
新村直弘
欧米における新型コロナウイルスの感染再拡大が懸念される中、金価格は今後も高値維持されるだろう。その理由を実質金利とリスク・プレミアムで読み解く。

市場でリスクテイクの指標として「銅/金レシオ」が取り上げられることがある。景気が回復すれば銅価格が上昇し、安全資産である金が売られる一方、景気が減速すれば銅が売られ、金価格が下落するというロジックであり、債券王ジェフリー・ガンドラック氏が参考にしている指標の1つだ。

2020年4月20日は商品市場にとって非常に大きな1日となった。ニューヨーク市場に上場する原油先物WTIがマイナス価格になり、一時▲40.32ドルで取引が成立したのだ。

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が続いている。だが、今後の景気動向については、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成する「OPECプラス」の協議決裂による原油価格急落というOPECショック、および、新型コロナショックの「Wショック」の影響でしばらくは低迷するものの、「今夏から今秋以降にかけて通常に戻る」というのがメインシナリオだ。

新型コロナウイルスの感染拡大が続き、ブラジルでも感染が確認され南極大陸を除く全ての大陸で新型コロナウイルスの感染者が確認された。米国でも市中感染が確認されている。コロナウイルスは高齢者以外が感染した場合の致死率はさほど高くないが、高齢者が感染した場合の致死率が高いため、各国も厳しい対応を選択しているようだ。

3月6日、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟国で作る「OPECプラス」の協調減産を巡る会合で、OPECの150万バレルの追加減産要求にロシアが反発、交渉が決裂して原油価格は急落した。ロシアの予算レートがBrent原油で42ドル程度であり、OPECプラス開催前の価格水準でも問題なく、かつ、さらなる減産は収入減になるとロシア国内の原油生産者から強い反発があったためだ。

中国で発生した新型肺炎の影響が拡大している。これを受けて多くの景気循環系商品の価格が下落しており、銅をはじめとする非鉄金属や、原油などに強い下押し圧力が掛かる展開が続いている。2003年に発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)の症例と比較すると、今回の感染拡大は景気に深刻な影響を与える可能性がある。

米トランプ大統領はイランに対する武力行使を回避し、中東リスクは一旦沈静化した。しかし、リスク再燃が原油高騰を招く不安は終わっていない。そもそも世界は原油価格が高騰しづらい環境にあるが、米国より中東依存度が高い日本は注意が必要である。

2019年の原油相場を振り返ると、政治的なイベントに左右されて乱高下したものの、値幅はBrent原油ベースで50ドルから75ドルの間で推移した。過去10年間で最も値幅が小さかったのが2013年の22.42ドル、次いで2017年の22.75ドルであり、19年はそれらに次ぐ低い水準である。米中通商戦争の激化や、サウジアラビアの主要石油設備攻撃などのイベントリスクの発生があった年の割には、値動きは安定した年だったといえる。なぜ、このような状況になったのか。2020年の市場動向を占うためにも、価格急騰・急落が発生する要因やメカニズムを整理してみたい。

2020年の世界景気は、景気の循環的な回復や、米国の利下げの影響で、春から夏にかけて底入れし、同年11月の米大統領選が近づく中で緩やかに回復するというのがメインシナリオだ。

世界景気が減速する中、原油価格は下落傾向にある。一方、株価は上昇傾向にあり、原油価格との乖離が広がっている。原油価格と株価の推移には関連性がある。今後の原油価格の動向次第で、株価が大きく下落する可能性がある。

サウジアラビアの原油生産施設がイエメンのフーシ派の攻撃を受け、突然、世界の原油生産量の5%の生産が停止した。サウジの早期復旧観測で原油価格上昇は一旦収まったが、中東の武力衝突リスクは排除し切れない。先行きをどう読めばいいのか。

サウジアラビアの石油施設への攻撃で原油価格が上昇し、天然ガス市場への波及を懸念する声もある。現在のところ、天然ガスのスポット価格が低下傾向にあるが、果たして今後の市場動向はどうなるのか。そして、他の資源価格などにどのような影響があるのだろうか。

原油価格の高騰から一転、ここにきて下落傾向が強まっている。世界経済の減速懸念が強まる中、果たして今後の原油価格はどう動くのか。

米中貿易摩擦の深刻化による景気減速懸念などから、安全資産として金の価格が上昇しているとされるが、足元ではもう一つ、ビットコインが安全資産としての需要の高まりから値上がりしているとの見方が浮上している。果たして「仮想通貨の雄」は安全資産になり得るのだろうか。

銅は生産、消費動向の大半を中国が握っているため、中国の景気動向を占う上での指標の1つとされている。ここにきて、その銅市況に異変が起きている。中国の銅関連統計には、中国の銅需要が鈍化している可能性が高いことを示唆するものが多いのだ。

原油価格の下落は、金融市場の嵐の大きな要素となった。その嵐はいまだ吹き止んでいない。下落の要因は何か。価格低迷はいつまで続くのか、どこまで落ちるのか。原油市場動向分析のプロが解説する。

原油、金属、農産物などの国際商品(コモディティ)価格が軒並み下落している。これは家計には慈雨となるはずだが、消費は低迷。原材料下落の中で、食料品が値上がっている影響が大きい。いったいなぜそうなるのか。

原油価格の低迷が続いているのに、なぜ電力料金やガス料金は下がらないのか。実は原油価格の変化がこれらの料金に波及するまでにはいくつかのステップがあり、タイムラグが生じるからだ。意外と知られていないその仕組みを解説する。

昨年秋から急落した原油価格は、底打ちした感がある。年後半には上昇に向かいそうだ。ただし、上ブレ、下ブレをもたらすリスク要因が多数あり、“決め打ち”は危険である。
