「今やらなきゃいけないことは何?」と自問自答しなければいけない

坂東眞理子(ばんどう・まりこ)
昭和女子大学総長・理事長。1946年、富山県生まれ。東京大学卒業。1969年、総理府入省。内閣広報室参事官、男女共同参画室長、埼玉県副知事等を経て、1998年、女性初の総領事(オーストラリア・ブリスベン)。2001年、内閣府初代男女共同参画局長。2004年、昭和女子大学教授を経て、同大学女性文化研究所 所長、2007年より同大学学長(2016年3月まで)。2014年より理事長(学長兼務)、2016年に総長(理事長兼務)となる。著書に『女性の品格』(PHP新書)、『女性リーダー4.0』(毎日新聞出版)他、多数。

坂東 「話はちょっとずれますけど、最近、『忖度』っていう言葉が話題になっていますでしょ。これは、強力な人の意向に従って行動したほうが身のためだと。力を持っている人に刃向かっては、自分のような小さな存在は消されるだけだということですよね。そうやって自己規制するのが賢い生き方だと…」

堀江 「でも、それだと、逆に大変になっちゃうことのほうが多いですよね」

坂東 「戦争の時だって、みんな、こんなことしていいんだろうかと考えた人が、きっといたはずなんですけど、自分にはその流れを押しとどめることなんてできないと諦めて、何も言わなかったわけですよね。でも、それじゃいけないんだと。自分で考えて自問自答して、『今やらなきゃいけないことは何だろう?』と考えなければいけないんだと思いますね」

堀江 「坂東さんの本を読むと、ご自身に語りかけてるような言葉が、いっぱい出てくるんですよね。私の推測ですけれども。それで、その言葉を取り入れたら、どういうふうに自分の思考は変わるかな、なんて思いながらご著書を読みました」

坂東 「堀江さんは、他の人の本を読むときに、いつもそんなふうに考えているのですか?」

堀江 「そうですね。その人の本質的な考え方とか、ものの見方のところをすごく興味深く意識して読みますね。たとえば、がんになった時なんかもそうだったんですけど、逆境に対して、この人だったらこういう考え方をするだろうなとか。いろんな人たちの考え方をすでに学んでいたので、正直、がんと宣告されたときも、ほとんどへこまなかったですね」

坂東 「それは、本当に希有な例ですよね。がんを宣告されると、みんな、最初、ものすごく怒って、次に落胆してと、お決まりの心のパターンがあるのに」

堀江 「他人の思考を取り入れると、ものの見方が変わるのを実感しています。たとえば、がんというものを知った時に、何か権威のある人の言葉をそのまま鵜呑みにするという習慣ができちゃっている人は、先生から、あなたはがんなんです。たとえば余命半年ですと言われた瞬間に、『余命半年なんだ!』というふうに自分で調べずに思い込んでしまいます。でも、優れた方というのは、何か問題が起こった時に、あらゆる可能性を考えて、人によって意見とか見解が違うということも、前提としてわかってるので、一人の先生から言われたことに対して、これが本当だと決めつけずに、『本当なのかな?』という疑問が出てきます」