ビタミンDの低下が、
アルツハイマー病を招く
【久賀谷】日本人の生活スタイルの中で、最も欧米化してきた部分は食事でしょうね。アルツハイマー病を防ぐにあたって、やはり食事は大きなウエイトを占めるのでしょうか?
【白澤】はい。とても重要です。
ある実験で、緑茶の中の成分であるエピガロカテキンカレートをネズミに毎日食べさせて、脳がどうなるかを見たところ、アミロイドベータ蛋白の溜まり方が遅くなってくるということがわかりました。この溜まり方が遅くなったネズミは、アルツハイマー病の発症が遅れるんです。
つまり、「脳にアミロイドベータ蛋白を溜める」という生化学反応を、食べ物で制御することが可能だということです。これが「予防」です。そのために、食べ物はとても大事なものです。
【久賀谷】なるほど。「病気の第一歩を食い止める」ために、食事は重要な存在なんですね。
ほかに、アルツハイマー病を防ぐ食事として大切なポイントはありますか?
【白澤】いちばん手っ取り早いのは「ビタミンD」をとることですね。私は外来では、患者さんのビタミンDの血中濃度を必ず測定します。日本人はビタミンDの血中濃度がすごく低いんですよ。ですから、ほとんどの人にビタミンDのサプリメントを処方しています。食事でビタミンDをとるのが、有効なアルツハイマー病予防につながるでしょうね。
【久賀谷】なぜ日本人は、ビタミンDの血中濃度が低いのでしょうか?
【白澤】それは単純に、日本人が日の光を浴びないからですね。ビタミンDは紫外線でつくられます。しかし日本人は、紫外線を浴びません。
ビタミンDとアルツハイマー病の関係は明らかになっています。ビタミンDは脳に直接働きかけますし、うつ病の予防にもつながります。日本人は国民全体としてビタミンDの血中濃度が低く、そのために認知症の発症率が上がっていると考えられます。
足りない分は食事で補うしかありません。食事の管理が難しければ、サプリメントでもいいでしょう。ビタミンDのサプリメントは比較的安く、1ヵ月分で1000~2000円くらいでしょうか。その割にメリットはとても大きい。1日1回、サプリを飲むだけで、認知症を防ぐことができるのだったら、これがいちばん楽ですね。
【久賀谷】やらない手はないですね(笑)。
【白澤】そうですね。でも、ビタミンDによってアルツハイマー病発症のリスクが抑えられることを、ほとんどの人が知らないんです。
僕が持っているデータでは、ビタミンDの血中濃度が20くらいの人が、サプリを1錠飲むと、だいたい60くらいにまで上がります。これによってアルツハイマー病発症のリスクが半分以下になるんですよ。
【久賀谷】それはすごい数字です。そんなに大きな効果があるのだとすれば、もっとみなさんに知られるべきですね。
(第2回に続く)