「会社の方針」を
「自分の言葉」に変換して伝える

【中原】ここまでのお話をまとめると、齋藤店長は「仲間の和」でお店を引っ張り、西村店長は「教育」でお店を引っ張って、人を採用し、定着を図るというマネジメントスタイルをお持ちだとの印象です。ほかには、アルバイトの採用や定着のために心がけていることはありますか?

世界トップ級の「社内人材育成システム」は何を教えているか?全国からスタッフが集まり、店舗運営などについて真剣に議論している

【齋藤】私は「モラル」を意識しています。自分のお店を「単なるバイト」という感覚で臨む職場ではなく、「仕事」としての緊張感を持ってもらえる職場にするようにしていますね。

【西村】私も、「働く環境」というものをすごく意識しています。あとは、「お店としてやりたいこと」を、全スタッフにしっかり、店長の口から伝えることですね。会社の戦略など、伝えるべきことをしっかり伝えたうえで、働いている人のやりたいこと聞き、お店に反映させるようにしています。「自分たちの意見でお店を変えていけるんだ」ということを実感してもらうことがとても重要なポイントだと思いますね。

【中原】会社の戦略や方向性をご自身の言葉で語るというのは、とても難しいことだと思います。どのように伝えているんですか?

【西村】「会社が」というよりは、「『私は』このお店をこういうふうにしていきたい。それがひいては、マクドナルド全体がこういうふうになることにつながっていくんだ」というような話し方をしています。

【中原】最近だと、どんなお話をしたんですか?

【西村】「大切な人を連れてきたいお店にしよう」という話をしました。彼女とか彼氏とか、お父さんとかお母さんとか、自分の大切な人たちを、このお店に自信をもって連れてこられるようにしたい、そんなふうに伝えました。

【中原】素敵なお話ですね。このようなお話を聞くと、「このお店でずっと働きたい」と思うでしょうし、新たに「ここで働きたい」と考える人も増えるでしょうね。

(座談会おわり)

世界トップ級の「社内人材育成システム」は何を教えているか?左から渋谷和久氏(インテリジェンスHITO総合研究所 代表)、日比谷勉氏(日本マクドナルド 人事本部)、西村裕美氏(六本木ヒルズ店店長)、齋藤周平氏(立川伊勢丹前店店長)、中原淳氏(東京大学 准教授)