有効性が実証された応用行動分析に基づく治療
ロヴァスが提唱する最も有効な治療法は、2、3歳の幼時からスタートさせる、応用行動分析に基づく、週40時間2年以上の1対1の早期高密度行動治療である。米国保健社会福祉省(1999)は、『メンタルヘルス:公衆衛生局長官報告』において、「応用行動分析の方法は、不適切な行動を減らし、コミュニケーションと学習と適切な社会的行動を増やす上で有効であることが、30年に及ぶ研究によって実証された。ロヴァスらは、よくデザインされた心理社会的介入を行い、19人の自閉症児に集中的な行動療法を2年間適用して、2つの比較群と比較した。
実験群は小学1年時と児童期後期と青年期にフォローアップされ、ほぼ半数が通常の教育に参加できていたが、比較群で同様の改善を示したものはほぼゼロだった。その他の多くの研究グループがロヴァス・モデルの反復再現を少なくても部分的に実現している」と評価した。
ロヴァスは、「治療密度」(トリートメント・インテンシティ)という変数に着目し、それが治療の成否を決定する最も重要な変数の1つであることを実証した。治療とは患者さんが週1回クリニックに出かけて、1時間程度診てもらうことである、これが私たちの常識である。ところがロヴァスの方法は週1時間どころか40時間もの高密度治療を早期に最低2年以上適用するという型破りなものだった。当然週40時間の治療は1人ではできない。5人以上のセラピストがチームを作り、粘り強く交代して指導し続けなければならない。子どもに毎日クリニックに来てもらって治療することは不可能なので、セラピストの側が家庭に出向いて出張治療する。
まさに児童臨床の常識を破る革命である。この型破りな治療のノウハウを体系的かつ実践的に詳述した書物が、この『自閉症児の教育マニュアル――決定版・ロヴァス法による行動分析治療』である。
私たちは、本書に基づいて、自閉幼児の早期高密度治療5カ年研究を行った。その成果として、『改訂新版・こどもの上手な教え方』、『こどもの上手な教え方:課題集』、DVDマニュアル『子どもの上手な教え方』、『自閉症児の行動分析療法』を、NPO法人教育臨床研究機構から出版した。補助教材として活用していただければ、自閉症児の行動分析治療を正しく実践することができる。