児玉氏の発言のポイントをまとめると次のようになる(6人全員の速記全文が国会のホームページで公開されている<★注③>)

児玉龍彦教授 発言のポイント

① 福島原発から放出された放射性物質の総量がわからない。未公表のままなのはおかしい
② 熱量からの推計放出量は広島原発の29.6個分、ウラン換算で20個分
③ 原発からの放射性汚染物は原爆からのものよりも長く、多く残存することになる
④ 食品、土壌、水の検査に最新鋭のイメージング測定器を投入し、抜本的に検査を改善すること。日本の科学技術力で可能なことで、まだまったく行われていないことに、私は満身の怒りを表明する
⑤ 内部被曝では、ミリシーベルトに換算しても無意味。例えばセシウムは尿管上皮や膀胱に集まるため、集積点を計測しなければ意味がない
⑥ 放射線が特定の遺伝子を損傷し、20-30年後にガンを発生させることがわかってきている。疫学調査で統計学的に解明できるまでに20年とすれば、間に合わない。
⑦ 学問論争(筆者注・専門家の意見の相違)に対して厚生労働委員会(政治家)が結論を出す必要はない。国民の健康を守るために何ができるか考えて。広島原爆の20倍という膨大なセシウム137が飛散している事態に対して、積極的な対応を願いたい
⑧ 住民が戻る気になるのは、行政が測定し、除染している地域だ。何もやらずに「安全だ」といわれても信頼できない。数値ではなくて、最新の技術で測定し、最新の技術で除染に全力をあげる自治体が安心なのだ

 児玉教授の発言で驚いた点は、まず⑤と⑥で、内部被曝の影響を分子生物学のレベルで検証していることだ。遠い将来に疫学調査を始めてから統計学的優位性を検証する、という考え方が陳腐に思えた。

 次に、⑦である。何ミリシーベルトまでは安全、というような議論も馬鹿馬鹿しくなる。分子レベルの観察こそ重要だとわかった。

 最後に⑧。住民が本当に安心できるのは、「さまざまなリスクを総合的に判断せよ」と言う経済学を知らない放射線専門家の助言ではなくて、行政が最新鋭の技術で計測・除染する地域こそ安心だという指摘である。児玉教授の発言は、多くの人々の目を見開かせてくれたのである。

※「福島原発震災――チェルノブイリの教訓」シリーズの過去記事はこちら

(1)チェルノブイリの教訓を生かせ
(2)
子どもの甲状腺被曝検査の継続を
(3)
ソ連政府はどのように収束させたのか
(4)
汚染食品のデータをどう読むか
(5)
「クリーンエネルギー原子力推進」をだれが言い出したのか
(6)
学校の放射線許容量はなぜ迷走しているのか
(7)
菅首相の「浜岡原発停止要請」は唐突ではない
(8)
足柄のお茶はなぜ汚染されたか 関東平野の放射能汚染状況
(9)
旧ソ連政府は現在の日本政府より住民の安全サイドに立っていた
(10)
実態がわかってきた関東平野の放射能汚染
(11)
除染を急げば大幅に放射線量は減少する
(12)
汚染水漏洩を防止する地下遮蔽壁はいつできるか
(13)
東葛地区(千葉県)の放射能汚染、その後の対策はどうなったか