親の死後、金融機関から突然の督促状が……知られざる身内の借金をどう処理すべきか

いま、遺言や相続で悩まれている方が増えています。人それぞれ、いろいろな問題を抱えていますが、遺言があった場合となかった場合では、どう違うのでしょうか。ユニークな遺言の書き方を提唱する『90分で遺言書』の著者・塩原匡浩氏に、遺言のポイントを聞く。

遺言がない!
借金の相続はどうすればいいのか

 冬の寒い日に、同級生から久しぶりに電話がありました。

「知り合いで困っている人がいる。どうしても会って相談に乗ってほしい」

 こう言われて、お会いしたのが倉科さんという壮年の男性です。倉科さんは東北から東京に出てこられ、20年ほどたつそうです。ご親族は東北に住むお父様おひとりだけで、ずっと疎遠のようでした。

 先日、そのお父様が亡くなられ、親族だけの密葬をされたそうです。財産は東北にある実家の不動産だけ。遺言はなく、相続手続きは現在まで何もされておらず、郵便転送届だけは出されたそうです。

 ある日、倉科さんに金融会社からお父様宛の書面が転送されてきました。それには、債務返済を期限までに行うことを促す内容が書いてあったそうです。

「いや、寝耳に水というか、父の借金のことはまったく知りませんでした。借金は自分には関係ないと思いましたが、法定相続人は自分だけなので、私が返済しなければならないと覚悟しています」

 そう話す倉科さんの額には脂汗がじっとりとにじんでいるのがわかりました。

 私は倉科さんに熱いお茶をすすめながら、次のように説明しました。