TPP議論が一向に進まない本当の理由

 TPPは今や大きな政治問題となりつつある観がしないでもないが、関係者がメディアを含めて国語での議論をやめ、もっと算数で議論を行うようにすれば、市民の意見の集約は比較的早く進むのではないか。

 戦後のわが国は恐らく世界のどこの国よりも自由貿易の恩恵を受けて豊かになった国である。その日本が貿易自由化に大きな遅れをとっている。各国のFTA比率(FTA・EPAを発効・署名済みの国・地域との貿易額が貿易総額に占める割合)をみると、米国37.5%、EU 30%、中国22%、韓国36.2%に対して、わが国は17.6%しかない(今年8月時点)。このようなデータを見ると、TPPに限らず、ASEAN+3や日中韓のFTAをもっと積極的に推進すべきであることは、方向としては決して間違っていないと考える。

 情報が情緒的な国語に偏り、かつ錯綜しているにもかかわらず、TPP交渉参加に対するわが国市民の判断は概して健全である。日経電子版のアンケートによると、「プラスが大きい」66%に対して、「マイナスが大きい」は22%にとどまっている。また、日経新聞の世論調査によると、TPP交渉参加に「賛成」が45%、「反対」が32%であった(2011年10月31日 朝刊)。

 私たちは市民の判断をもっと信頼していいのではないか。国語のみでTPP反対のムシロ旗を上げ、駄々をこね続ける政治家等の姿を見ていると、ギリシャの政治家と二重映しに見えるような気がするのは筆者だけだろうか。

(文中意見に係わる部分はすべて筆者の個人的見解である。)