「英語の成績がいい子=秀才タイプ」ではなくなる

大学入試改革が大きな意味を持つのは、これによって、それよりも“手前”の教育、つまり、高校や中学、さらには小学校の授業に大きなインパクトがもたらされるからです。

学校や塾の英語が、「部品」を植えつけるような授業を繰り返していたのは、大学入試で「部品の知識」が問われてきたからです。いくら無駄だとわかっていても、「生徒を大学に受からせること」がゴールだとされている教師・講師たちにとっては、文法重視の「使えない英語」を教えるのが、最も理にかなっていたというわけです。
さらに学校の現場では、先生方が一個人で努力しても容易には解決できない問題が山積しています。部活指導や事務作業で多忙を極め、一クラスあたりの生徒数も多いので、丁寧な教え方をしている余裕もありません。

しかし、もはやゴールが変わった以上、授業も生徒の評価軸も大きく変わっていくでしょう。すでに最近の学校英語カリキュラムでは、文法知識の習得よりも、「どのような課題を達成できるか」を重視するcan-doリスト化が進みつつあります。これは、かつてのように文法知識だけで英語力を評価することがなくなった一例です。
以前から言われ続けてきた「4技能重視」の流れは、新しい学習指導要領で一気に加速するはずです。文法知識だけで優秀な成績を取れたのは、過去の話になり、本当の英語力がある子が正当に評価される時代が到来することになるでしょう。

(本原稿は斉藤淳・著『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』から抜粋して掲載しています)

【著者紹介】斉藤 淳(さいとう・じゅん)
J PREP斉藤塾代表/元イェール大学助教授/元衆議院議員。
1969年、山形県生まれ。イェール大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。研究者としての専門分野は比較政治経済学。ウェズリアン大学客員助教授、フランクリン・マーシャル大学助教授、イェール大学助教授、高麗大学客員教授を歴任。
2012年に帰国し、中高生向け英語塾を起業。「第二言語習得理論(SLA)」の知見を最大限に活かした効率的カリキュラムが口コミで広がり、わずか数年で生徒数はのべ3,000人を突破。海外名門大合格者も多数出ているほか、幼稚園や学童保育も運営し、入塾希望者が後を絶たない。
主な著書に、『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』(ダイヤモンド社)のほか、10万部超のベストセラーとなった『世界の非ネイティブエリートがやっている英語勉強法』(KADOKAWA)、『10歳から身につく問い、考え、表現する力』(NHK出版新書)、また、研究者としては、第54回日経・経済図書文化賞ほかを受賞した『自民党長期政権の政治経済学』(勁草書房)がある。