あなたは、「老後は妻と2人でのんびりしたい」「オレは長生きしないで、“現役”のうちに死にたい」などと思ってはいないだろうか。妄想を抱くのは構わないが、現実はそんなに甘いものではない。定年後、妻や子どもが相手にしてくれないだけに留まらず、挙げ句の果てには妻に先立たれ、“おひとりさま”になる恐れもある。また、独身者であれば、この先一生“おひとりさま”の可能性も決して低くない。にもかかわらず、冒頭の“妄想”のように、「おひとりさまの老後」に対する想定をしていない人が多いのが現実だ。

そこで、ベストセラー『おひとりさまの老後』の著者である東京大学大学院・上野千鶴子教授に“おひとりさま予備軍”ともいえる男性ビジネスマンに警鐘を鳴らしてもらうとともに、30代~50代からはじめるべき「老後の準備」と「覚悟」について話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)

60代以上に多い「死別シングル」、
50代以下では「離別シングル」「非婚シングル」が増加中

――最近、「女性のおひとりさま」だけでなく、「男性のおひとりさま」が増加しているといわれている。

うえの・ちづこ/東京大学大学院教授。1948年富山県生まれ。京都大学大学院社会学博士課程修了、平安女学院短期大学助教授、シカゴ大学人類学部客員研究員、京都精華大学助教授、国際日本文 化研究センター客員助教授、ボン大学客員教授、コロンビア大学客員教授、メキシコ大学大学院客員教授等を経る。1993年東京大学文学部助教授(社会 学)、1995年東京大学大学院人文社会系研究科教授。専門は女性学、ジェンダー研究。介護保険制度がスタートして以降、介護研究にも力を注ぐ。『おひとりさまの老後』に続き、『男おひとりさま道』も大ヒット。最新刊『女ぎらい』が好評発売中。現在は、介護をテーマにした『ケアの社会学(仮)』(太田出版)を執筆中(2011年3月頃刊行予定)。
Phote by Kazutoshi Sumitomo

 2005年の国勢調査によると、配偶者がいる男性の割合は60代後半でピークとなり、それ以上の年齢層では、死別によるおひとりさま、「死別シングル」が増加しています。

 一方、50代以下の世代では、非婚率と離婚率の増加から男性の有配偶率は低下しています。現在、40代男性非婚者の4人に1人、30代の非婚者の3人に1人は生涯結婚せずにいるだろうと予測されていますので、結婚しない「非婚シングル」が増加中です。また急激ではありませんが、離婚率も確実に上昇しているので、「離別シングル」も少なくありません。

 ただ、「離別シングル男性」には、「離別シングル女性」と決定的な違いがあります。それは、離別女性は「シングルマザー」となることが多いのですが、離別男性は親権を放棄して、離別家庭から関係がほとんど切れてしまうことです。「子どもが小さいこと」が離婚の抑止力にはならない今、離別男性の“孤立”、“おひとりさま化”は非婚男性とあまり変わらない状況です。

 昔のように結婚が“セキュリティ”にはならない状況下で、男性おひとりさまの老後は深刻さを増しているといえるでしょう。