「映像」で学べば、英語の「消化力」は飛躍する

ここでも思い返していただきたいのは、赤ちゃんの学び方です。
赤ちゃんは参考書で日本語文法を学んだりはしません。実際の食事の面では、ミルクや母乳、さらには離乳食というようにステップを踏むかもしれませんが、言語習得の面では、さながら野生動物のように、大量の音声を「かたまり」のまま、たくましく摂取していきます。そうこうするうちに、次第に生の言語を消化できる強靭な胃袋が備わっていくのです(Ellis,2009;Gass,2013)。

言語学者のノーム・チョムスキーは、人間は誰しも普遍文法(Universal Grammar)という言語の種を備えていると考えました。これは50年以上前に提唱された古典的な仮説ですが、教育の現場で子どもたちの学習プロセスを観察している者としても、大いに共感できる考え方です。

植物の種が開花するには、水・日光・土壌の養分が必要なのと同様、言語がきれいな花を咲かせるまでには、継続的な言語刺激(文脈と言葉の対応関係)が欠かせません。
子どもに大量の言語刺激を与えたいのであれば、ネイティブの人にたくさん話しかけてもらうのがいちばんでしょう。実際、赤ちゃんはそうやって言葉に触れながら、母語を獲得していきます。
しかし、このやり方には環境的にも限界がありますよね。さらに、ものごころついた子どもなら、こんな一方的な「英語シャワー」はすぐにいやになってしまうはずです。

では、どうすれば英語を「かたまり」のままインプットできるのでしょうか?
先に答えを言ってしまえば、ベストなのは映像です。

1 一定の「状況」を「目」で見ながら、
2 変化する「音」を「耳」で聴き、
3 同時に「発声」を「口」で行う

この3つを再現し、聴覚と視覚を同時に刺激できる動画こそが、「人類最強の語学学習法」を可能にします。どういうことなのか、次回の記事でもう少し詳しくご説明しましょう。

(本原稿は斉藤淳・著『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』から抜粋して掲載しています)

【著者紹介】斉藤 淳(さいとう・じゅん)
J PREP斉藤塾代表/元イェール大学助教授/元衆議院議員。
1969年、山形県生まれ。イェール大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。研究者としての専門分野は比較政治経済学。ウェズリアン大学客員助教授、フランクリン・マーシャル大学助教授、イェール大学助教授、高麗大学客員教授を歴任。
2012年に帰国し、中高生向け英語塾を起業。「第二言語習得理論(SLA)」の知見を最大限に活かした効率的カリキュラムが口コミで広がり、わずか数年で生徒数はのべ3,000人を突破。海外名門大合格者も多数出ているほか、幼稚園や学童保育も運営し、入塾希望者が後を絶たない。
主な著書に、『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』(ダイヤモンド社)のほか、10万部超のベストセラーとなった『世界の非ネイティブエリートがやっている英語勉強法』(KADOKAWA)、『10歳から身につく問い、考え、表現する力』(NHK出版新書)、また、研究者としては、第54回日経・経済図書文化賞ほかを受賞した『自民党長期政権の政治経済学』(勁草書房)がある。