「脳」の睡眠と「体」の睡眠

 ノンレム睡眠は「脳の睡眠」とも呼ばれている。ノンレム睡眠の主な目的は、ストレスの除去やホルモンの分泌だ。
 脳が休んでいるうちに、体のほうでは新陳代謝が促進され、免疫機能が高まり、細胞のメンテナンスが行われる。
 ノンレム睡眠のときに起こされると、脳も体も眠気が強く、寝足りない気分になる。これは「脳が休んでいて、体もメンテナンス中」という、起きる準備がまったくできていない状態で睡眠をカットされるからだ。

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 一方のレム睡眠は「体の睡眠」とも呼ばれている。体は休んでいるが、脳は活動している状態。記憶の固定化と筋肉の疲労回復が主な目的だ。

 脳が活発に動いているのは、記憶の「整理」と「再構築」をするため。起きていた時間にストックした情報の中から、自分に必要なものだけを抜き出して、再処理している。パソコンの「最適化」のような機能を果たしているのだ。

 体は緊張が抜けて休息状態であるものの、脳は働き、眠りが浅くなっている時間帯なので、このときに目覚めると、すっきりと起きることができる。

 眠りの深さには「浅いノンレム睡眠」「深いノンレム睡眠」「レム睡眠」の3段階があり、下図のように、人間は入眠からどんどん眠りを深めていった後、折り返して浅い眠りへ向かう。
 そして最も浅い眠りのときにレム睡眠に切り替わり、脳が起きている状態が10~20分ほど続いた後、またノンレム睡眠に入り、眠りを深めていく。人間はこの3つの睡眠を繰り返しながら、脳と体を回復させていく。

 このノンレム睡眠とレム睡眠をバランスよくとるのは、高度な脳を持つ人間特有の活動といってよい。というのも、人間のような高度な脳を持たない動物は、脳を休めるノンレム睡眠をとる必要がないからだ。ほとんどの動物が、体を完全に休めるレム睡眠のみをとっている。

 つまり人間が人間らしく活動するためには、脳の疲れをとるノンレム睡眠のほうが大事だといえる。もちろんレム睡眠も「記憶を整理する」という大切な役割を担うが、それにはまず、ノンレム睡眠で完全に脳が休まっていることが大前提だ。

 つまり、人間にとって最適な睡眠とは、ノンレム睡眠とレム睡眠をバランスよくとりながら、とくにノンレム睡眠の質を高め、より深く眠ることなのである。