新刊『世界記憶力グランドマスターが教える 脳にまかせる勉強法』では、脳の仕組みを活用し、4回連続記憶力日本一、日本人初の記憶力のグランドマスターになった著者による世界最高峰の勉強法を紹介していきます。記憶力が左右する試験、資格、英語、ビジネスほか、あらゆるシーンで効果を発揮するノウハウを徹底公開します。

スピードを優先して、早く全範囲の勉強を終わらせ、それを何回も繰り返す

 どのような復習が勉強を進めていくにあたって効率的なのか、皆さん知りたいことだと思います。

 範囲が限定されている勉強をする場合、「鉄則」といってもいいぐらいの進め方があります。それは、理解度は二の次にして、とにかくスピードを優先して、できるだけ早く全範囲の勉強を終わらせ、それを何回も繰り返す方法です。

 もし今のあなたの勉強の進め方が、「うさぎとかめ」でいうところのかめタイプ、要するに着実に物事を進めなければ気が済まないタイプだとしたら、ただちにスピード優先のうさぎタイプへの転向をおすすめします。

 その進め方だと、勉強が雑になるような気がして、本当に覚えられるのか不安になるかもしれませんが、最終的な記憶の定着度で判断すると、これが一番効率的な進め方だといえるのです。

 勉強における記憶の定着度とは、ペンキ塗りのようなものと考えてください。

 壁にペンキを塗るときには1回で塗り終わることはありません。なぜなら、一度ではところどころムラができてしまっているからです。

 そのため完成までには、何度もペンキを塗り重ねて厚みを増す必要があるのです。
勉強の記憶も、これと同じことがいえるのです。

 わかりやすい例として、今ここに新しく英単語を覚えようとしている学生が二人いるとしましょう。一人をAさん、もう一人をBさんとします。

 二人が覚えるのは同じ100個の英単語とします。

 Aさんは、その100個の英単語を4時間かけてその日一日だけで覚えたとします。それに対してBさんは、一日1時間の学習時間で4日かけて覚えたとします。覚えるのに使った時間は、どちらもトータルでは4時間です。

 仮に覚えた直後に記憶のテストをしたとすると、その時点では二人の記憶量には差はありません。

 ところが、しばらく時間が経過した後でテストをしてみると、4日に分けて学習したBさんのほうが思い出せる量が多いという結果になるのです。

 これは記憶に関する脳の性質であり、薄い記憶を何回にも分けて塗り重ねたほうが、じっくり時間をかけて一度で覚えるよりも忘れにくい強い記憶となった、つまり記憶の定着度が高かったことを示しています。

 ただし、ある条件を考慮しないまま進めてはいけません。

 その考慮すべき条件とは、「勉強範囲の広さ」、すなわち「勉強の全体量」です。

 学校の定期試験ぐらいならば、問題はないのですが、入学試験、資格試験などを考えた場合、勉強しなければならない範囲はかなり広いものとなり、勉強内容のボリュームも大きくなります。

 このような広い範囲を、先ほどの方法で進めるとどうなるか考えてみましょう。

 スピードを重視して、記憶の定着は後回しで全範囲を進めたとします。

 繰り返すことにより記憶を厚くしていくのだから、1回での記憶は薄くていいはずなのですが、範囲がとても広い場合、この一度の記憶があまりにも薄すぎるのです。

 記憶というのは急激に減っていくものです。

 いくら薄い記憶を塗り重ねて厚くしたほうが強い記憶になるとはいえ、1回での記憶があまりに薄すぎる場合、厚みを増すにはものすごくたくさんの回数を繰り返さなければならなくなります。

 このように範囲が広い勉強の場合には、このやり方で進めるとかえって非効率になってしまう可能性があるのです。

 では、範囲が広い勉強をする場合にも、このスピード重視の考え方を活かす勉強法はないものでしょうか。

 その答えは、私の参加している記憶競技にあったのです(次回につづく)。