日産がサブブランドを持つのは、実はこれが初めてではない。古くから高性能を標榜する「NISMO(ニスモ)」を幅広い車種に設定し、世界市場に展開している。

 ニスモとは1984年に日産系のレーシングチームを買収する形で発足したレース子会社、日産モータースポーツインターナショナルの通称だ。

 日産はこのニスモを早くからレースと市販車をクロスオーバーさせるブランドとして育て、イメージ向上に活用してきた。ニスモ発足から間もない80年代には大衆車「サニー」に当時としては高性能な1.6リットルDOHCエンジンを載せ、エアロパーツなどを追加装備したモデルに「ツインカムニスモ」というグレード名を付けていた。1990年には耐久性の高い排気タービンを備えるなどレース出場を前提とした「スカイラインGT-R NISMO」を発売。以降、今日に至るまで、ニスモのバッジは日産が特別に走りへのこだわりを持つモデルにつけられてきた。

ホンダに見る2つのサブブランド展開の難しさ
オーテックの「歴史」と「物語」を生かせるか

 オーテックはそのニスモに続く第2のサブブランドとなるわけだが、歴史あるサブブランドを持つメーカーが、もう一つサブブランドを持ち、それを浸透させるのは案外難しいものだ。

 その一例がホンダのサブブランド戦略。ホンダには1970年代に創業者・本田宗一郎氏の実子、博俊氏が設立した無限(現在のM-TEC)が展開する無限ブランドと、ホンダ直系の子会社であるホンダアクセスが展開する「モデューロ」ブランドの2つがある。

 筆者は両方のモデルをテストドライブしたことがあるが、モデューロのチューニングの良さは目を見張るものがある。サスペンションの強化によって操縦性が高められているにもかかわらず、乗り心地は標準モデルよりも良いくらいなのである。無限とはチューニングコンセプトが異なるが、少なくとも負けている要素は見当たらない。

 にもかかわらず、モデューロは知名度、ブランドバリューの点で無限の後塵を拝している。理由は簡単。無限には長い歴史と、F1参戦を含めその中で築かれてきた“物語”があり、モデューロにはそれがないからだ。