その販売員が接客につくと、いつの間にかお客様が多くのものを買っており、しかもそのお客様もいい買い物をしたという大変な満足を感じているという「カリスマ販売員」がいますね。
一体その販売員は、どういう接客をしているのでしょうか。
4月13日にダイヤモンド社から発売される『売れる販売員は似合わないものを絶対に売らない』から、その秘密に迫っていきます。
教えてくれるのは、多くの販売員を店長に昇格させてきた、接客アドバイザーの桐山知佳さんです。

「売れる」ために必要なのは、商品ひとつにつき3つ、良いポイントを考えておくことだけ

お客様に一生懸命説明しても、どれだけ接客技術を磨いても、あることを大事にしないと商品は売れません。それは、その販売員の「信頼感」です。

商品が売れない時に起こっていることは、「お客様に何とかして買ってもらいたい」という販売員の下心が垣間見えていることです。
販売員は、もちろん「売るためのノウハウ」を磨きます。
しかし上辺だけのテクニックに偏ってしまった時に、陥るのは「中身のない接客」です。それはお客様にとっては、「ただ買わせようとする接客」なのです。

店長として、とある店に赴任した時の私の失敗です。
その店は、新人のスタッフばかりでした。
その時の私の口癖は「それじゃ売れないね」。
すると、素直な新人スタッフたちは接客を売れる、売れないで判断するようになりました。
そうなってしまうと、どういう言いまわしをすれば買ってくれるのかばかり考えることになり、お客様の気持ちが存在しなくなってしまいます。
例えば似合ってもいないのに、お客様が気に入っていそうな方を「似合っていますね」と言ったり、サイズが違っているのにそれを言わなかったりなど、その場その場で買ってくれそうな商品を勧めるテクニックを重視するようになりました。

これは「売れる、売れない」を第一に気にすることの、明らかな弊害です。こうなってしまうと、販売員としてのスキルは身につきません。

ある日、スタッフがお客様に対し商品提案をするところを見ていると「こちらの商品はすごく着心地がいいんですよ」と言ったきり、固まってしまいました。
横から見ていた私は「えっ、他にもいいところがたくさんあるのに!」と思い、そこで失敗に気づいたのです。
「売る」という気持ちはもちろん大切です。

でも、それよりもっと大切な、初歩の初歩は、目の前の商品のことについて、いいところをたくさん知っておくことです。

そうすることによってはじめて、その商品がどれだけお客様にとってお勧めなのかを伝えられることができます。
そのためには商品一つ一つ、コーディネート一つ一つに対して自分の言葉で語れないといけません。

販売員の仕事を「お客様に買わせること」だと思ってしまうと、買わせるためにあの手この手でおだてたり、調子の良いことをいかに言うか、だけを考えてしまいます。
でも、販売員の本当の仕事は「買わせる」のではなく「お客様が自然と買いたくなるようにすること」なのです。
何故なら、買うことを選択するのはお客様だからです。
そのために必要なのは、一にも二にも、商品の良さを知っておくことです。

本当にやるべきことはまず、閑散時間に商品を手にとって、その商品の良さを考えることです。
自分が実際に手に取ったり、着たり、使ったりしながら、意外だと思ったこと、すごいと思ったこと、発見したことを考え、言葉にしましょう。
目安はひと商品につき3つ考えておくとよいでしょう。
たとえば、スカートなら

・ウエストの位置が高いので足が長く見える
・履くと上品な雰囲気が生まれる
・シワになりにくい素材だ

靴なら
・先が細いので、ヒールではないのにきれい目な印象になる
・きちんと感が出せる
・靴ずれがしにくく、履いて走れるほど

といった感じです。
いちばん重要な「商品説明」の第一歩が、「商品ひとつについて、3ついい点を言えるようにする」ということです。

自分が接客を受けたときに、販売員の説明に対し
「本当にこの商品が良いと思っているな」
と感じたら
「この人は、本気で勧めてくれてるんだな」
と信用度が上がりませんか?
そして、自信を持って
「お客様ならこれがおすすめです」
と言ってくれたら
「欲しいかも」
という空気が生まれます。
「買ってもらう」よりも、まず先に目の前の商品について、自分なりの考えを持つこと。まずそれを何よりも大切にしてください。