ディープ・ワークが21世紀に
大きな価値を持つ理由

 ディープ・ワークは、物書きや20世紀初頭の哲学者の郷愁に満ちた愛着などではない。今日、多大な価値のあるスキルなのだ。

 それには二つの理由がある。第一は、習得と関係がある。いまは急速に変化する複雑なシステムに左右される情報経済の時代である。例えば、いま学ぶべきコンピュータ言語は10年前には存在していなかったし、10年後には時代遅れになっているだろう。1990年代にマーケティングで成功した人は、いまデジタル分析が必要になるとは考えもしなかっただろう。

 つまり、情報経済の現在、価値ある人間でいるには、複雑なことを素速く身につけるすべを習得しなければならない。それにはディープ・ワークが必要だ。それができなければ、テクノロジーの進歩に後れを取るだろう。

 ディープ・ワークが大切な第二の理由は、デジタル・ネットワーク革命の影響によって二つの道が拓かれるからだ。もしあなたが有用なものをつくり出すことができたら、アクセスが可能な消費者(例えば、雇用主や顧客)は基本的に際限がない――それによってあなたの報酬は増大する。他方、あなたがつくるものがありふれていたら、不利になる。消費者はもっといいものをオンラインで簡単に見つけることができるのだから。

 ディープ・ワークの必要性はこれまでになく高まっている。産業経済の時代には、ディープ・ワークが不可欠な、優れた技能を持つ労働者も知的専門職の人々も少数であったが、大半の人が気を散らさず集中する能力を養ったりしなくとも、立派に仕事をすることができた。彼らは小型機器を動かすことで報酬を得た――そして、何十年も仕事内容はほとんど変わらなかった。

 しかし、情報経済の時代になると知的労働者はどんどん増え、ディープ・ワークは一種の基軸通貨になってきている――大半がいまだこの現実に気づいていないとしても。ディープ・ワークはきわめて重要で、「21世紀のスーパーパワー」と言えそうだ。