医薬経済ONLINE
発売60周年の節目を今年迎えた「リポビタンD」を、長年にわたり会社の代名詞としてきた大正製薬とその持株会社・大正製薬ホールディングス(HD)。2018年秋以降、ほぼ4年にわたって下落し足元では半値以下となってしまった大正HDの株価をはじめ、2期連続の営業赤字を見込む医薬事業の方向付け、リポビタンDや「リアップ」に続く圧倒的ブランド製品の不在に対する見解など、問い質したい項目が積み上がっている。

住友ファーマ(旧大日本住友製薬)は2022年度を最終年度とする中期経営計画の売上高6000億円は未達確定で今年5月に5500億円に修正。さらに、北米で2000億円以上を売り上げる抗精神病薬「ラツーダ」のパテント・クリフ(特許の崖)が23年度から本格化し、再成長への道のりはたやすいものではない。穴を埋める後継品の育成に追われるなか、別の問題も抱える。

スマートフォンで高血圧症が治療できる時代となった。キュア・アップが保険収載を申請していた「キュア・アップHT高血圧治療補助アプリ」が8月3日の中央社会保険医療協議会の総会で了承された。医療機器の決定区分はC2(新機能・新技術)で、使用目的は「成人の本態性高血圧症の治療補助」。特定保険医療材料としての設定ではなく、新技術料で評価された。保険適用は9月からとなる。初診の自己負担(3割)は2910円、2回目以降は2490円だ。

キリンファーマと協和発酵工業が経営統合して、協和発酵キリン(現協和キリン、キリンホールディングス傘下)が誕生したのが2008年10月。存続会社は上場企業の協和発酵工業で、当時の株価は1000円前後で推移していたと記憶するが、足元の株価は3000円台に乗せている。株価が3倍超となっているのは、将来への期待の高さなのか、ただ単に過大評価されているだけなのか。

数年後には潰れるジェネリック(後発医薬品)メーカーが続出するかもしれない。業界では事業再生ADRを申請した日医工の行方に注目が集まっているが、経営破綻の危機感は業界全体に広がっている。医薬品の安定供給どころか、企業そのもののクライシスが現実味を帯び始めている。

武田薬品工業が22年3月期業績を発表した5月11日、業界雀たちの間ではこんな囁きが交わされた。「今の武田が株主を納得させるために切れるカードは、やはり、配当だけということね……」。4.3兆円に上る有利子負債をものともせず、年180円の大盤振る舞いな配当を今後も堅持すると改めて表明したのだ。

厚生労働省は7月、塩野義製薬の新型コロナウイルス治療薬「ゾコーバ」を継続審議とした。その裏には水と油の関係であるべき「薬事と政治」を交錯させてまで、まだ願望止まりの新薬の緊急承認に漕ぎつけようとした塩野義の姿があった。

大手商社「丸紅」が中東での医薬品・医療機器販売事業に参画する。アラブ首長国連邦(UAE)ドバイの「ルナタス」と資本提携し、UAEはもちろん、サウジアラビア、カタール、クウェートなどの中東諸国に日本の医薬品、医療機器、さらにヘルスケア商品を売り込もうという計画だ。

医薬品卸大手、東邦ホールディングスは新経営体制に移行している。最も注目すべき点は、長年グループで経営トップの座に君臨し、指揮を執ってきた濱田矩男氏の取締役勇退。そこで競合卸や取引メーカーの関心事は、業務提携してから4年が経過したスズケンとの経営統合の有無に移っている。

島津製作所で4月に上田輝久前社長から経営のバトンを引き継いだ山本靖則社長は、ヘルスケア分野の強化を明確に打ち出している。この5月、日本水産の医薬品子会社である日水製薬を、TOB(株式公開買付)により完全子会社化すると発表した。島津がM&Aに乗り出すのは3年ぶり。総額400億円近い今ディールは過去最大規模となる。

米ファイザーの日本法人で、非情にも「大規模リストラ計画」が進んでいる。営業部隊であるMR(医薬情報担当者)について、「半減しても構わない」という会社側の思惑も漏れ伝わり、社員からすると胸中穏やかではない。

6月22日。厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は、塩野義製薬の新型コロナウイルス経口薬「ゾコーバ」について、緊急時薬事承認を見送った。7月中に第二部会と薬事分科会の「合同会議」を公開で開き、一定の判断を下すことになった。

製薬業界は一般社会と同様、格差が広がり、中堅製薬会社では顕著だ。大型品「オプジーボ」を擁する小野薬品、米メルクの眼科資産を承継して海外販路を得た参天製薬が集団を飛び出し、日本新薬がその後を追う。

武田薬品工業で8年間にわたり社外取締役を務めてきた坂根正弘氏(小松製作所・顧問)が6月29日に退任する。コマツで実践した突出した技術でライバル企業を引き離す「ダントツ経営」で知られる坂根氏だったが、その剛腕さへの期待とは裏腹に、日本の事情に疎い外国人CEOの「擁護者」として国内での説明役を担ってきた。本来、社外取は株主の視点を持って、外部の目で経営を監視する役割を担うが、武田薬品ではその役割が機能していたか甚だ疑わしい。

大塚製薬を傘下に置く大塚ホールディングスは、医療関連事業は「顕在化しているが満たされない医療ニーズ」、NC関連事業は「消費者が気づいていないニーズ」を満たすことをめざす、と2020年統合報告書に記載している。だが株価は、残念ながら大塚らしさを評価しているとは思えない。振り返ってみると株価は10年の上場後、17年1月10日に上場来高値5895円を付けた後、直近では4400~4500円が定位置となりつつある。

日本医師会の中川俊男会長は5月23日、都内で記者会見を開き、次期日医会長選挙(6月25日)に「出馬しないことを決断した」と表明した。全国的な支持の拡大を考慮すれば、6月25日に松本吉郎常任理事が会長に就くことは確定的。現職会長が出馬を取りやめ、しかも常任理事が副会長を経ずに会長に就任するという異例のトップ交代劇は、どのようにして起きたのか。そして、松本氏が率いる日医は、どのような布陣でどう進むのか。

4月19日、公正取引委員会がドラッグストア「ダイコク」に独占禁止法違反の疑いで立ち入り調査を行った。同社が納入業者に対して売れ残った在庫商品の返品を強要したことが独占禁止法に定める優越的地位の乱用に当たる、と判断したものである。ダイコクといえば、「元気、激安、特売セール」を謳い文句に掲げ、急成長したドラッグストアだ。今回の公取委の立ち入り調査で、さてはダイコクの急成長の裏には返品操作があったのかと疑う人もいれば、窮余の一策だったという説もある。

武田薬品工業の次期社長をめぐる動きがにわかに騒がしくなっている。「2025年まで」と現社長が自らの口で語った社長を辞すXデーまで残り2年半。漂流する巨艦と化しつつあるタケダの再起動のため、一肌脱ごうなどという殊勝な人物が同社の社内や周辺に本当にいるかどうかは不明だが、次期社長レースなどという読み物がメディアを賑わしつつある。

中外製薬の株価は、堅調な業績予想にもかかわらず低位に放置されている。2021年の年初までの業績と株価は、飛ぶ鳥を落とす勢いがあった。株価が下落に転じた要因のひとつとして考えられるのは、21年2月4日に発表した新成長戦略「TOP I 2030」が不評であったことだろう。成長戦略を語るだけの十分なKPI(重要業績評価指標)が示されておらず、30年度までに横たわるリスク要因に対して、投資家は警戒感を高めたはずだ。そのほかにもいくつかの要因が重なっており、株価は複雑骨折を負った状況と考えられる。

投資ファンドの目利きは間違っていたのだろうか。3月28日、中堅のジェネリック(後発)医薬品企業、共和薬品工業が、大阪府と工場を置く兵庫県、鳥取県から行政処分を受けた。医薬品の製造上の違反が見つかったためで、医薬品医療機器法に基づき最大33日間の業務停止となった。この共和薬品を2019年に買収したのが、投資ファンドのユニゾン・キャピタルである。
