最近、高校生に「経済学」の話をする機会が結構多い。母校でも進路指導の一環として何回か講義をした。「経済」という言葉は中国の古典に由来し、世の中を治め人民を救うという意味の漢語・「経世済民」(経国済民)の略語で、福澤諭吉先生らが英語ECONOMYの訳語としたのは有名な話だ。この「経済」という言葉が、高校生も含め、一般の方々には分かりにくいらしい。確かにそうかもしれない。
(駆け出しの筆者が言うのもおこがましいが)経済学は哲学(考え方)の一種であり、高校生に敢えて教えるときには、「お金という物差しを持った哲学(考え方)」と言うようにしている。要は“そもそもの考え方”なのである。
最近の金融市場における最大の注目点は、米国の中央銀行FRBの次期議長と副議長の布陣だ。現在の第15代議長ジャネット・イエレン(71歳)の任期が来年2月3日に切れる。副議長はフィッシャーが退任して以来空席になっている。しかも、手続きの関係もあり、10月末までに後任候補を選ぶ必要がある。
その過程で、タカ派(Hawk)・ハト派(Dove)という言葉が飛び交っている。金融政策において、タカ派とはインフレ(継続的な物価上昇)に対して厳しい見方をして、引き締め(利上げ)方向の考え方を持っている学者のことだ。一方、ハト派はタカ派の逆で、インフレに対して寛容な見方をして、景気を重視するような考え方を持っている。つまり、いずれも現代の経済学を研究しながらも“考え方”が違い、その考え方次第で景気の行方も決まる。端的な言い方をすると、タカ派が選ばれれば金利が上昇するというわけである。