
田村耕太郎
第26回
アメリカでは、政府が政策立案を独占しない。“政府が使える政策”を考え抜くプロ集団に任せるのだ。日本では、政策の実施、国会対策、政策立案まで整理されずにぐちゃぐちゃに霞が関が独占してやっている。だから官僚が生産性の低いまま擦り切れる。

第25回
注目すべきは欧州だ。アメリカではない。欧州といっても、暴動が起きているロンドンではなく、最も恐ろしい危機を迎えている大陸欧州である。

第24回
欧米の財政危機が、世界の外交安全保障の地図を大きく塗り替えようとしている。主役は欧州再建の泥をかぶらなければならないドイツと、この機に欧州に恩を売りたい中国。両国は急速に近づき、米国の神経を逆なでしている。

第23回
久しぶりに一時帰国した。そこで感じたのは、日本全体が逆プラシーボ効果にかかっているのではないかということだ。毒薬でない錠剤を「毒薬」と偽って投与すると人間はその思い込みで死ぬことがある。多くの日本人が「ダメだ」と思っていたら、日本全体が本当にダメになってしまう。

第22回
米国の債務上限引き上げ協議の紛糾を受けて、日本では、米国破綻かと騒ぐ人たちが増えているようだが、そのようなことを心配する暇があったら、別のことに注意したほうがいい。それは、欧米首脳から敵視された格付け会社が正確な格付けを出せなくなる恐れだ。

第21回
なでしこジャパンを祝福し、誇りに思うのは当然で、そういう論評は枚挙に暇がないであろう。しかし、筆者はせっかく海外にいるので、違う視点で今回は書いてみたい。それはアメリカのフェアネスの精神だ。

第20回
日本人は強いリーダーを求めているとよく言われるが、果たして本当なのか。我々はわざわざ弱いリーダーを選んでいないか。米国を代表する日本研究者のエズラ・ヴォーゲル教授はそう問題提起する。

第19回
日本のビジネス界ではTOEIC人気が急上昇だ。しかし、アメリカではTOEICを知っている人は皆無に近い。私は日本人の英語力不足の根源にはTOEIC問題があるのではないかと思う。TOEIC志向を変えるか、TOEICの内容を変えるか、どちらかを実行しないと日本のガラパゴス化がさらに進んでしまう。

第18回
震災や原発事故の影響もあってか、自国の競争力を過小評価する日本人の自虐性はさらに高まっているようだ。しかし、彼の言葉を聞けば、そんな暗さも吹き飛ぶだろう。シリコンバレーで今最もホットなベンチャー、エバーノートを率いるフィル・リービン氏と話す機会を得た。

第17回
ハーバード大学で日本救済のイベントが続いている。先週は、白熱教室で有名なマイケル・サンデル教授が講演。震災以降の生き方について参加者との白熱議論が行われたほか、教授からは最大で9万人の命を奪ったといわれる18世紀のリスボン大震災の教訓について話があった。

第16回
日本では今、震災や原発事故に対する政府や東電の対応に批判が集中しているが、危機管理の課題はじつは世界共通のものが多い。米国では「危機は必ず起こり、それは組織間対立で深刻化し、最後に介入してくる政治家が最悪にする」との前提で議論と分析をスタートさせる。

第15回
離れているからこそ募る支援の想い――。こちらアメリカで日本人と会うたびに耳にする言葉だ。かくいう私もその通りの心境だ。今回は、その思いを行動にして奮闘する日本人留学生と、その思いを受け止め日本の支援のためにひと肌もふた肌も脱ぎつつあるアメリカ大学界について紹介する。

第14回
震災に伴う損害を、増税や国債発行による補正予算や通常予算の組み替えで、財政支出して穴埋めしていくというのが通常の復興策だ。しかし、こんな通常の手法では、新たなデフレスパイラルに入りつつある日本経済で、お金は回らないと思う。私は復興計画第一弾として、アブダビのマスダール・シティを参考した環境防災都市計画を提唱したい。

第13回
不謹慎だと言われるかもしれないが、二つほどお願いがある。まず、被災地以外の方々には、こんな時だからこそ、経済活動は活発に行ってほしい。もう一つは政府へのお願いだ。今こそ平成版マーシャルプランとでもいうべき復興計画を策定し国内外に向けて堂々と発表してほしい。

第12回
日本の政治の問題は、政治家の危機管理能力を養成する機関がないことだ。ここアメリカでは科学的に政治家およびそのスタッフの危機管理能力養成を行っている。その代表的な事例を紹介しよう。

第11回
中東ドミノだと大騒ぎしていた英米メディアがここに来て少しトーンダウン。中東で取材を重ね、現地情勢を学んでいる。危機をあおり、商品価格の乱高下で儲ける投機筋の片棒を担いでいたことを反省すべきだ。ところが、日本の識者が、時間遅れで中東ドミノだと騒ぎ始めた。

第10回
今、ウォール街でも「日本の未来と日本企業の未来は連動していない」という“日本国・日本企業”デ・カップリング論が話題となっている。しかし日本国企業である以上、私は切り離すことはできないと見ている。所詮は運命共同体だと思うのだ。

第9回
世界の知識人と交流していると、一つだけ共通する反応がある。それは、「日本人ほど日本に厳しくて自虐的な人たちはいない」と皆がいうことだ。もっといえば、「日本人が日本のことを悪く言うたびに、自分の国の方がひどいので、自分がつらくなる」という人までいる。

第8回
ワタミの渡辺美樹会長が都知事選出馬を表明した。素晴らしいことだ。私は応援したい。なぜなら成功した経営者こそ今の政治に必要な人材の要件を満たしているからだ。

第7回
日本のメディアをみると毎日のようにTPPという言葉が出てくる。いつのまにか混迷極める菅政権の命運がかかった政策の一つになっているようだ。私が知る限りにおいてだが、アメリカでは経済番組でも一般ニュースでもTPPという言葉に出会ったことがない。
