IQや才能など生まれつき備わっている能力よりも、「やり抜く力」こそがあらゆる成功のカギだという研究成果をまとめ、世界的な話題となっている『GRIT やり抜く力』(ダイヤモンド社)。本書の愛読者であるスポーツジャーナリストの中西哲生さんは、ジャーナリストの仕事と平行して、長友佑都選手や永里優季選手、久保建英選手のパーソナルコーチも務めている。前編では、自身が「やり抜く力」を身につけた経験を語ってもらったが、後編はコーチの視点から「やり抜く力」の高め方について語ってもらった。(構成:山本奈緒子、写真:柳原美咲)

「やり抜く力」が弱い人の特徴

―――長友選手や永里選手、久保選手は非常にグリット(やり抜く力)が強いとのことでしたが、反対に「やり抜く力」が弱いと思われる人にはどんな特徴がありますか?

中西 やっぱり、近道を探す人でしょうか。何かをやり続けたことによって、あるとき突然実現できることはあると思います。でも、簡単に上手くなる方法はない。

『GRIT やり抜く力』の中に「才能×努力=スキル」→「スキル×努力=達成」という方程式が説かれていました。才能があるだけではダメで、努力することで初めてスキルが身について、スキルを身につけたうえでさらに努力することでやっと大きな結果を出せるということ。これは皆に知ってほしいと思いましたね。

 僕の知り合いに、藤田寛之という、僕と同い年のプロゴルファーがいるんですけど、彼は40代になってから賞金王に輝いているんです。その彼が、「この先、どうなりたいですか?」と聞かれたときに、「職人になりたい」と答えていました。さらに、「職人の技術っていうのは毎日磨いていないと曇る」とも言っていて。

 一流と言われる人たちは皆、最初から上手くできるわけじゃなくて、毎日地道に玉を磨き続けるようなトレーニングをしているんですよね。

「できそうでできないこと」で「やり抜く力」を伸ばす

―――コーチをされていて、相手の「やり抜く力」が低い場合、それを引き上げるアプローチをされることはありますか?

中西 もちろん。そんなときは、「できそうでできないこと」を練習させるといいんです。そうすると皆、一生懸命やりますよ。たとえば右足ではできるけど左足ではできないこととか。

 そこにちょっとコツを伝えてあげると、「あ、できた!」と顔が変わる。そうやって何回かに1回できるようになると、とくに若い選手なんて、面白いから夢中で練習するようになります。

 僕の役割は、「できないこと」を提示してあげて、最初は10回に1回しかできなくても、最後には10回やって10回できるようにすることだと思っているんです。

―――そうしてできるようになると、また新たな「できそうでできないこと」を提示されるんですね。

中西 そうやってちょっとずつレベルを上げていくんです。でも「やり抜く力」のある人ほどすぐできるようになるので、こちらも次々と新しいことを考えなくちゃならない。長友選手は、「これやってみて」と昨日できなかったことをやってもらったら、今日はもうできるようになってるんですよ。

 僕が「あれっ!?」と驚いたら、「コソ練しました」と言うんですけど、彼は本当によく練習します。やはり最初からエリートだっていう選手ではないので、自分で自分を磨くことを怠らないんです。まさに「やり抜く力」の典型的な例だと思います。