支持率低下の岸田内閣に迫る、さらなる「大量失点」の危機国際原子力機関(IAEA)の事務局長、ラファエル・グロッシ(左)から、ALPS処理水海洋放出の安全性に「お墨付き」を得た首相、岸田文雄だが、難局は続く Photo:EPA=時事

 今年の7月も全国各地で大雨による洪水被害が発生した。“炎暑地獄”といえる猛暑も日本列島を襲った。新型コロナウイルスの感染者数が再び増加傾向を示す。そして物価高が国民生活に打撃を与える。しかし、こうした諸問題に対する政治の動きが見えてこない。閉塞感が覆う政治状況を変える大きなきっかけになると目された7月8日の元首相、安倍晋三の一周忌も何もなかったように過ぎ去った。

 この間に首相、岸田文雄を筆頭に自民党幹事長の茂木敏充、政務調査会長の萩生田光一ら政権中枢がこぞって外国を訪問した。

 マイナンバーカードを巡るトラブル処理の先頭に立つべきデジタル相の河野太郎は、7月11日から22日までの間、北欧と中東の訪問に旅立った。マイナンバー問題の総点検を実施する中、その“司令塔”が不在では政府の本気度に疑問符が付く。河野の外国訪問には自民党参議院幹事長の世耕弘成が記者会見で苦言を呈した。

「いくばくかの懸念を持ったので本人と話をした」

 これに対して河野は問題なしとの姿勢を貫く。

「(留守中は)大串正樹副大臣、尾崎正直政務官に陣頭指揮を執っていただく」(河野)

 河野といえば、2021年9月の自民党総裁選挙では岸田に敗退したとはいえ決選投票にまで持ち込んだ。その後も国民的人気は衰えず、ポスト岸田の有力候補の一人とみられていた。しかし、マイナンバーカード問題の対応で「河野ブランド」は大きく傷ついた。

「河野は総裁選への立候補は難しくなったかもしれない」(非主流派幹部)との声も出る。