もし私がその部下であれば、「その資料によって、あなたはどのような意思決定ができるのですか?」と聞くと思います。必要であれば、そのくらい言い返すことが、前工程の不備を自工程で完結させるために必要なことなのです。

 こんなところにも、多くの日本企業の働き方の甘さがあるように思います。長時間労働の源泉にもなるし、意思決定のレベルの低さ、スピードの遅さにもその結果が表れていると思います。日本の企業が抱えている多くの問題のポイントは、こうしたプロフェッショナリズムの欠如ではないでしょうか。

行動を変えれば
意識も変わる

 冒頭に出てきた記事に戻りましょう。同記事で鈴木選手はこうも言っています。

「一日、一日が勝負なんです。ほんの一瞬も、無駄に過ごしてほしくない。プロとして生き抜くには必要なことですね。そうすると少なからず行動が変わってくるんです」

 人間はそう簡単に意識を変えることはできません。性格はさらに変わらない。もっとも最先端の研究では性格も変わるらしいという話も出てきていますが、基本的には変えづらい。

 では、私たちが変えられるものは何かというと行動です。半信半疑でも、やってみようと決意すれば、行動は変えられます。行動を変え継続すると、習慣にすることができます。習慣にすれば、その習慣によって少しずつ意識は変わります。そして意識が変われば、行動は自然と強化されます。継続的な行動がいずれは周りの環境をも変えていき、その環境変化が自分の性格にも少なからず影響を与えていく。そんな好循環が生まれるはずです。

 だから、強い目的意志を持って、まず行動を変えてみるというのも私はプロの生き様だと思っています。

スキーマは経験によって
形作られるもの

「スキーマ」という言葉があります。これは先験的認知枠のことを言います。その人なりの、あるいは組織としての判断基準、モノの見方です。「先験的」とあるように、これは経験によって形作られるものです。

 人間は情報に基づいて行動しますが、その度に情報を論理的に処理して最適な行動指針を決定しているわけではありません。経験に照らして、「こういうときにはこういうことをすればいい」という固定化された認知枠に照らして意思決定をするというのがほとんどです。

 その意思決定の源泉となるスキーマを変えるための一つの方法が、「無理やり体験法」です。通常は知識を基に、態度形成が行われ、決定の上で行動するわけですが、とにかく無理やり行動してしまう、あるいは行動させることで、態度形成を変えてしまうという方法です。「騙されたと思ってとりあえずやってごらん」と言いますが、まさにこれです。行動先行型の意識改革と言えます。