後藤謙次
政治資金パーティーの政治資金収支報告書の過少記載が明らかになったのは、昨年分まで含めると自民党の6派閥全部と谷垣グループまで全ての派閥とグループ。いわば自民党全体のスキャンダルといっていい。立憲民主党の元首相、野田佳彦は11月22日の衆院予算委員会で首相の岸田文雄を厳しく追及した。

創価学会名誉会長の池田大作が11月15日、老衰のため死去した。首相の岸田文雄が日程をやりくりして池田の弔問に足を運んだことでも、公明党における池田の存在感がいかに大きかったかを物語った。「池田の死」は日本の政治全体の地殻変動を呼び込む可能性がある。

11月に入って政治家の訃報が相次いだ。往年の議員が次々と鬼籍に入る中で、首相の岸田文雄を取り巻く長老政治家たちは衰えるどころかむしろ活発な動きを見せる。

岸田内閣の支持率は今年5月の先進7カ国首脳会議で持ち直して以降は下り坂のまま、発足以来最低の28.3%になった。さらに見逃せないのが自民党の支持率も下降線に入りつつあることだ。こうなると、「次のリーダーは誰か」に光を当て始める。共同通信も「次の総裁にふさわしいのは誰か」を聞いている。

参議院自民党幹事長、世耕弘成の代表質問の波紋がなお収まらない。その光景は長い国会の歴史の中でもほとんど例がないかもしれない。政権与党の大幹部が現職首相の批判を展開したからだ。

ネット上では岸田をやゆする「増税メガネ」という言葉が飛び交う。その払拭もあって岸田が所得税減税にこだわったのかもしれないが、所信表明演説では所得税減税について具体的な言及はなし。しかし、実態は先へ先へと進んでいる。このチグハグ感が今後も尾を引く可能性は否定できない。

「発足以来過去最低」の内閣支持率は、岸田が打ち出す政策が国民の胸に響いていないことを浮き彫りにしている。「先送りできない課題に一つ一つ取り組んでいきたい」と岸田は語るが、政権浮揚にはそれしか選択肢はない。中でも先送りできない最優先の課題に北朝鮮による拉致問題がある。

9月の内閣改造・自民党役員人事を経て取り沙汰された衆議院の「晩秋解散」説は急速に消えつつある。頼みの内閣支持率は、底を打ったかもしれないが上昇に転じる気配はなく、むしろ政権に負荷がかかる問題が次々と押し寄せる。中でも物価高の家計への直撃は深刻度を増すばかりだ。

東京都知事の小池百合子が思わぬピンチに直面している。小池がゴーサインを出した東京・明治神宮外苑地区の再開発を巡って反対の声が押し寄せているからだ。

「95点はあげてもいいんじゃないか」。こう語ったのは元首相の森喜朗。首相の岸田文雄が行った内閣改造と自民党役員人事への評価である。来年の総裁選を見据え、各派の状況に応じて周到に手を打ったことは間違いないが、各メディアが実施した世論調査でも人事刷新による政権浮揚の効果は限定的だった。

政治家同士の思惑がこれほど激しく交錯した葬儀は珍しかった。8月29日午後、東京・芝公園の東京プリンスホテルで営まれた、「参院のドン」と呼ばれた元自民党参院議員会長、青木幹雄の「お別れの会」のことだ。この日のハイライトは友人代表としてマイクに向かった森だった。

東京電力福島第一原発の「処理水」の海洋放出を巡って中国が激しく反発し、外交問題になりつつある。中国の反発はある程度は想定されたが、「これほど強く出てくるとは思わなかった」というのが日本側の受け止めだった。しかし、日本政府は今も強気だ。「中国には二つの誤算があったのではないか」と日本政府関係者は指摘する。

2021年10月、首相に就任した岸田文雄は福島県の東京電力福島第1原発を訪れ、保管中の大量の処理水について海洋放出を急ぐ意向を強調した。それから1年10カ月。岸田は最後の断を下した。政府の説明が「不十分」なまま、処理水の放出は8月24日に実施することになった。

元首相の安倍晋三が凶弾に倒れてから1年以上にわたり会長不在で混迷を続けている自民党安倍派の後継体制の輪郭がようやく見えてきた。派内に「常任幹事会」を新設し、安倍派会長代理で元文部科学相の塩谷立をその座長とする集団指導体制を導入する案だ。ただし、派内には不満、反発が根強く存在する。

夏枯れが続く政治ニュースの中で気を吐くのが日本維新の会だ。7月30日に投開票された仙台市議選で新人5人が全員当選した。投票日前日の29日には酷暑の中で街頭に立つ代表の馬場伸幸の姿があった。維新はどうしても大阪を中心にした「ローカル政党」のイメージが付きまとう。馬場はそこから脱して「全国政党」への飛躍を掲げる。

酷暑が続き、政界も夏休みかと思いきや、首相の岸田文雄がにわかに内閣改造・党役員人事に向けて動きだした。従来のスケジュール感では「9月中旬人事」。それが前倒しされて「8月下旬人事説」が急浮上した。

岸田内閣の支持率は5月に開催されたG7広島サミットを境にピークアウトしたことが明確になった。大雨による洪水被害や新型コロナウイルス感染者数の増加、国民生活に打撃を与える物価高など、諸問題に対する政治の動きが見えてこない。衆議院解散を見送った岸田の求心力の衰えは否定できない。

7月8日の安倍の一周忌を経て、安倍派の混乱ぶりは一層鮮明になってきた。もともと安倍が明確な後継者を育ててこなかったことが混迷の原点だった。元首相の安倍晋三を失い、会長不在のまま混迷が続く最大派閥の安倍派を巡る状況は、過去の自民党分裂劇と通じるところがある。

政界最大の実力者だった安倍晋三(享年67)が凶弾に倒れてから1年の時が流れたが、安倍が抜けた穴を政界全体が今も埋められずにいる。最大の要因は、所属議員が100人を超える自民党最大派閥の安倍派(清和政策研究会)が会長すら決めることができないまま、一周忌を迎えたことにある。

G7広島サミットで上昇した岸田文雄内閣の支持率は約1カ月で消失した。下落の原因は明確で、政府が導入を急ぐマイナンバーカードを巡るトラブルに対する拭い難い不信感に起因する。加えて各社の世論調査が示す新たな政治の潮流が解散時期の判断を難しくしている。
