マッキンゼー・アンド・カンパニーなど要求水準の高いビジネスの現場を渡り歩き、「可能な限り優れたパフォーマンスを実現するためにはどうすべきか?」と試行錯誤してきた著者が提案する、ビジネスパーソンのためのまったく新しい学習法『新・独学術――外資系コンサルの世界で磨き抜いた合理的方法』。佐藤優氏が「ビジネスパーソンにとって本当に役に立つ最良の書」と絶賛するなど話題の同書より一部を特別公開する。

周りの人はどういうときに「この人はダメ」と思うのか?

 一瞬で「この人は賢い」と思わせる人がいる一方で、少し話しただけで「この人はダメだな」と人に思わせてしまう残念な人もいます。第一印象でそんな印象を与えてしまったら、その後イメージを覆すことはなかなか難しいものです。

 人にそのように思わせてしまう特徴には、次のようなものがあります。

(1) 批判を恐れる
(2) 会議で黙っている
(3) 「難しい」と「わからない」を連発する

 仕事ができる人というのは一般に敵が多いものです。私自身、いくつもの会社で、敵は多くても仕事を評価されて出世している人を何人も見ました。

 では、なぜ敵が多いのに出世できるのか?

 それは、敵が多い人とは裏がえせば批判を恐れず、自分のポジションや主張を明確にできる人だからです。主張なきところに、前進はありません。

 一方で、嫌われまいと「批判を恐れる」人、自分の主張をせず、誰にでもいい顔をする人がいます。こういう八方美人タイプの人は、失敗は少ないかもしれませんが、反面、高い評価をされることもあまりありません。長いスパンで見ても出世は遅くなりがちです。

 彼らと話しても議論にならず、話が前に進まないからです。

 リーダーとは、「いい人」のことではありません。いざというときに方向性と手段を示せる人のことです。

 私がマッキンゼー時代に最も感銘を受けたパートナーのセリフがあります。それはコンサルタントチーム内の議論も煮詰まった深夜、クライアントの進めたい方向性とは真逆の提案に話がまとまったときのことです。

 そこにいたコンサルタントのだれもが、「ここまでクライアントの考えに逆行する提案を本当にすべきだろうか」と戸惑いを感じました。そのときパートナーは次のように言いました。

「これを提案したらクライアントは反感を覚えるかもしれない。クライアントを失うことにもなるかもしれない。でもわれわれコンサルタントがベストを尽くした結論なら、私はチームの責任者として後悔はない。時間がかかるかもしれないが、数年後に『マッキンゼーがあのとき言ってくれたことは正しかった』とクライアントにわかってもらえると私は信じる」

 好かれるかどうかでなく、真にクライアントの価値になる提案を行う――それがプロフェッショナルの職業倫理であると、私はこの発言を胸に刻みました。

 たとえ間違ったとしても、ベストを尽くしたうえで何らかの決断をできる人、そんな人をリーダーと呼ぶのだと思います。

 そもそも世の中に100%正しい解などありませんから、当然、「100%間違った決断」ありません。間違いかどうかは、歴史が後付けで解釈することです。