法律は合理性の塊、
伝える工夫も満載
第1条を除いて、法律には「どうして…、この法律を定めることになったのか」という部分がありません。淡々と手段(措置)に当たる部分が規定されているだけです。「どうして…」に当たる部分は、提案理由として法案提案者から述べられます(法律案の最後のページにこの提案理由のダイジェスト版が「理由」として付されています)。ただ、その提案理由も、実にあっさりしたものです。提案理由にとらわれず、多くの政党、議員に賛成してもらいたいからです。
法律には、制定の理由や背景となる事件などが十分示されていないからこそ、目的規定をヒントに、立法事実まで視野において、条文を理解する必要があるのです。事件などと解決策をつなげる合理性は法律の命です。こうしたことを探ることで、自然と合理性や論理性が鍛えられます。
考えてみれば、行うべき措置とその理由を切り離すことも、合理的に説明するひとつのテクニックといえるかもしれません。
「今季、営業部の活動は以下の点を重点的に行おうと考えています」として、活動の方針を述べたあと、「次に、こうした活動が必要となった背景についてご説明いたします」といった感じでしょうか。
著書である『法制局キャリアが教える 法律を読む技術・学ぶ技術』、『法律を読むセンスの磨き方・伸ばし方』でも触れましたが、法律には、こうした合理性を追求するテクニックが満載です。共通することを先にまとめて述べる「パンデクテン方式」、時の順を意識した条文の組立てをする「時系列の支配」、原則を述べた後の例外を規定する「原則・例外のルール」などがそれです。内容の合理性ばかりでなく、どうすれば合理的に伝えることができるか、そうした「くふう」も秘められています。
リーガルマインドが身に付けば、仕事がさらに豊かになるはずです。