
山崎 元
第57回
株価の急落が企業年金にダメージを与えている。日本の会計基準では、年金資産と引当金の合計額が年金債務を下回ると、その差額を数年に分けて費用計上しなければならないことになっている。だが、費用認識を「数年に分ける」のは単なる会計ルールにすぎず、株主や投資家一般は、企業の株主価値は年金資産が減価すると同時に減少したと認識するし、それが「実態」だ。現在のような状況では、企業年金基金の資産が1兆円前後になる大企業の場合、2000億円もの株主価値のマイナス要因がその運用から生じるということだ。はたしてわれわれは、このような状況を見守っているだけでよいのか?

第55回
このところ、株価の下落に企業の実態が急速に追い付いてきた。景気が悪化傾向にあることを考えると、まだ下値に警戒が必要だ。逆に言うと、いい「買い場」が今後訪れるかも知れない。

第56回
株式市場に続き、通貨市場が大変動に晒される可能性がある。そんな折、気になるのが素人向けのFXの勧誘だ。楽しんで儲けましょうという趣旨の入門書があるが、FXの世界に素人が入るのは危険だから、警告したい。

第54回
政府の追加経済対策発表の翌日、主要各紙は「3年後の消費税増税」との大見出しを掲げた。たださえインパクトに乏しい内容の上に、麻生首相はプレゼンにも失敗してしまった。

第55回
一連のサブプライム騒動の犯人はいったい誰なのか? 元凶となった米国の住宅ローンは、借り手よりも貸し手に問題があったと思う。ローンを貸す側の金融機関は、サブプライム層の名前を借りて住宅に投資して失敗し、市場を大混乱に陥れた。その意味では、証券化商品の組成者、格付け会社、ヘッジファンドなども同罪だ。個人や会社が自分では責任が取れない程の大きさのリスクを平気で負わせ、まさに「他人のふんどし」で相撲を取ろうとした結果が、この有様である。

第53回
日本の銀行は、サブプライム問題では比較的傷が浅かったため、相対的に米欧の金融機関よりも状況はいい。しかし、その理由は、バブル処理に追われ、国際金融への展開が遅れていたためであり、いわば「怪我の功名」であった。株価がバブル後の最安値を更新するところまで下落してしまうと、安穏とはしていられなくなってきた。結論から言えば、日本の銀行は、あれだけのお金と手間をかけて、やっと経営を立て直してきたにも関わらず、体質が何も変わっていない。要は、低金利と景気回復に助けられて、不良債権処理をし、多少の利益を蓄え、立派になったような顔をしていただけなのだ。経営的な質的改善は全くなかった。

第54回
ニューヨークダウと日経平均が相次いで1万円割れの値を付けるなど、内外の株価の下落が続いている。先般、やっと下院を通過した米国の金融安定化法の効果は資産を買い取る価格によるので、不十分であるかもしれないが、相当程度効果的である可能性もある。そういう意味では、当面の市場はこの解釈に当たって弱気に傾き過ぎているような感じがする。他方、金融収縮の実体経済への悪影響が本格的に出てくるのはこれからだろうし、米国の不動産価格の下落も続くだろうから、株式市場の悪材料は尽きない。

第52回
世界的な金融の混乱の影響を受けて、ついに大和生命が破綻した。今後、金融危機がさらに深まった場合に、次の破綻候補が話題に上るかも知れない。こうした状況になると、たとえば雑誌に載っている表のコピーを持ち歩いて「◯◯生命さんは、そろそろ(危ない)らしい」などと言って生保を解約させて、自社の保険を販売しようとする「ハゲタカ・セールス」とでも呼ぶべき、セールスが横行することがある。「あなたの保険は本当に大丈夫なのか?」と言われると、具体的にどうしたらいいかが分からない方が多いのではないだろうか。

第53回
サブプライム問題の対策を論じる際に、資産の「時価評価を停止するといい」という種類の意見を海外からも聞くようになった。「時価評価停止」にメリットはあるのだろうか。

第51回
連休明け14日の日本株は、前日の米国株の急上昇を受けて、大きく反発した。しかし、先週末までの超弱気相場からこれで本格反転したと言えるのか。日本株の行方を考察する。

第52回
リーマン・ショック以降、米国の投資銀行が、あたかも仕掛けを見破られた手品師のように商売替えを急いでいる。こうしてできたユニバーサル・バンク的な銀行は、投資銀行ビジネスのリスク管理をできるのだろうか。

第50回
米国の著名投資家バフェット氏がゴールドマン・サックス、GEと大型出資を相次ぎ決めた。そのディールの中身と背景を探ると、米国経済の厳しい現状と株式投資のヒントが見えてくる。

第51回
監督当局の対応は、リーマンと山一ではかなり異なる。リーマンの場合は結局、公的資金を使った救済には至らなかったが、監督当局は、金融大手各社の幹部をニューヨーク連銀に集めて、民間他社による丸ごと買収の可能性、さらにはこれが無理だとなると、民間金融機関がリーマンの不良資産を共同で買い取る可能性などを、当局の仲介で検討させている。たぶん、この場を通じて、金融他社の状況とリーマン破綻の影響を見極めたのだろうが、ある意味では親切な対応だった。当時の山一と異なるのは、金融システムの中核を担うような銀行も相手として、大きなデリバティブ取引のポジションを持っていたことだ。

第49回
野村や三菱UFJの動きを受けて、留飲を下げている日本人は多いことだろう。だが、金融ノウハウは、使いこなせなければ、宝の持ち腐れ。日本勢の逆襲が始まったと考えるのは早計だ。

第50回
「貯蓄から投資へ」といくら言われても、手持ちのおカネの大半を、リスクを取る投資対象に投じたいと思う人ばかりではない。では、手持ちの金融資産の大半が銀行預金でいいかというと、2つ問題がある。安全性と利回りだ。いわゆるペイオフ解禁(全面解禁は2003年4月から)の前後には銀行預金の安全性が語られたが、最近はあまり話題に上らない。しかし、米国では今年に入ってからも複数の地方銀行が破綻したし、日本の銀行にも破綻リスクをまったく心配しなくていいとも言っていられない兆候が出てきた。

第48回
リーマン破綻の影に隠れ、考察があまり伝わってこないのがバンカメによるメリル買収だ。だが、マネーセンターバンクが投資銀行を抱え込むこの方式は、巨大なリスクを内包している。

第49回
借金をしないですむ予備費を確保して、残りをすべてリスク資産の一定の組み合わせに投資するアセットアロケーションを考えてみた。ETF中心に投資すれば、若者も高齢者も案外リスクに強いことがわかる。

第47回
リーマン・ブラザーズの経営破綻は、官民を挙げた大騒ぎの末に決まった。証券会社を一つ潰すのにこれほど苦労するとは、投資銀行のビジネスの在り方に問題があるのではないか。

第48回
五輪での野球やサッカーの惨敗を見ると、日本人は闘争心が乏しいと思われるが、投資においてはそうではない。「投資する側に向いているが、投資される側には向かない」という言い方が適当だろう。

第46回
北の湖理事長の辞任は遅きに失したくらいだし、日本相撲協会には解体に至ってもおかしくない問題がいくつもあった。監督官庁の文科省は協会運営に関して大ナタをふるう必要がある。
