医薬経済ONLINE
医薬品卸大手、東邦ホールディングスは新経営体制に移行している。最も注目すべき点は、長年グループで経営トップの座に君臨し、指揮を執ってきた濱田矩男氏の取締役勇退。そこで競合卸や取引メーカーの関心事は、業務提携してから4年が経過したスズケンとの経営統合の有無に移っている。

島津製作所で4月に上田輝久前社長から経営のバトンを引き継いだ山本靖則社長は、ヘルスケア分野の強化を明確に打ち出している。この5月、日本水産の医薬品子会社である日水製薬を、TOB(株式公開買付)により完全子会社化すると発表した。島津がM&Aに乗り出すのは3年ぶり。総額400億円近い今ディールは過去最大規模となる。

米ファイザーの日本法人で、非情にも「大規模リストラ計画」が進んでいる。営業部隊であるMR(医薬情報担当者)について、「半減しても構わない」という会社側の思惑も漏れ伝わり、社員からすると胸中穏やかではない。

6月22日。厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は、塩野義製薬の新型コロナウイルス経口薬「ゾコーバ」について、緊急時薬事承認を見送った。7月中に第二部会と薬事分科会の「合同会議」を公開で開き、一定の判断を下すことになった。

製薬業界は一般社会と同様、格差が広がり、中堅製薬会社では顕著だ。大型品「オプジーボ」を擁する小野薬品、米メルクの眼科資産を承継して海外販路を得た参天製薬が集団を飛び出し、日本新薬がその後を追う。

武田薬品工業で8年間にわたり社外取締役を務めてきた坂根正弘氏(小松製作所・顧問)が6月29日に退任する。コマツで実践した突出した技術でライバル企業を引き離す「ダントツ経営」で知られる坂根氏だったが、その剛腕さへの期待とは裏腹に、日本の事情に疎い外国人CEOの「擁護者」として国内での説明役を担ってきた。本来、社外取は株主の視点を持って、外部の目で経営を監視する役割を担うが、武田薬品ではその役割が機能していたか甚だ疑わしい。

大塚製薬を傘下に置く大塚ホールディングスは、医療関連事業は「顕在化しているが満たされない医療ニーズ」、NC関連事業は「消費者が気づいていないニーズ」を満たすことをめざす、と2020年統合報告書に記載している。だが株価は、残念ながら大塚らしさを評価しているとは思えない。振り返ってみると株価は10年の上場後、17年1月10日に上場来高値5895円を付けた後、直近では4400~4500円が定位置となりつつある。

日本医師会の中川俊男会長は5月23日、都内で記者会見を開き、次期日医会長選挙(6月25日)に「出馬しないことを決断した」と表明した。全国的な支持の拡大を考慮すれば、6月25日に松本吉郎常任理事が会長に就くことは確定的。現職会長が出馬を取りやめ、しかも常任理事が副会長を経ずに会長に就任するという異例のトップ交代劇は、どのようにして起きたのか。そして、松本氏が率いる日医は、どのような布陣でどう進むのか。

4月19日、公正取引委員会がドラッグストア「ダイコク」に独占禁止法違反の疑いで立ち入り調査を行った。同社が納入業者に対して売れ残った在庫商品の返品を強要したことが独占禁止法に定める優越的地位の乱用に当たる、と判断したものである。ダイコクといえば、「元気、激安、特売セール」を謳い文句に掲げ、急成長したドラッグストアだ。今回の公取委の立ち入り調査で、さてはダイコクの急成長の裏には返品操作があったのかと疑う人もいれば、窮余の一策だったという説もある。

武田薬品工業の次期社長をめぐる動きがにわかに騒がしくなっている。「2025年まで」と現社長が自らの口で語った社長を辞すXデーまで残り2年半。漂流する巨艦と化しつつあるタケダの再起動のため、一肌脱ごうなどという殊勝な人物が同社の社内や周辺に本当にいるかどうかは不明だが、次期社長レースなどという読み物がメディアを賑わしつつある。

中外製薬の株価は、堅調な業績予想にもかかわらず低位に放置されている。2021年の年初までの業績と株価は、飛ぶ鳥を落とす勢いがあった。株価が下落に転じた要因のひとつとして考えられるのは、21年2月4日に発表した新成長戦略「TOP I 2030」が不評であったことだろう。成長戦略を語るだけの十分なKPI(重要業績評価指標)が示されておらず、30年度までに横たわるリスク要因に対して、投資家は警戒感を高めたはずだ。そのほかにもいくつかの要因が重なっており、株価は複雑骨折を負った状況と考えられる。

投資ファンドの目利きは間違っていたのだろうか。3月28日、中堅のジェネリック(後発)医薬品企業、共和薬品工業が、大阪府と工場を置く兵庫県、鳥取県から行政処分を受けた。医薬品の製造上の違反が見つかったためで、医薬品医療機器法に基づき最大33日間の業務停止となった。この共和薬品を2019年に買収したのが、投資ファンドのユニゾン・キャピタルである。

住友ファーマ(今年3月まで大日本住友製薬)は2005年に大日本製薬と住友製薬が合併し誕生した。合併により、とりあえず経営基盤を拡大し、財務面などの体力を得ることが狙いだったと考えられる。大型製品「ラツーダ」に頼ってきたが、特許が切れてジェネリック(後発)医薬品が収益を直撃する23年度は赤字転落となるのか。

「ここまで忖度すると、あきれるというよりも笑えてくる」と、業界関係者を失笑させる記事が日本を「代表」するクオリティペーパーの系列紙に載った。年度末を跨いで日経産業新聞が3回にわたって連載した『認知症薬 エーザイ再挑戦』である。記事体広告とは謳ってはいないが、エーザイ率いる内藤晴夫CEOの言い訳とも取れる言い分を、ほぼそのまま垂れ流すだけの内容だった。

10年前に武田薬品工業が行ったスイス・ナイコメッドの巨額買収は失敗だったのだろうか。11年、武田薬品は新興国市場に強みを持つナイコメッドを約1兆1000億円で買収。翌12年にモスクワから280キロ北東のヤロスラブリに工場を開設し、本格的にロシア市場への進出を開始した。だが現在、ロシアによるウクライナ侵攻で、両国での事業に暗雲が立ち込めている。

昨年末、業界最大手のサワイグループホールディングス(HD)が電撃的に発表した「小林化工が持つ工場のみ」の買収。この“奇策”に業界内では衝撃が走ると同時に、自ずと視線はある会社に向かった。「小林化工は決着した。では、日医工はどうするのか」(大手製薬関係者)。自らが引き起こした不正問題が解消するメドはいぜん立たず、再建への道筋も一向に見えてこない。工場売却で息をつなぐ可能性が業界内で囁かれ始めている。

3月下旬、東京地検特捜部がSMBC日興証券の元幹部5人を証券取引法違反(相場操縦)容疑で逮捕、起訴。さらに三井住友銀行出身の副社長も逮捕した。対象となった銘柄の一つはアズワンだったとされる。一般の知名度はいまひとつだが、大学や製薬会社の研究者の間ではよく知られた医療系企業。図らずも事件で注目の的となってしまった。

数年毎に早期退職者募集をしているアステラス製薬。同社にはキーマンと目される人物がいる。「彼がアステラス製薬にいるということは、まだリストラが続くということでしょう」と、そのキーマンが過去に在籍した外資系製薬会社社員は漏らす。「コストカッター」として知られていたという。

協和キリンの時計の針をふた昔前に戻したときに感じるのは、中外製薬との間でついた大きな格差である。「抗体医薬開発における国内の双璧」と称されたのは昔。自社創製薬群が大きく伸長して売上高が1兆円の大台に届こうとしている中外に対し、協和キリンは3800億円という水準。時価総額の差も大きく開いている。

旧大日本製薬と旧住友製薬の合併で2005年10月に誕生した大日本住友製薬。来る4月1日を期して「住友ファーマ」に生まれ変わる。マルピーの通称で知られた大阪・道修町の名門の名は、生き残りを賭けたはずの再編劇から16年半で消滅する。社名変更は、住友化学による住友ファーマ完全子会社へのステップであることは間違いない。住化のより厚い「庇護」を受けること以外に、激動の製薬業界を生き延びる選択肢は残されていないからだ。
