しかし、生活保護で暮らす人々が自分の声で訴え続けても、「あれもこれも」という勢いで生活保護削減が進められている現状ではある。

「なし崩し的に、これ以上の引き下げが行われないためにも、『黙っちゃいない』という態度を示し続ける必要があります。しかし、声を上げ続けていても、2015年の暖房費補助・家賃補助引き下げなど、生活保護費の切り崩しが行われているという厳しい現状があります」(白木さん)

 自分は生活保護ではないから関係ない、というわけにはいかない。就学援助・住民税非課税・社会保険料減免など、低~中所得層がお世話になる可能性のある数多くの制度で、対象になるかどうかの線引きは、「所得が生活保護基準の1.3倍(例)以下かどうか」という形で行われている。

 影響は、実際に現れている。2014年、文科省は全国の自治体のうち71自治体(4%)で、2013年の引き下げの影響が存在する可能性を示した。これに対し、過小見積もりであり、実際には674自治体(38%)が影響を受けているとする批判もあるが、就学援助だけでも、影響は間違いなく存在する。その他の制度の何にどこまで影響があったのか、全容をつかむことは困難だが、所得で中位よりも下であれば、間接的にでも、何らかの影響は受けているだろう。

「けれども、当事者たちが黙っていたら、もっと下げられているかもしれません……そのくらい深刻な状況です」(白木さん)

 深刻なのは、「生活保護基準が引き下げられた」という事実だけではない。生活保護の暮らしは、実際に劣化させられてしまっている。

経済的暴力を受け続けるなか
「健康で文化的な生活」はあり得るか?

 生活保護法の上位法にあたるのは、日本国憲法で「健康で文化的な最低限度の生活」を営む権利・生存権を定めている、第25条だ。

「ですから、この訴訟は、日本国憲法25条の生存権に焦点が当たっている訴訟です。でも生存権が十分に保障されていない現状においては、その他の憲法上の権利も十分に享受できているとはいえないのです」(白木さん)