新滑走路が完成し、国際線定期便が増発された羽田空港。都心からのアクセスが向上し、ビジネスパーソン・観光客を問わず、注目の存在となっている。
そこで比較されるのが、従来まで“日本の玄関”だった成田空港との利便格差だ。今回は、生まれ変わった羽田空港は本当に利便性が増したのか? 成田空港との比較も交えながら、徹底検証してみよう。
まずは交通の利便性だ。これまで「国内は羽田から、海外は成田から」とされてきた首都圏航空事情において、利用者にとって成田空港はとにかく“遠かった”。
実際、京成電鉄(一般電車)で始発の上野駅から100分、高速バスでも東京シティ・エアターミナル(箱崎)から60分強かかる。国際線における“2時間前ルール”を含めると、ゆうに半日を使ってしまう場合もある。
その点、羽田空港は浜松町駅からモノレール(普通)で25分、第一ターミナル、第二ターミナルの手前に位置する国際線ターミナルまでは、最速で13分しかかからない。これは品川から京急電鉄を利用してもほぼ同じだ。
さらにはモノレールにしても京急にしても、国際線ターミナル駅の改札を抜けた目の前がチェックインカウンターとなっており、急な出張や待ち合わせに寝坊したとき、構内アクセスの良さに助けられる人は多いだろう。
とはいえ、成田空港も負けてはいない。今年7月に成田スカイアクセスが開業したことで、日暮里~成田空港間を36分で移動することができるようになった。東京の東側、千葉の西寄りエリアなど、羽田よりも成田が近くなった利用者も多いはずだ。
ちなみに航空券の価格設定は、今のところほぼ同じ。価格が変わらないなら、アクセス良好、話題性の高い羽田に集まりがちだが、就航している航空会社はまだ多くないのが現状だ。
アジア圏に強いネットワークをもつ格安航空会社(LCC)、AirAsiaが12月中頃から羽田便の就航を始める。これに対抗してか、成田空港はLCC専用のターミナル建設を計画中、さらには着陸料の割引きも検討しているところだ。全国的に広まっているLCC参入の動きが、首都圏にも本格的に到来。LCC各社がこれまでよりも多数飛来するのは間違いない。
そこで、羽田にしろ成田にしろ、“アジア圏のハブ空港”を目指したときにネックとなるのが「着陸料」だ。着陸料とは、航空機の利用回数に応じて航空会社が空港に対して支払う利用料の1つ。日本の着陸料は他国の数倍にも上り、世界でもかなり高額の部類に入る。
米国や英国、ドイツ、オランダなど、巨大ハブ空港を持つ主要国と比べると大差ない。しかし、香港国際空港(中国)や仁川国際空港(韓国)など、設立当初からハブ空港を目指していた空港が着陸料などの費用を低く抑えることに成功し、今やアジア圏のハブ空港として君臨している事実を鑑みるに、日本の対応の遅れ、目論見の甘さは否めないだろう。
既存航空路線を健全に維持・充実させていくと同時に、新規路線を積極的に開拓していくためには、現在、各航空会社が負担している運航コストの軽減を図るのが重要。そのためには空港にかかっている着陸料や空港使用料などを安くする風潮が、まず日本国内から生まれる必要がある。
羽田空港の拡大に期待するだけでなく、危機感を持った成田空港の発展が鍵を握っていると言える。
(筒井健二)