仕事の目的・目標を決めるのに、テクニックがあるというと、意外に感じる人もいると思います。QCDなどの視点で考える、ベンチマーキングを使うなど、トヨタ自動車でホワイトカラーの業務の質の向上を推進するメンバーが、トヨタグループ内外の仕事の進め方の参考としていただければと編集した 書籍『トヨタ公式 ダンドリの教科書』から、「仕事の目的・目標の正しい考え方」のノウハウを紹介するその第2回です。
ノウハウ5
エンドユーザーまでのつながりを理解する
エンドユーザーまでのつながり、さらには、それぞれの「お客さま」のニーズを考えます。すべての仕事は、エンドユーザーにつながっています。それを認識することは、あらゆる仕事において大事なことです。
自分が仕事として手がけ、作成したアウトプットは、どのようにエンドユーザーまでつながっていて、それを社内外で誰が使うのか。エンドユーザーまでのつながりに加え、そこまでイメージすることで、目的・目標を明確にできます。
例えば自動車なら、エンドユーザーが求めているのは、「安くて品質の良い車を購入したい」というものでしょう。そのために、設計担当者はどんなことを考えておかなければいけないか。
そのときに大切になるのが、それぞれの「お客さま」のニーズを考えることです。自分の手がけた設計の仕事は、エンドユーザーにたどりつくまでに、多くの「お客さま」がいるはずなのです。
自分の設計の仕事が、後の工程=「お客さま」の間でどのように使われていくのかを考え、必要であれば後の工程に確認すること。そこで何が求められていくのか、意識していくことです。
設計でいえば、すぐ後の工程の生産設備設計では、現状の設備で生産できる部品を設計してほしい、というニーズがあります。なぜかといえば、新しい設備を導入すると、車の価格が高くなってしまう可能性が出てくるからです。
また、次の工程の製造では、組み付けやすい部品を設計してほしい、というニーズがあります。例えば、部品を組み付けたときに「パチン」と手応えがないため、作業者が気遣いしながらやるような作業などを、トヨタ自動車では、「気遣い作業」と呼んでなるべく回避するようにしています。気遣いをしなくていいように改善することで不良を減らしていくことができるからです。製造のことも考えて設計を進めていくことで、製品はより良いものになっていきます。
多くの場合、自分の仕事ですぐ後の工程まではイメージできるものです。設計でいえば、生産設備設計まで。また、設計者はエンドユーザーもしっかり意識できていることが多い。最終的なお客さまに自分の仕事はつながっているということは認識できている。
しかし、実は自分の仕事は、エンドユーザーにたどりつくまでの、さまざまな工程で「お客さま」を持っているのです。設計では部品を組み付ける人も「お客さま」です。それをできるだけイメージする。自分のアウトプットがどこで使われ、それぞれの工程で何が要望されているのか、広くニーズを把握していく。そうすることで、エンドユーザーにも、それぞれの工程でも評価される、いい仕事ができるようになるのです。
ノウハウ6
目標は「QCD」などの視点で考える
トヨタの仕事術で大切な自工程完結では、目標は「QCD」などの視点で考え、それらが定量的かつ測れるかも考える必要がある、としています。
QCDとは、「クオリティ」「クオンティティ」「コスト」「デリバリー(納期)」のことです。クオリティは製品の品質やサービスの質。クオンティティは量。コストは、予算や工数などの費用。デリバリーは納期や完成する日を指します。
QCDの切り口で考えると目標はモレが少なくなります。また、できればそれらを定量的にすることで、目指すレベルが明確になります。
また、法規やルール・安全・環境・コンプライアンスなどの項目を考える必要がある仕事もあります。
例えば、自工程完結の本の出版イベントを開催するとしたら、QCDはどうなるか。本の出版イベントですから、大勢の人に来てもらうことが大切。クオンティティは来場者数ということになります。またクオリティは、アンケートを取って本の購入を検討すると回答した人の割合を例えば50パーセントにする、ということになる。
コストは、イベントの予算。例えば、100万円としましょう。そしてデリバリーは、「本の発売に合わせて15日以内に行う」などになります。
また、できればQCDを定量的にすることで目指すレベルが明確になります。
QCDは、さまざまな仕事に当てはめて考えることができます。的確な目標を設定する際のヒントになります。
ノウハウ7
ベンチマーキングできるものを考える
仕事の目標を考えるとき、参考になるのが、他の同じような仕事や他部、さらには他社をベンチマーキングすることです。
まずは、自分自身で、同じような仕事を過去にやったことがないかと考えます。もし、あるのであれば、今回の仕事の目的や目標を設定するにあたっての参考になります。
また、同じような仕事をしている他の部署、グループ、他社についても、ベンチマーキングできないか、考えてみます。