権は安倍氏の考えを引き継ぎ、強化すべきだろう。

民間の仮想通貨市場が総崩れだ。2021年11月末から22年6月末までの間、ビットコインの対ドルレートは約65%も下落した。相対的に価値が安定していると考えられたステーブルコインの価値も5月以降、下落している。仮想通貨バブルを支えた二大要因であり、ビル・ゲイツ氏も指摘していた「カネ余り」と「根拠なき楽観」は解消に向かう。

中国で16~24歳の失業率が上昇し続けている。2022年5月の水準は18.4%と統計開始来の最高水準を更新した。SNS上では、「大学卒業イコール失業者生活の始まりだ」などと将来の悲観を吐露する若者が増えている。より自由かつ安心できる生活の基盤を手に入れたいと考え、わが国での就職を目指す人も増えているようだ。
