なぜ、オフィスの仕事の生産性は上がらないのでしょうか。それは、オフィスでの仕事が「結果が良ければプロセスは問わない」という傾向が高いからではないでしょうか?トヨタ自動車でホワイトカラーの業務の質の向上を推進するメンバーが、トヨタグループ内外の仕事の進め方の参考としていただければと編集した書籍『トヨタ公式 ダンドリの教科書』から、注目のノウハウを紹介します。今回は、「結果オーライのどこがダメなのか」について本書でのコーチ役、吉野部長が解説します。
「結果さえ良ければいい」を
トヨタでは許さない
トヨタの仕事術の大きな特徴は、ダンドリを重視することです。「計画」「実行」「評価」「改善」のいわゆるPDCAサイクルでいえば、Pを重視する。
仕事の実行に取りかかる前に、いかにきちんとした仕事のダンドリを考え、ヌケやモレのない準備をすることができるか。それが、仕事の成果や効率を大きく左右することになるのです。
そんなトヨタの仕事術がベースとして用いたのは、工場の現場から生まれた考え方でした。その名称が、「自工程完結」です。海外では「Ji Kotei-Kanketsu」もしくは略して「JKK」と呼ばれています。
トヨタの仕事術では、ホワイトカラーでありがちな「結果オーライ」「結果さえ良ければプロセスは問わない」という考え方を許しません。
そもそも工場の仕事では、結果を正しく出せるよう、それぞれの工程で「品質は工程で造りこむ」ことを求めます。そうすることで、生産性を高めたり、モチベーションをアップさせたりすることができる。
トヨタは製造工程の「自工程完結」の成功で、そのことに気がつきました。トヨタの仕事術は、ホワイトカラーにおいても、そうした工場の考え方を取り入れようと考えたのです。
ダンドリを見直さないと
再びミスが起こる
どんなやり方であっても、良い結果さえ出ればいい、という考え方もあるのかもしれません。実際、ホワイトカラーの仕事では、結果の良さだけを求める傾向が強い印象があります。
結果だけが問われ、その前のダンドリについては問われない。どのようなダンドリをしていたのか、について聞かれることもない。評価されることもない。
しかしそれでは、良い結果のときはさておき、もしかすると良い結果が出なかったとき、ダンドリそのものに問題があったとしても、なかなかそこに立ち戻ることはできないと思うのです。ダンドリが見直されないということです。
それでは、再び良くない結果をもたらしてしまう可能性がある。また、うまくいった経験だけで仕事をしていたら、予想外の事態が起こって、対応ができずに失敗してしまうようなこともありえます。
もっといえば、担当者が急に異動したり休職したり退職したりしたとき、まったく対応ができない、というようなことにもなりかねません。
トヨタの仕事術は、こうしたなかでも正しい結果が得られ、安心して仕事ができるように考えられたものです。
ホワイトカラーの仕事において、ダンドリを重視した質の高い仕事をするための考え方が、トヨタの仕事術なのです。