今後アジアのリーダーとなる国はどこなのか?

 アジアやヨーロッパにおける政治や経済、そして安全保障問題、という大きなくくりの現代史としてそこそこ読み応えのあるのが、マイケル・オースリンの“THE END OF ASIAN CENTURY”だ。著者はイェール大学で教鞭をとった後、シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所の日本担当のディレクターを務める人物。日本やアジア諸国の安保問題についてウォールストリート・ジャーナル誌や『フォーリン・アフェアーズ』誌に寄稿している。

 日本のことを含めたテーマで海外の著者によって書かれている本となると、とかく日本に関わる部分だけを取り上げ、著者が親日派かどうか、あるいは日本のことを批判しているかが焦点になりがちだ。この本ではインドも含めた環太平洋のアジア諸国を広く捉え、北米やヨーロッパに代わって世界経済を牽引する力となりえるのか、なぜアジアにはEUのような組織が生まれないのか、TPPもずるずると締結されないままで、これからアジアのリーダーとなる国はどこなのかといった視点でアジアを語っている。日本国内に限定した視野では見えてこないストーリーが読み取れる。

 タイトルの「アジア世紀の終焉」と聞くと、悲観的な内容を想像するが、オースリンは一貫して安倍政権の経済政策を評価しており、その成果が芳しくないことに懸念を持っている。彼が「終焉」を予測しているのは中国やインドの経済成長だ。

 オースリンによれば、アジアとしてのいちばんの問題は、国境を超えた紛争が起こりそうな場合に、欧州におけるEUのように、これを解決するアジア全体が参加する組織が存在しないことだという。つまりASEANは東南アジア諸国限定だし、将来TPPが締結されたとしても、経済活動に限定された協定なので紛争解決はできない。オースリンは、アジア全体の安全保障イニシアチブをとるべき国は昔も今も日本なのだと期待しているようにも伺える。