真壁昭夫
今回のASEANサミットで一つ明確になった流れがあった。それは、アジア諸国のなかで中国の影響力が一段と拡大する一方、米国から距離を置く国が増えたということだ。

11月5日、ドナルド・トランプ大統領が初来日した。政府はトランプ大統領を、事実上の“国賓”として扱い、手厚い待遇でもてなした。それでも、今後、トランプ大統領は米国第一の主張をより強める可能性が高い。

電機、化学、建設機械などを中心に幅広い業種で業績の上方修正などが発表され、株式市場も久々の活況を呈している。その一方、10月30日には、ニコンが中国のデジタルカメラ工場の操業停止を決定した。

今年の共産党大会で、衰えの隠せない江沢民元国家主席をしり目に、3時間半もの熱弁をふるった習近平現国家主席(総書記)。この二人の対照的な姿は、今回の党大会の意味をよく表していた。

10月初旬以降、世界的に株価が堅調な展開を示している。わが国の日経平均株価は、約21年ぶりの高値近辺まで上昇している。その背景には、世界的に金融緩和策によって潤沢な資金が供給されたことがある。

10月9日、スウェーデンの王立科学アカデミーは、2017年のノーベル経済学賞を米シカゴ大学のリチャード・セイラー教授に授与すると発表した。セイラー教授の授賞理由は“行動経済学”の理論的発展に貢献したことだ。

日産自動車のリコール問題が社会を震撼させている。日産自動車の経営陣は、国内六つの工場で無資格の従業員が完成検査に携わっていたことを認識していなかった。本来起きてはいけないことが起きていた。

安倍晋三首相は「国民に信を問う」と述べ、衆議院を解散し10月22日に総選挙を実施すると表明した。正直なところ、何の信を問うのかが分りにくい。一方、安倍政権の経済政策=アベノミクスを評価すると…。

人類の歴史の中では、時にそれまでの潮流を大きく変えるような「非連続な事象」が発生することがある。9月18日に発生した、米国トイザラスの経営破綻もその一つに入るかもしれない。

欧州の主要国などが、一斉にガソリンエンジン車の禁止、電気自動車への転換を発表しているが、その動きは、今後、さらに大きな“大波”になることが考えられる。日本の自動車メーカーは対応できるのだろうか。

現在、世界的な流れとして、いわゆるネット企業が注目を集めている。彼らのビジネスには莫大な成長余地が存在するが、ネット分野ゆえの問題点を抱える企業もある。今後、法律やルール、制度の整備が必要になるだろう。

最近、フリマアプリなどインターネットを通した個人間の取引を見ると、企業が提供しきれていないモノやサービスが多い。そうした新しい潮流は重要なのだが、今後、さまざまな問題が出てくることが想定される。

トランプ大統領はバージニア州シャーロッツビルにおける白人至上主義団体と反対派の衝突について、「反対派にも責任がある」との見解を示した。その発言を受け、政権内部をはじめ、さまざまな分野から反発が出ている。

北朝鮮のミサイル問題は、米国トランプ大統領と北朝鮮金主席でチキンゲーム化している。足元では米国政府の高官が北朝鮮との対話の可能性に言及するなど、緊張感は若干低下したが、すぐに鎮静化につながるとは考えづらい。

現在、韓国経済はゆるやかに回復している。それを支えているのが、サムスン電子をはじめとする財閥企業だ。ただ、一部の財閥企業に依存するだけでは国民の間の格差が広がり、韓国経済の実力を高めることにはならない。

外交交渉をビジネス交渉と取り違えているトランプ政権は、今後も北朝鮮への強硬姿勢をとり、中国に圧力行使を迫るだろう。その結果、北朝鮮問題を巡る国際的な議論の中で米国は孤立する恐れがある。

韓国の文大統領はわが国とのシャトル外交の再開に合意した。ただ、本気でわが国との関係改善を図ろうとしているかは疑問だ。中でも、慰安婦問題を再び蒸し返す意図が見られる。日韓関係が冷え込む展開も考えられる。

2期目の政権運営を狙う習近平国家主席は、政治ライバルへの取り締まりを強め、主要ポストに自分の息のかかった人物を据える一方、対立する大物政治家を追い落とす姿勢が明確。対外的には力の外交を推し進めるはずだ。

韓国の文在寅氏が大統領に就任してから約2ヵ月が経過した。同氏の北朝鮮に対する基本姿勢は対話重視。しかし、北朝鮮にはまともな対話をする意思があるようには見えない。文大統領はどうするつもりなのか。

企業業績が改善する一方、主要国の金融緩和策の"流動性相場"が世界の株式市場を支えてきた。その金融政策が、わが国を除く欧米先進国で転機を迎えている。株式市場にとっては、かなり大きな環境変化になることだろう。
