日経平均株価は過去3カ月弱の間、1万9500円から2万0300円までの2万円前後のボックス圏相場を続けている。今年の日本株の売買の70%程度を占める海外投資家の動きを見ると、6月末現在わずかな買い越しにとどまっている(図参照)。
前回の本欄(6月24日号)で述べたように、米国景気のピークアウト懸念とドル円相場に方向感がないことが、海外投資家が日本株について煮え切らない要因だろう。
海外投資家は今年3月には現物と先物を合わせて2兆円売り越していたが、北朝鮮情勢に対する懸念が薄れた5月初旬には、わずかに買い越しに転じるところまで日本株を買い戻した。しかしその後は動きが鈍くなり、株式相場はピタリと動かなくなってしまった。
今年は日本銀行のほぼ一手買いで、売り手は個人の一手売りといえる状況である。1万9000円を割れる水準では日銀のETF(上場投資信託)の買いが積極的に入り、2万円を超える水準では日銀のETF買いの頻度が低下し、個人投資家の売りが入るという構図である。
現時点では、特定の好業績銘柄に注目が集まっている。ボックス圏相場ではこうした現象が起きやすい。というのも、相場が動かないために一部の値動きが良い銘柄のパフォーマンスがファンドの成績を左右しやすい。機関投資家などのプロ投資家は、株価が上がって割高な銘柄でも、相場がボックス圏にいる間はこうした銘柄を売却することが難しくなる。
具体的には、図が示しているように高PBR(株価純資産倍率)銘柄が買い進まれている。この高PBRと低PBRの差は、実は昨年の夏にも大きく拡大し、本欄でも昨年7月30日号で取り上げた。そのときは、業績悪化不安から低PBR銘柄が大きく売り込まれた。
その後低PBR銘柄は大きく値を戻したが、今回は高PBR銘柄が買われている。高PBR銘柄は多くの場合、業績が安定していて最近の業績も好調であることが多い。そうした銘柄は、不安があるときには避難所的な役割を果たす。
手掛かり難と下値は日銀が支えてくれるという安心感から、今回は、分かりやすい業績安定銘柄と好業績銘柄に買いが集中しているように見える。こうした乖離は、昨年もそうであったが行き過ぎると投資チャンスになる。
今回は、株価が最近日経平均を大きく上回って上昇した銘柄、例えば、PBRが高く来期のPER(株価収益率)予想も高い銘柄を一部売却し、ここ数年株価が低迷しているPBRが低い、海運、銀行、サービス業などに資金を振り向けることを検討するのがよいのではないか。
(UBS証券ウェルス・マネジメント本部ジャパンエクイティリサーチヘッド 居林 通)