米国のプロゴルフ界の試み
Bさんの回答を聞いて、「なにも知らない人がデータだけを見て“頭でっかち”なことを言い出した」「日本のプロ野球界の未来が明るいはずがない!」と言う方もあるかもしれません。しかしBさんの考えに基づいて、次のようなビジネスを企画したらどうでしょう?
◇「プロ野球の黄金期・スペシャルDVD」シリーズの発売
第1巻:天覧試合ホームランなど長嶋茂雄の名場面集
第2巻:王貞治、世界記録本塁打の直前100打席の完全収録
第3巻:野村克也の“つぶやき”名場面集
第4巻:星野仙一、熱血名場面集
第5巻:その他、往年の名選手や名試合を集中収録!
◇阪神優勝シーズン完全網羅DVDシリーズの発売 ~掛布、バース、真弓らが活躍した1985年を含む、各阪神優勝年の阪神戦をすべて収録!~
◇ジャイアンツV9時代の試合を延々と流すケーブルテレビチャンネル
◇イチローや野茂など、米国メジャーリーグで活躍する日本人選手が日本でプレーしていたころの名場面DVD
(以上、選手名すべて敬称略)
これらを買いたい、見たいと思うシニアや中高年のファンはそれなりの数、存在していると思いませんか?Bさんが指摘したように、それらの人達はお金をもっていて、ヒマで、エンターテイメントを強く求めているはずです。
じつはこれは、米国のプロゴルフ界がずいぶん前から取り組んでいるビジネスです。シニアプロのトーナメントを開催し、往年の名選手が登場します。それらの選手が若かりしころの試合のDVDやケーブルテレビチャンネルでの放映も人気です。
プロスポーツがエンターテイメントとして巨大な市場を形成する米国でも、ゴルフは、若いファンをバスケットボールやアメフト、アイスホッケーなど、よりスピード感を楽しめるスポーツに奪われがちです。
そこで彼らはシニア層向けのビジネスも積極的に展開しています。米国でも日本同様、シニア層は若年層よりお金にも時間にも余裕があります。そして、自分が若いころにファンだった名選手を今でも応援し続けているというわけです。
さてここでもう一度、最初に出てきたグラフと、それを見てAさんが考えたこと、さらに留学生のBさんが考えたことを振り返ってみましょう。Aさんはグラフを見た瞬間に「日本のプロ野球界の未来は暗い!」と確信し、一方のBさんは「ファンの高齢化はむしろビジネスチャンスかもしれない」と考えました。
前述したように、この意見の差は、「Aさんがもっていた日本のプロ野球界に関する知識」からきています。Aさんはこのことに関して知識が豊富だったので、「新たに得た情報に基づいて考える前に、自分が以前からもっていた知識を口にしてしまった」のです。
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