完全集中の「フロー状態」に入るには?
「没頭する」とは、目の前の作業に完全に集中することを意味する。
ある作業に完全に集中すると、私たちは「フロー」の状態に入る。「フロー」とは心理学者のミハイ・チクセントミハイが著書『フロー体験 喜びの現象学』(今村浩明訳、世界思想社)で紹介した考え方だ。
1つの作業に没頭すると「フロー」の状態が生まれる。すると、その行為に完全に集中し、ふだんよりずっと高い能力を発揮できるようになる。
どんなときに没頭しやすいかは、その人の関心事や行動スタイルによって変わってくる。絵画や写真などのビジュアルアート、スポーツ、音楽、ダンス、料理、読書、ハイキング、手工芸、ボランティア活動、ゲームといった勝負事など、人によってフロー状態に入りやすい活動は異なる。
たとえば、切手収集をしているときに、もっともフロー体験ができるという人もいるかもしれない。
だが、タスク・スイッチングをしていると、「フロー体験」をできる可能性がゼロになる。
マルチタスクは「モンキーマインド」を体現する。「モンキーマインド」という言葉は仏教の教えに由来し、落ち着きがなく、せわしなく、気まぐれでむらがあり、混乱していて、自制のきかない精神状態を指す。
そうした精神状態は「フロー」や「没頭」した状態の正反対だ。このことからも、フロー体験をするためにはシングルタスクを実践しなければならないことがわかる。
1つの作業に没頭すると、創造性が高まり、自信をもてるようになり、すばらしい成果をあげられるようになる。1つのタスクに専心すれば、次のような結果が生じる。
・エネルギーが増し、幸福になり、安心感を覚える
・積極的になり、良質なユーモアを発揮できる
・充実感、達成感を味わえる
また、一度に1つの作業に没頭していると、次のものを撃退できる。
・ストレス、プレッシャー
・自己不信、不安
・倦怠感、注意散漫
何かに没頭すると、自然にシングルタスクをすることになる。
私の同僚は、尊敬している人物が隣の席に座り、こちらの仕事ぶりに目を光らせているところを想像し、気を引きしめているという。
『SINGLE TASK 一点集中術』では、シングルタスクに取り組む能力を高め、「フロー」状態に入れるさまざまな方法を紹介していく。