「mamma店長」はどうやって喧嘩をさばいたのか?
では、ここでいう「空気」とは何か? もちろん酸素や二酸化炭素のことではありません。対話の蓄積から場に生まれる特別な空気のことです。
一例を見てみましょう。以下は、イタリア料理店の店長さんが運営するサークルで起こったメンバーどうしのいざこざを、店長が見事に収める様子です。さっそく観察してみましょう。
そこは「ワインとカクテルのエトセトラ」というインターネット上のサークルです。主宰者は「mamma店長」という方で、下記のような自己紹介をしています。
イタリア料理店の店長をやってます。元バーテンダーです。
酒、ワインの話で、情報交換やムダ話ができればいいなあ、と思っております。
私はボルドー派ですが、イタメシの店長をやっているおかげで色々飲む機会があります。
カクテルをお好きな方も大歓迎です。最近ではテヌータ・ディ・ヴァルジャーノ99が一番うまかった!
さて、そのサークルにメンバーからメッセージが投げ込まれました。
FROM: カプリ
私の勤めているスーパーにて、スペイン産とイタリア産のスパークリングワインのポップがシャンパンになってました。(゜o゜;)…しぇ~。
早速直すよう話したら、素人には分からないからそのままでいいと、片付けられました。
とあるイタリア料理店のソムリエさんも買い物にくるのに、恥ずかしい限りです。
案の定指摘されてしまいました…。あ~ぁ、知~らない!
この投稿に他のメンバーが呼応します。
From: 春
こんなお店では、
バックヤードの管理も悪そうなので
買い物したくないなぁ(^^;。
しかし、この投稿にカプリさんは激怒してしまいます。
From: カプリ
春さん、たまたま話をした人が酒コーナー担当ではなくワインの知識が
なかっただけのことです。
春さんみたいな人に、買い物は絶対してほしくないです。
とうとう喧嘩が始まってしまいました。
と、ここで主宰者のmanma店長が現れます。その見事な手綱さばきをご覧ください。
From: mamma店長
皆様、この件についてはカプリさんと春さんに個別にメールを送らせていただいております。
サークルオーナーとして、良かれと思われることはできるだけさせていただきます。
一つ言えることは、当サークルは雰囲気がいい、居心地のよい場所でありたいと常々考えています。
善処いたしますので、もう少々お待ちくださいませ。
mamma店長
インターネット上で編み込まれた人間関係は、そこに不文律のようなものをつくり出します。人間どうしの関係から、その場所に生み出される暗黙のルールが「空気」です。
新参者が主旨と違うふるまいをした場合には、常連の利用者たちが「ここはそういう場所ではありませんよ」と注意してくれるようになります。企業が直接入っていかずとも、自律的な管理に任せることができるようになる。この空気による牽制によって、10万人規模のコミュニティをたった1名の担当者で回している事例もあります。