時流を見極める観点1 政治
規制緩和はカネになる

 事業創造は政治から影響を受ける。「政策に売りなし」と言われるように、政治、特に規制緩和によって新しい事業機会が生まれることは多い。ネット証券の解禁、電力自由化など、さまざまな新しい事業が規制緩和から生まれてきた。

 2017年現在、広がっている分野はフィンテック(金融分野のITテクノロジー)やヘルステック(健康分野のITテクノロジー)だ。「ブロックチェーン」という技術によって仮想通貨が普及し、通貨発行権が国家以外に広がっている。おカネの本質は、円やドルなどの紙幣・通貨そのものにあるのではなく、信用の母体と使っている人の数で決まる、という真実に多くの人が気付き始めている。仮想通貨や時間通貨など、おカネの形はこれからどんどん変わっていくだろう。

 医療についても革新が起こっている。日本の医療費は平均して高いものの、その分進んでいるというわけではない。先端医療の導入に慎重であり、ほかの先進国と比べて普及が遅れている。特に、病気以前の状態を取り扱う「予防医療」の分野で顕著だ。従来の病気になってからの治療はもう時代遅れだろう。これからは予防医療が医療の中心になるだろう。

 アレルギー、腸内環境、がんなどのあらゆる分野において、各個人の特性に合わせた「病気以前」の状態を把握し、食事・運動・睡眠・投薬(サプリ)によって発病を防ぐのが当たり前の世の中になる。その意味では保険に高いお金をかけるよりは、保険外だが先端医療である検査にお金をかけたほうが、よっぽど効率的だと多くの人が気付き始めるだろう。

 また、看護・介護業界の規制の変化は不可避である。少子高齢化社会が進行するにともない、介護人材の不足が指摘されるなかで、海外からの労働力の充当を目的としたビザの緩和が考えられる。

 このような政策に伴う規制緩和が始まったあとになってから、事業準備を進めようとしても手遅れである。なぜなら、ほかの事業プレーヤーも規制動向を注視しているためである。日頃より政府の方針や行動に意識を払っておく必要がある。より有効なのは、みずからが規制を緩和させるために動くロビイストとなることであろう。新しい産業を興そうとするロビイストは、今後日本で増加していくと考えられる。