ダヴィンチ・ホールディングスが窮地に立たされている。東京・八重洲の「パシフィックセンチュリープレイス丸の内ビル(PCP)」のリファイナンス(融資の借り換え)をめぐって、期限までに融資延長交渉がまとまらず、ビルを手放さざるをえない可能性が濃厚になっているからだ。

 PCPは2006年に、同社が運用している通称・1兆円ファンド、カドベを通じて約2000億円で取得した看板ビルだけに、衝撃は大きい。

 ただ、ダヴィンチの発表では、影響は限定的。実際にPCPを保有している子会社の棚卸し資産評価減を137億円計上し、純損益で23億円の損失にとどまる。ノンリコースで借り入れているため、カドベも、担保物件を金融機関に差し入れれば返済義務を負わない。

 だが、現実は決して楽観視できない。今回、ローンがデフォルト(債務不履行)すれば、ダヴィンチ自体の信用が大きく傷つき、カドベが抱える他の物件のリファイナンスに金融機関がそっぽを向くのは必至。カドベ以外のダヴィンチ傘下のファンドにも当然、信用不安が及ぶ。そうなれば、3~20%程度とされるダヴィンチのファンドへの出資分が大きく傷つき、本体の資本を食い尽くすかもしれない。上場維持にも黄信号がともる。

 金融機関も返り血を浴びるが、それ以上に懸念されるのが証券化市場への影響。たとえば、PCPには、新生銀行をメインにメリルリンチなど6社が融資を行なっており、そのうち1120億円はCMBS(商業用不動産担保証券)として、投資家の手に渡っている。CMBSは市場全体で残高が4兆円近くあるとされており、PCPが、デフォルト続出や価格暴落の引き金をひきかねない。

 債権者団はPCPを1000億円前後で売却する方向で調整している模様だ。しかし「このご時世にカネをすぐ調達できるところがあるのか」(不動産会社幹部)との声も強く、不動産市況の低迷ぶりも投影している。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 鈴木洋子)

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