
山本雅文
2019年以降、FRBは大規模な金融緩和を続けたが、ドル円は大きく下落しなかった。しかし一方で、今年4月以降に米国株の上昇が続いても、ドル高/円安の動きは限定的となっている。FRBによる金融緩和の中身を確認すると共に、ドル円が動かない背景を俯瞰し、今後、ドル円が上昇するための条件を炙り出す。

新型コロナウイルス感染拡大と経済活動封鎖の影響により、国際資本フローは様々な影響を受け、為替相場にも一定の影響が出てくるだろう。たとえば、海外での新型コロナ感染拡大を受けて、日本企業が生産拠点を国内に戻す動きが殺到し、円高圧力が強まるとの見方も一部にある。新型コロナウイルスを起因としたショックは、貿易収支や所得収支、直接投資など国際収支の様々な面で波及するが、そうした過程で円高圧力が高まる可能性を考察する。

金融市場をみると、米株式市場のボラティリティを表すVIX指数が、3月18日に一時リーマン・ブラザース破綻後につけたピークとほぼ同水準へ急上昇した。一方ドル円は、リーマン・ショック時と今回のコロナ・ショック時とで動きが大きく異なっている。リーマン・ショック時を踏まえて「アフターコロナ」のドル円を予測すると、3つのシナリオが考えられる。

新型コロナウィルス感染の拡大で、2020年前半を中心に世界経済も見通しが大幅に下方修正される可能性が高まった。足もとでは、ドル高、資源国通貨安が続いているが、新型コロナウィルス感染が終息するであろう20年後半の主要通貨の先行きを考えてみよう。

市場の焦点の1つである新型肺炎の感染拡大問題は、中国の春節休場明け後の2月4日に上海総合株価が急落する一方で円が上昇するなど、リスクオフのイベントとなった。もっとも、その後は、感染者数の増加ペースの鈍化や中国人民銀による大量の流動性供給などが安心材料となり、アジア市場を中心に株価がV字型の回復となった。新型肺炎に翻弄される金融市場の先行きを考察する。

中国の武漢で発生した新型肺炎は、感染者数や感染による死亡者数が増加し、金融市場の新たなリスク要因となっている。為替市場では感染拡大リスクが高まった27日、ドル円が一時108円台に下落した。2002年11月に発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)流行時の金融市場を確認し、新型肺炎が株式や為替などの金融市場に与える影響を考察する。

この時期における、毎年恒例ともいえる来年(2020年)の主要通貨見通しを紹介する。ドル円の先行きを考える上でで重要な点は、米経済、米金融政策、米大統領選、米中貿易戦争など多岐にわたるが、筆者はあるシナリオを想定し、ドル円の動きを見通した。ユーロについてはユーロ圏各国の財政支出がキーポイントとなり、豪ドルでは豪州経済の成長加速に注目している。

ここにきて、米中部分的通商合意への期待の高まりから金利が上昇に転じ、米国のイールドカーブはスティープ化している。それに連動したドル上昇は、今後も続くだろうか。年末年始の気になる円相場の動きを、これまでに見られたドルと米イールドカーブの「7つのパターン」から読み解こう。

10-12月期は、米中貿易戦争の帰趨、主要国・地域の金融緩和の持続性などが主要通貨にとって重要テーマとなる。米国と中国は貿易戦争で部分的な暫定合意に達したが、次の山場は12月15日とみられる。協議が決裂して対中追加関税が予定通り行われると、リスク回避の円高圧力が強まりかねない。一方、主要国・地域での金融緩和の流れが10-12月期も続くと、相対的に緩和余地が限定的な日本円の上昇圧力が、やはり高まりそうだ。為替市場はどう動くのだろうか。

リーマンショック後に議論された、欧米諸国が日本のような状況に陥る「日本化」が、最近、再び注目されている。為替市場では、ユーロ圏での「日本化」はテーマとなりにくいが、金利水準が相対的に高い米国、豪州、中国では「日本化」が注目されやすい。米国では、日本が以前に直面したようにゼロ金利制約が意識される可能性があるほか、日本では「日本化」が深化する可能性があり、帰結として円高が進展することも考えられる。

米国では2020年11月3日に大統領選が予定されているが、それまで1年超の時間が残されている。野党民主党では候補者選びも終わっておらず、共和党、民主党どちらの候補が勝利する可能性が高いかを議論するのは難しいが、市場では米次期大統領選が意識され始めている。そこで本稿では、現時点で入手可能な情報をもとに、米次期大統領選が為替市場に与える影響に関するシナリオ分析を試みた。

金融市場では、各国中銀による利下げを織り込む形で世界的に金利が急低下し、為替市場では円が上昇した。ただ、先行的に利下げを決めたオセアニアの2中銀は様子見姿勢に転じ、NZドル、豪ドルともに反発しやすい。米国でも市場の行き過ぎた利下げ期待に対し、FRB高官がけん制している。米景気の現状を考慮すると、今回の利下げ局面における利下げ幅は小幅にとどまり、利下げ開始がドル高につながる可能性が高いとみる。一方、ユーロやポンドは、ECB、BOEの追加緩和観測を受けて下落圧力がかかりやすい。

足元では米利下げ期待が高まっており、ドルは全般的に下落している。仮に期待通りに米国で利下げが実施された場合のドル円の動きを考察するために、過去5回の米利下げ局面とドル円の動きを検証した。この結果、米利下げが必ずしもドル円の下落につながるとは言えず、むしろドル高圧力が強まる展開も考えられる。

米中貿易戦争が激化するなか、米国株は大きく下落し、ドル円は米中長期金利の低下とともに23日、109円台へ下落した。今後、市場はどう動くのか。米中関係の想定し得るシナリオを3パターンに分けて、米国株・金利、ドル円、中国人民元の行方を、「軟着陸から最悪まで」シナリオごとに分析しよう。

2018年中の豪ドル安は、関係性が深い中国景気の減速懸念の強まりが主因だった。豪ドルは足もとで反発しているものの、それが限定的な背景には、豪州の利下げ見通しが影響している。しかし実際のところ、RBAによる利下げの可能性は低いとみられる。そのことは「マラドーナ理論」で説明できる。
