ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁は来年2月に任期を迎える。次期、第4代総裁は、ラテン系のイタリア中銀総裁だったドラギに代わって、ゲルマン系のドイツ連邦銀行(中央銀行)のバイトマン総裁が就任する可能性が高くなってきた。様々な筋から情報が入りその流れが見えてきた中で、ドラギは引き継ぎに入ったためか、ドイツ的な「量的緩和からの脱却」(インフレ抑制重視)の発言が増えてきている。
筆者は「歴史」こそ経済学と考えている。たとえば、欧州の経済などは分かり易い。その経済政策を考えるときに大事なのは「インフレが最大の経済的課題である」という考え方がベースになっているということだ。米国では大恐慌を経て雇用が重視されるようになったように、欧州ではインフレが経済における大きなトラウマなのである。
20世紀、ドイツは第一次世界大戦後のヴェルサイユ講和条約の賠償金が払えず、紙幣を増発した。さらに労働者がゼネストも実施したためモノが減少し、モノとお金のバランスが大きく崩れて1兆倍ともいわれる“ハイパーインフレ”が発生、社会が大混乱した。そこにナチスが登場し、欧州最大の悲劇である第二次世界大戦が発生するのである。
このことは、特にナチスが登場したドイツでインフレを嫌悪する傾向のベースとなり、共通通貨ユーロ導入をはじめ、平和を最優先するキリスト教をベースとした欧州合衆国への動きにつながっている。