計画が思い通りにならなくてもすぐに負の評価を下さず
もう少し長いスパンで考えたほうがいい

 精神科の診療でも、計画を立てて治癒に導いていくことが一般的です。

 しかし、その患者さんの生活に予想外のことが起こり、医者として計画したスケジュールにずれが生じてしまうことがあります。

 こちらとしても、聞いた瞬間は「ええ? だって今週からそろそろリハビリに入る予定だったのに」と思ってしまうものです。

 しかし、あとになって考えると「それで良かった」「必要なことだった」「無駄じゃなかった」と思えることはいくらでもあります。

 そう考えると、計画が予定通り進まなくても、すぐに「足止めを食った」とか「マイナスになった」という負の評価を下す必要はないのです。

 過剰に考えるとオカルトっぽくなってしまうのですが、計画通りに進まない事態に直面したとき「変わり目」「チャンス」ととらえることも悪くないと思います。

 うつ病で診察室を訪れる患者さんのうち、初期の人ほど完治までのロードマップを気にされます。そんな人に私は、こんな言葉をかけるようにしています。

「計画にとらわれているということは、あなたが休めていない証拠です。完治までの期間は人それぞれです。こだわりすぎていると、回復が遅くなることもあるのですよ」

 私の経験では、不思議と症状が落ち着いてきた患者さんほどロードマップを気にしなくなっていきます。

 現在進行中の計画がすべて思い通りにいくことはありません。計画通りに進まないこと、思い通りにいかないことがあっても、即座にマイナスの評価を下すのではなく、もう少しだけ長いスパンで考えてみてはいかがでしょうか。