グローバルに活躍する若者を育てたい
ムーギー 竹中先生は、グローバルで活躍するリーダーを育てることにも力を注がれていますよね。とくに高校生を対象としたグローバル・リーダーシップ教育である「世界塾」は興味深い取り組みですが、なぜこういったことを始めようと思われたんですか?
竹中 総理のそばに仕えてみて、国のトップでもできないことがあると痛感したからです。もちろん大臣としても、できることとできないことがあった。そんな経験を経て、半径10メートルで自分ができることを一生懸命やろうと心から思ったんですね。いま私ができることは、自分の経験や知識を若い人に伝えること。早稲田塾に賛同をいただいて、5年前に「世界塾」を開講してグローバル教育を始めたんです。
ムーギー 大臣、しかも改革担当大臣をされた方から経験や知識をシェアしてもらえるなんて、子どもたちにとって相当な刺激になるでしょう。
竹中 若い人が1人でも世界にチャレンジをしてくれればと思って「世界塾」を始めましたが、本当に人生が変わる子が何人も出てきました。最初は発言も英語もできなかった子が、たった1年でアメリカの大学に進学したり……。キムさんにも毎年、講師として参加してもらっていますが、高校生たちから大変な人気でしたよ。
ムーギー 「世界塾」に1日参加するために、フランスからロシア経由で香港に飛びましたからね(笑)。年間50日の日曜日のうち30日を使ってでも若者を育てたいという先生の思いを聞いて、私も負けていられないぞと思って。
竹中 ありがとうございます。また次回も頼みますね(笑)。
ムーギー ちなみに、高校生よりもっと若い、3~5の幼児教育でグローバルに活躍するリーダーシップを身につけさせるためにはどうすればいいと思われますか?
竹中 逆に質問しますが、キムさんだったら泳げない人間を泳げるようにするにはどうしますか?
ムーギー うーん、海に放り込んで溺れる直前で救うという感じでしょうか。
竹中 私も同じ意見です。「泳げないと大変なことになる」と自覚させることで、自分で努力するようになってほしいんですよね。教育はいくら与えても、自分の意志でやろうと思わないとモノにはなりません。
幼児教育の土地勘があるわけではないのですが、主体的に学びに取り組もうとするインセンティブをどう設計するかがポイントではないかと思います。
ムーギー 本書『一流の育て方 ビジネスでも勉強でもズバ抜けて活躍できる子を育てる』でも、「親に感謝していること」の項目で、「勉強しないとどんな大変なことになるか教えてくれた」「いまの勉強が将来どんなことに役立つのか示してくれた」という声がたくさん寄せられました。
まさに、勉強をしたくなるようなインセンティブ設計によって主体性を養われたということですね。竹中先生は、学生の主体性を伸ばすために心がけていることはなにかありますか?
竹中 小さな成功体験を積んでもらうことです。それが、次の挑戦につながりますから。私は大学のゼミでも「英語で5分間発表する」といった小さなチャレンジをしてもらいます。それは同時に小さな失敗体験にもなり得ますが、そこであきらめずに再挑戦して小さな成功につなげられたら、結果的には成功体験なんです。私自身、いまでもその繰り返しですよ。
ムーギー 竹中先生でも、ですか。いやあ、今日は本当にいいお話をありがとうございました。「世界塾」でお役に立てることがあれば、いつでもお声がけください!
竹中 ほかにもいろいろと仕掛けているから、ぜひ相談させてくださいね。