ソフトバンクの社員なら、どう動くのか?

 ダイエーという企業をご存じでしょうか。一時は売上日本一になったこともあるスーパーマーケットです。

 創業者の中内功氏は現場が好きで、社長や会長になってからも売り場に顔を出しては「この棚の商品を並べ替えろ」といった細かな指示を出していたそうです。

 確かに組織が小さいうちは、カリスマ性のあるトップが現場を引っ張ることで活気が生まれ、組織は強くなります。このタイプのトップは、鋭い勘で「何が売れるか」を察することができるので、しばらくは売上も右肩上がりに伸びます。

 しかし、7万人超の巨大組織のトップが、現場で今起こっていることを何から何まで把握するのは不可能です。実際に本人も、最後の頃は「現場がわからんようになった」とこぼしていたと聞きます。

カリスマの指令だけに頼る組織は、現場で起こっている目の前の変化に対応できず、沈んでいくのみです。

 実際に、かつて小売業界で売上日本一を誇ったダイエーも、1990年代以降は経営が傾き始めます。中内氏が経営を離れてからは急速に衰退し、ついにはイオンの子会社になるという末路を辿りました。

 つまり、部下が上司に従った結果、ダイエーは衰退したのです。

 部下は上司の指示で動くだけ。「考える」という行為をしなくても、ただ言われたことをやるだけで評価される。たとえ目の前の売上が下がっても、上司からの指示がなければ動かない。

 ダイエーがうまくいかなくなったのは、社員が考える仕組みが弱かったからではないか。そう言っても過言ではないでしょう。

 では、ソフトバンクなら、社員はどう動くでしょうか。

 仮に、ソフトバンクがスーパーマーケットを経営するとします。

 孫社長が売り場を見て回り、キャベツや人参の並べ方にまで口出しするようなことは絶対にありません。店づくりや現場の回し方は、来店客や商品の動きを目の当たりにしている社員に任せるでしょう。

 その代わり、日々の売上は店舗や売り場、商品ごとに厳しく管理され、社員たちは自分に与えられた目標数字を達成するために必死に知恵を絞ります。

「最近は1人暮らしの高齢者が増えたからか、キャベツは丸ごとより、カットしたものがよく出ているな。だったら、カットしたものを目立つ棚に置いてみよう」

「今日は急に気温が下がったから、総菜コーナーの冷たいサラダが売れていないな。だったら、温めて食べる煮物を増やそうか」

 こうしたことを各売り場の担当者が徹底的に「自分の頭で考える」。現場にいる誰もが「自分がやったことは成功か、失敗か」を検証し、次はどうするかを考え、また実行する。そうやって、自分たちで成果に直結する仕事をします。

 この日々の考える行動が一過性ではない、継続的な成長を実現し、ソフトバンクの社員を「考える人」へと変えていきます。